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春風は恋心を隠す  作者: ウタゲゴ
1/3

2月15日:椿

はじめましての方には

はじめまして!


お久しぶりですの方は

お久しぶりです!


こんにちはの方は

いつもありがとうございます!


どうも、ウタゲゴです。

今回のは作者の「趣味」と「好きなもの」を結構詰め込んだ作品を目指して頑張ります!!

私、真東しんどう 椿つばきはこの日、第1志望の私立高校の受験の合格発表があった。私立高校な上に、推薦入試ということで、公立高校の一般受験の合格発表より1ヶ月ほど早い合格発表だ。


結果は見事『合格』だった。


正直、自信はあった。中学二年生のときから生徒会の役員を務め、三年生では生徒会長を務めたのだ。それに私の成績はとても良い方だ。自分で言うのもどうかと思うが、数字がそれを示しているのだから自分で言ってもいいだろう。


1つ心配事があったのは、中学校の方針として一年生は生徒会役員にはなれないという校則があったために、一年生のときの功績が少々薄い気がしていたことくらいだった。


私は別に完璧主義というわけでも、心配症というわけでもないのでそこまで気にしていた訳ではない。むしろ、ここまでやったら落ちないだろうと考えていたほどだ。



私はその合格発表を母親と見に行った。母は泣いて喜んでくれた。他にも泣いている親御さんはいたので、特に私の母が目立つことはなかった。まぁ、他の親御さんの涙の理由が、嬉しいからなのかはともかくとしての話だが。


私にはこの『合格』を一刻も早く伝えたい人がいた。恋人ではない。そもそも私には恋人がいたことがない。


母が泣くほど喜んでくれているというのは嬉しいが、私は早く帰りたかった。この時間にはもう帰宅しているはずの妹に早く結果を伝えたかった。


私はどうにか母を説得、と言うか泣き止ませて家に帰った。

玄関の扉を開け、靴を脱いで揃える。


(こんな時間も惜しい...!)


そんなことを考えながらもしっかり靴を揃えて脇に寄せる。


そして私は妹がいそうな場所を1階のリビングから見て回り、1階にはいないと判断して2階へ上がった。まず真っ先に妹の部屋の扉をノックして開けた。が、妹はいない。

ならばと私は自分の部屋の扉を開けた。


すると妹は私のベッドでうつ伏せの状態で、両足をパタパタさせながら私の漫画を読んでいた。


妹もこちらに気づいた。


綺麗なさらさらした黒髪で、肩くらいまであるツインテールが動いて、世間一般的にも「可愛い」と言われるような、妹の整った顔がこちらを向いた。そして、丸い大きな黒目がこちらを見た。肌については、私と言うよりも母に似て色白で黒髪によく映えていた。

身内としての贔屓目を除いても、はっきり言ってこの妹はめちゃくちゃ可愛い。


「おかえり、お姉ちゃん。どー、だった?」

「うん、ただいま。合格、したよ!」


妹はベッドの上からそのまま私の元まで飛んできて私に抱きついた。そんな妹を私もしっかり抱き留める。


(ぁー、幸せ...っ!!)



私はこの妹、かえでのことが家族として以上に、恋愛対象として好きだ。血の繋がった実の妹のことが、私は1人の女性として好きなのだ。



私は別にレズビアンという訳ではない。それはこの15年間という短い人生の中でわかっている。

だが、確実にシスコンだ。

このことを知っているのは家族にもいない。逆に家族には言いづらい。


実際、このことを知っているのは近所に住む、私と同い年の幼なじみである雨上 皐月(うかみ さつき)だけだ。


皐月とはほとんど産まれたときから一緒にいるようなもので、楓と3人で今も昔もよく遊んだ。

最近は受験のこともあって「遊んだ」、ということは少ないのだが。



こうしてやっと楓に、私の『合格』を伝えられて本当に良かった。


「ぁ、あのさ、お姉ちゃん。受験終わって早速で悪いんだけど...」

「どうしたの?」


楓が床と私を交互に見ながら私に何かを伝えようとする。


「えーとね、実は、相談が、あってね...」

「う、うん...」


思わず私も緊張してしまう。


「こ、恋の相談、というやつでね...」


そのセリフを言った楓の頬は少々赤い。


(落ち着け、落ち着け...まずは深呼吸だよ、私。で、なんだっけ?楓が、恋の、相談、だって...!!私に相談してくれてるっ!!待て待て、私。『恋』か...)


「お姉ちゃん、ちゃんと相談に乗れるか自信ないけど、頑張るよ...!」


今の私に出来る精一杯の笑顔を楓に向けた。これが今の限界の笑顔だということはすぐに楓にはわかってしまうだろう。


楓は私の1つ下で、中学二年生だ。学校では演劇部に所属していて、学校の誇るべきエースだ。楓の実力は学校どころか、県の代表もできるほどのものであり、本当に凄まじいものだ。


そんなエースを私程度の演技力で欺けるとは思っていない。


まずは部屋の扉を閉めて、向かい合って座ることにした。部屋になんとも言えない空気が流れる。


(ここは私から色々聞いていくべきなのかな...?皐月がいればもっと上手くいってたな...)


「えーとね、まずその人は、男の人でお姉ちゃんと同じ年だと思うの」

「う、うん」

「ぁ、あと、その人のこと気になるって言うより、好きって言える段階、かな...」

「ぁー」


自然に私の口数は減っていった。


「で、その人と初めて会ったのが、駅前で。私がハンカチ落としちゃって、それを拾って声をかけてくれた人なの。あの、お姉ちゃんが私の誕生日にくれたやつ」

「あー、うん、あったね」


(あれは、楓の12の誕生日に買ってあげたハンカチだったはず...未だに大事にしてくれてるのかな...?だったら、嬉しいな)


「私にとっては大っ事なハンカチだからさ、落としたことにも気づかなくて、ほんとに危なかったよ」

「そっか、まだ大事にしてくれてるんだ...」

「うん、私にとっては宝物だよ!」


(嬉しいこと言ってくれるよ...泣きそうになっちゃう...)


「ふふ、ありがとう」

「うん。で、それでね。そのハンカチ拾ってくれたときに思ったの、世の中こんないい人もいるんだなって...まぁ、私にとってあのハンカチが大事だったから、その人にはそういうところで補正かかって好きになったのかもしれないけど」

「おいおい」


私は冗談めかした口調で言った。そして2人でほんの少し笑いあった。

いつの間にか楓のお陰で空気も、私の心のありようも変わっていた。もちろん、ショックなど色んな感情はあったが、最初ほどではなくなっていた。

この時の私は、このことに全く気づなかったのだが。


「その人のこと、それからはよく見かけるようになって、その結果好きになった...だから初めて会ったのが駅前って言うのは違うのかもしれない。言い方悪いけど、その人のことが今までも視界には入ってたけど、その記憶が私にないだけかもしれない」

「なるほど、それは十分有り得るね...その人ってどんな見た目の人なの?」

「えーと、鷲中わしちゅうの制服着てる人で、ちょっとクールそうな感じの人」

「ふーん...」


鷲中とは、私立鷲木しゅうもく中学校のことで、学生たちから鷲中と呼ばれている。共学の中学校で、運動に力を入れている。皐月は鷲中に通っている。

そして、私や楓が通っているのが、学生からは高中たかちゅうと呼ばれる私立高嶺こうりょう中学校だ。こちらは女子中学校で、男性の教員は最早いない。男性はいるにはいるが、技能技師の先生と呼ばれる人たちだけで、滅多に会うことはない。


「その人のことは、名前とかわかんないの?」

「うん、そうだね。今のところまだ全然」

「そっか...」


(んー、嬉しいような...そうでもないような...その人を遠ざけたいけど、楓が好きになった人だしな...)


「そもそも、こんな話したのお姉ちゃんが始めてだし」


(ぇー!!何それっ!?私めっちゃ信用されてるじゃんっ!!って言うか、そっか...皐月のそういう話は私たちどっちも聞いたりしたけど、私たちから出てくることなかったか...結局、皐月の方も自分で解決してたし...)


「ぁ、そ、そうなの、ね...せ、責任重大だね...」

「そこまで重く感じなくても...!で、あの結局その相談って言うのが」


(そう言えば、話を聞いてるだけで相談は聞いてなかった)


「その人のことを鷲中の友達に聞いてみたりするか、しないかって言うことなんだよ。聞くこと自体恥ずかしいし、私がその人のこと聞いちゃったせいで、その人とか友達とかに迷惑かからないかなって思ってさ...」

「それは、迷うね...うーん...」


(楓は自分1人で悩んで、それでも答えが出なかったからこうして相談に来たんだろうし...なんとか力にはなりたいけど...やっぱり皐月なのかな...)


「私じゃこういう話にはなんとも言えないな...私こういうことには疎いし...ごめんね、楓。お姉ちゃんじゃ、力になれないみたい」

「ううん、聞いてもらうだけでも十分だよ!」

「そう言ってくれると嬉しい。やっぱりこういうことは、皐月に相談してみない?」

「うん、それでもいいんだけど、皐月ちゃんも受験で忙しかったりもするだろうし...」

「まぁ、そうなんだよね...どーなのかなー?最近会ってないからな...」


私は後ろで両腕に身体を支えさせ、天井を仰いだ。


皐月と会ったときに空気がピリピリしたものにならないかと心配して、ここ最近は皐月に会っていない。少し前は一緒に勉強をしたりもしたのだが、自然とそういう機会もなくなっていた。


「うん...とりあえず、もう1回自分で考えてみるよ。ありがとうお姉ちゃん」

「うん、悩みすぎないようにね〜」

「大丈夫、わかってるよ〜」


楓は自分の部屋に戻っていった。

と、思ったら私の部屋に帰ってきて、満面の笑みで言った。


「お姉ちゃん、合格おめでとう!」

「うん、ありがとう...!!」


(ぁー、ほんと天使だ...最っ高ッ!!)


それから改めて楓は自分の部屋に戻っていった。


(楓が、恋か...今までそういう話は全然聞かなかったからな...部活に集中してたって言うのもあるのかな...よし、ここはポジティブに考えよう。『合格したからって勉強の手を緩めるな』って神様が言ってるのかもしれない!どうせ私のことだから楓の相談が気になって、色々手につかなくなりそうだし...)

まずはここまで読んでくださり、ありがとうございます!!!


何かと上手くいかないところも多々ありますが、これからもお付き合いして頂けたらと思っています。


今回の話は椿の視点でしたが、次回はこの日を楓の視点で書こうと思っています。



ブックマーク、ポイント評価よろしくお願いします!!感想もいつでもお待ちしております!!


ありがとうございました!!

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