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第13話 フィール最悪の帰還/反撃の萌芽

 ビルの外では、すでに多数の機動隊員が待機していた。そして、特攻装警とともに現れた近衛を見て、一人の機動隊員が彼のもとへと駆けつける。


「警備本部長殿! 十分ほどのちに本庁からの緊急応援部隊が到着します!」

「分かった。速やかに受け入れ体制を整えろ」

「はっ!」


 近衛は機動隊員の連絡を聞き行動を開始する。足早にかけ出し機動隊員たちのもとへと進み出る。


「それでは今より、本庁からの緊急応援部隊の受入れ準備を行なう! そして、現在ここに待機している3名の特攻装警を最上階である第4ブロックへと送り込むための準備も同時にとり行なう!」


 近衛は轟声一発叫んだ。機動隊は再び行動を開始した。そしてそれは明らかに、彼らに残されたラストチャンスであった。それに駆けつけるように鏡石が足早に走っている。第1ブロック内の一角、施設統合管理センターの建物から飛び出すように姿を現すと、矢一文字に全力で駆け出した。

 その彼女の後には、幾人かの情報機動隊員が続いている。先程は3名しか居なかったのが今は7人に増えていた。あれから自力で脱出し階下に降りてきたのだ。


「いい?! その建築業者専用の作業用情報回線を大急ぎで手配して! このビルの建築事務局にも問い合せて!」

「はいっ!」


 鏡石の叫ぶような命令に2人の隊員が答えた。返事を返した後に、鏡石たちのもとから離れると一路、彼らは別な進路を目指した。


「それで、本当なのね? その突入部隊の編成と言うのは!?」

「はいっ、間違いありません。時間から言ってもうすぐ到着する筈です」

「わかったわ。それよりも――」


 鏡石は、その手に握った携帯ターミナルに思いをはせた。その中には、ビルの第4ブロックへと登るための様々なプランが入力されている。鏡石は腕時計を見る。部下から聞いた突入部隊の到着時刻はすぐである。


「これを、急いでアトラスたちに渡さないと!」


 鏡石は駆ける。そして一路、ビルの外の機動隊のもとを目指した。


「ディアリオ。待ってて!」


 鏡石は一人呟く。彼女はついに、ビルの情報システム奪回の鍵を見つけたのだ。



 @     @     @



 断続的に空に鳴り響く爆音が鳴り響いている。

 本庁から送られた突入部隊のための支援ヘリだ。もう時間的猶予は許されない。

 本庁から一足先に、第2陣用の高速ヘリが送られて来たのだ。

 シングルローターの小型の高速機で、敵からの万一の攻撃のためにメインローターを、巨大な特殊なプロテクターで覆っている。

 ヘリの周囲では近衛が、本庁から来た突入任務の機動隊員を相手に最後の事前ミーティングを行なっていた。その手には、本庁から持参された計画内容書が握られている。


「では、第1陣の突入部隊は神奈川と千葉の混成部隊ではないのだな?」

「はい、盤古の神奈川方面と千葉方面の部隊より、それぞれ1小隊づつ派遣されるそうです」

「では、こちらは、ここに待機している特攻装警を第2陣として搭乗させれば準備は完了となるな」


 近衛は、つっと視線を外す。その先には待機している特攻装警たち3人がいた。

 3人の特攻装警たちは突入の命を受け、すでに装備の準備に取りかかっていた。

 とは言え――、彼らは一般の機動隊員の様にそれほど物々しい装備をせずともよい。ただ、自分自身のメカニズムと武装の機能的な再チェックを行なえば十分である。


 アトラスは、手頃な縁石を見つけそこに座り込みじっとしていた。

 愛用のデザートイーグルAE50を抜き、慣れた手付きで解体チェックを行なう。そして、腰の後ろのショートボディの10番口径ショットガンを抜きこれも解体しチェックする。その二つを空射ちし動作状態をチェックして、フルに弾丸を詰め込む。


「まぁ、こんなものか」


 そう呟くアトラスは、自分の視界の中に表示される体内システムチェックプログラムのメッセージを見ていた。メッセージはオールグリーン、これからの任務に何の問題も無い。

 それでもアトラスは早急な結論は避けた。今は極力、身体をアイドリング状態にしておきたい。自分自身の機体を暖めつつ過度の負担を抑えていた。そして、アイドリングモードでじっと身体を休ませているアトラスのもとに、センチュリーが現れる。彼自身もセルフチェックを終えている、微笑んだその姿からはチェックが良好である事が感じ取れる。


「兄き」

「センチュリーか」

「俺は終わったぜ、問題なしだ」

「私もです」


 さらに、センチュリーの背後からも声がする。エリオットもすでに装備の換装を行ない、彼もセルフチェックを済ませた。ふと、彼を見上げてセンチュリーとアトラスが言う。


「おっ?」

「ずいぶんと物々しくなったな。エリオット」


 2人の前には、エリオットが立っていた。彼の両肩の上には小型ミサイルのポッドなどを始めとする追加武装が備えられている。


「いつもの大型のミサイルポッドは使わんのか?」

「いえ、あれはサイズが大きすぎますし、第一あれは屋外戦闘用です、今回の空中投下には向いていません」

「そうか、今回は屋内での戦闘だったな。お前が暴れるには少し気を使うかもな」


 センチュリーの言葉にエリオットは相槌をうつ。


「はい。建物の設備や要救助者を巻き込むわけには行きません。ですので、今回は極力バックアップに専念しようと思います」


 エリオットがそう告げれば、アトラスが同意した。


「同感だ、今回は私とセンチュリーで先陣を切ろう。私よりも先に闘っている盤古の隊員たちのサポートを頼む。先日のマリオネットが相手ではかなりの被害が出るだろうからな」


 アトラスの言葉にセンチュリーもエリオットも同意する。たしかに生身であの怪物たちをいなすのは相当に困難なはずだ。

 彼らに向けて声がした。機動隊員が3人を呼んでいる。近衛はヘリの搭乗口の所で待っており3人をじっと見ている。


「お呼びだ。行くぜ兄貴、エリオット!」


 センチュリーがそう言って一足先に歩き出す。アトラスとエリオットは頷いて後から追った。3人の特攻装警は、その顔から笑みを消していた。各々に冷えた眼光を宿し任務へと赴くのだ。と、その時。


「待って! 待って下さいっ!」


 ふと、けたたましい声がする。


「これも持って行って!」


 ビル内から駆けてきたその声に、みなが思わず振り返る。近衛が思わず声を発する。


「どうした! 鏡石!」

「お願いします! これを上のディアリオに!」

「ん?」


 鏡石は1㎝角の超小型メモリをおもむろに突き出した。鏡石が突き出した先にアトラスの手が有った。アトラスはそれを受け取る。そして、それを近衛に提示すると、近衛の頷きを確認してそれをジャケットの内ポケットにしまい込む。


「鏡石、これは?」


 近衛が訊ねる。


「だ、第4ブロックとの……」


 鏡石の息がすっかり上がっている鏡石に、センチュリーが手を貸した。そして場の周囲から控えの機動隊員が小型の水筒を持ってきて鏡石に差し出す。


「だ、大丈夫よ」


 センチュリーの手によりかかりながら、わずかに間をおくと皆に語り出した。


「第4ブロックとの連絡方法を記したメモリーカードです! 最上階ブロックと確実に連絡を取る方法が一つだけ有ったんです!」

「なに?」


 近衛が彼女の言葉に顔色を変えた。


「このビルは、第5ブロック以上はまだ建築途中です。そのため、建築現場の工業用のコンピュータシステムと連絡を取るための建築作業用の専用独立回線が有ったんです! これにはそれを用いて連絡を取る方法が記載されています! ですので、これをディアリオに!」


 近衛は鏡石に頷く。


「解った、確実にディアリオに届けさせよう。アトラス!」


 アトラスはただ黙って2人に頷き、鏡石は安堵してその場にしゃがみこむ。その背後から駆けつける情報機動隊員は鏡石を介抱する。そして、近衛は告げる。


「よし、3人ともヘリに向かえ、これから降下作戦を――」


 近衛が力強くそう告げている時だった。


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