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ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる  作者: 佐藤謙羊
女子高対抗メルカバトル編
25/78

25 ボーンデッド、女子高生に混ざる

 少し離れたところに、学校の制服姿の女の子たちがいた。

 お互いを抱きしめあい、キャーキャーと喜びを分かち合っている。


 彼女らが跳ねるたびに膝上スカートが翻り、今の俺の視点からだとパンツが見えそうになっていた。



「やった、やった、やったぁーっ! 初勝利、初勝利だよぉーっ!!」



 嬉しさにポニーテールを弾ませ、快活そうな少女がバンザイする。



「おおっ! やったな! これでもう、万年最下位なんて言わせねぇぜっ!」



 興奮のあまりウルフカットを逆立て、男勝りな少女がガッツポーズで応じた。



「本当に、本当に良かったですぅ……!」



 安堵のあまりセミロングの少女は泣きそうになっている。

 おっとりとしたタレ目は、いまにも決壊せんばかりにウルウルだ。



「でも、自分たちの力じゃないじゃん」



 ショートカットの少女がボソリと突っ込んだ。

 それで少女たちのお祝いムードは冷め、一気に現実に戻る。



「……あれ? そういえば、あのゴーレムさんは?」



 ポニーテール少女があたりを見回す。



「ああ、それなら逃げねえようにナワでくくって木に……って、あれっ!?」



 ウルフカット少女が指さした先、つまり(ボーンデッド)がいる場所には大穴が空いていた。


 俺は腰にナワをつけられ、犬のように木に繋がれたあと、足下を掘られて穴に入れられてしまったのだ。



「ナワだけだと逃げられると思って、穴を掘っておいた」



 と、ショートカット少女が付け加える。



「ええっ!? ラビアちゃんとシターちゃんがやったの!? ダメだよ! ゴーレムさんはボクらを助けてくれたんだよっ!?」



 ポニーテール少女が血相を変え、俺の元に飛んできた。



「ご、ごめんね、ゴーレムさんっ! いますぐそこから出してあげるからねっ!」



 俺にとってはロープも穴もたいした障害じゃなかったので、自力でなんとかできるんだが……せっかくだから助けてもらうことする。


 しかし、それが間違いだった。

 彼女らはメルカヴァを持ち出して俺を引っ張り上げようとしたんだが、ぜんぜん操作がなっちゃいねぇ。


 次々と穴の中に落ちてきて、ぎゅうぎゅう詰めになる始末だった。



『し……しまったぁ! みんな落ちちゃったぁ! てへへへっ!』



『おいっ! 何やってんだよカリーフっ! お前のせいで、オレまで落ちたじゃねーか!』



『ご、ごめんなさぁ~いっ!』



『メルカヴァで、おしくらまんじゅうできるじゃん』



 ボーンデッドのまわりでは、少女たちが大騒ぎ。

 コクピットの全方位モニターでは、笑ったり、怒ったり、泣いたり、喜んだり……4つの喜怒哀楽フェイスが浮かび上がっている。


 その様を、空撮で捉えられてしまった。



『おおっとぉ!? 初勝利をかざった母大のメンバーたちは、なにをやっているのでしょうか!? みんなで穴に埋まっています! 運が良かっただけとはいえ、勝利の立役者となったゴーレムを讃えているのでしょうか!? それにしても、変わったやり方です!』



 ……そう。

 俺は行きがかり上とはいえ、「岩石乙女高校」のメルカヴァを戦闘不能にしちまった。


 そのせいで「母なる大地学園」所属のゴーレムと完全に勘違いされちまったんだ。


 それから「母なる大地学園」の女の子たちがやって来て、お礼がしたいと言われ、彼女らの陣営に案内された。


 そしてナワで繋がれ穴に落とされ……今に至る。


 不意に、明るすぎる声がした。



『あっ、そうだ! せっかくだから、この場を借りてゴーレムさんに自己紹介しようよ!』



 なにがせっかくだから、だよ……と思ったが、ポニーテール少女はエヘンと咳払いして続ける。



『ボクがこの「母なる大地学園」のリーダー、サイラだよっ! よろしくね、ゴーレムさんっ! じゃ、次、ラビアちゃん!』



 振られたウルフカットの少女は、面倒くさそうに口を開いた。



『しょうがねぇなぁ……オレは『母なる大地学園』の切り込み隊長、ラビアだ。よろしくな、ゴーレム。……おい、ボサッとすんな、カリーフ』



 狭い中、ゴツンと肘で突かれたセミロング少女は、「きゃん!」と子犬のように鳴く。



『ご、ごめんなさぁい! あっ、あたしは「母なる大地学園」の補佐役のカリーフですぅ。よ、よろしくお願いしますぅ!』



 コクピットの中で頭を下げたカリーフは、ゴチン! と額をぶつけていた。



『い、いたぁ~い!』



『なぁにやってんだよ、カリーフ! ゴーレム相手に緊張してんのか? おい最後、シターだぞ!』



 ラビアから振られたセミロング少女は、『シター』とだけつぶやいた。


 最後はいたってシンプルだったが、どうやら全員の自己紹介が終わったようだ。


 俺がなんの反応も返さないのが気に障ったのか、カリーフが肘でつついてくる。



『おいゴーレム、なんか言えよ。……って、そもそもコイツ、言葉がわかんのか?』



 正面にいたサイラがボーンデッドの顔を覗き込んできた。



『ゴーレムさーん? 聞こえてますかぁーっ? あなたのお名前、なんですかーっ?』



 ここで返事をしたら、俺はさらにドロ沼にハマるんじゃないかと思い無視を決め込む。

 しかしコイツらはしつこく呼びかけてきて、とうとうおしくらまんじゅうまで始めたので、俺は折れてしまった。



『へぇぇ……! ゴーレムさんは、ボーンデッドさんっていうのー!』



『クソ……なんかカッコイイじゃねぇか……!』



『ちょっと、怖いような……』



『ボーンとしててデッドリしてる……だからボーンデッドなんじゃん?』



 俺の名前ひとつで、口々に盛り上がる少女たち。



『じゃあ名前もわかったところで、ボーンデッドさん! これからボクたちのこと、ヨロシクね!』



 なんでそうなるんだよ。



『そうだな! たとえゴーレムとはいえ、いないよりは全然マシだ! 今回は絶対優勝しなきゃならねぇからな!』



『本当に、優勝できるんでしょうか……?』



『できるじゃなくて、しないとダメ。でないと終わりじゃん?』



 彼女らが言うには、今回の『女子高対抗メルカバトル』で優勝しなければ、『母なる大地学園』は廃校になってしまうらしい。

 そしてその跡地には、今大会にも出場している『ブラックサンター国立第三毒蜘蛛女子』が入ることになるそうだ。


 ……なんだか、聞き捨てならねぇ学校名が出てきやがった。


 しかもよくよく聞いてみると、『ブラックサンター国立第三毒蜘蛛女子』の機体は、『ネフィラ・クラヴァータ』というらしい。


 その名称に、ランキングモニターが反応した。


 ソイツはなんと、ディス・ベスタ王国のランキング10位……!

 俺が探し求めていたメルカヴァだったんだ……!


 ……正直、彼女らの廃校の話を聞いたときは、正直どうでも良かった。


 なぜならば、実力不足ということで廃校と判断されているのであれば、そのほうがいいと思ったからだ。

 より優秀な学校が学び舎を得るのは、ごく自然な生存競争のひとつでしかない。


 彼女らはいい子かもしれないが、それは他の参加者たちも同じだろう。

 だからいくら偶然助けたからといって、その後も手助けするのは違うと思っていた。


 しかし……『ブラックサンター』が出てきたとなると、話は別だ……!

 ヤツらに学校を与えるということは、さらなる勢力拡大を意味する……!


 しかもヤツらは他国を不法占拠して暮らしているらしいから、一度居座ったら最後、二度と出ていくことはないだろう。


 ブラックサンター撲滅を掲げる俺としちゃ……それは見過ごすわけにはいかねぇなあ……!


 というわけで俺は『母なる大地学園』所属のゴーレムとして、『女子高対抗メルカバトル』に身を投じることを決めた。


 俺って女子じゃねぇし、ましてや高校生でもなくてオヤジだけど……それはまぁ、いいよな。

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