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ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる  作者: 佐藤謙羊
女子高対抗メルカバトル編
24/78

24 ボーンデッド、女子高生をヤル

 俺は、よくわからねぇうちにメルカヴァ同士の戦いに巻き込まれ、そして今、女子高生の操るどすこい系のメルカヴァから、サバ折りを受けていた。


 現役女子高生のサバ折り……!

 普通、逆じゃねぇか……!? 女キャラ(おまえら)は掛けられる側だろう……!?


 生身だったらまだいいけど、こんなの……全然嬉しくねえっ……!


 ……って、なに考えてんだ俺っ……!

 あまりにも事態が目まぐるしすぎて、思考が現実逃避しちまってる……!


 もういっそのこと暴れちまおうかと思ったが、コクピットに響くギリギリと軋むような音で、俺はかろうじて理性を保っていた。


 どうやらパワーは『キング・バンディット号』より上みてぇだ……!

 こりゃ、油断できねぇぞ……! と思っていたら、



『き、キマったぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!』



 ひときわ大きな実況が、コクピット内に響き渡る。



『岩石乙女のメルカヴァ部で受け継がれているという、伝統の必殺技「ロック・ヤンカー」!


 地中深く埋まった岩を引っこ抜き、そして粉々にするという、驚異的なパワーを持つ岩石乙女のキャプテン機のみができる技といわれています!


 いちど掴まれたら最後、絶対に逃げることは不可能!

 どんなに頑丈な装甲のメルカヴァでも、確実にスクラップにされてしまいます!


 今回の犠牲者のゴーレムは、もうあきらめてしまったのか、何の抵抗もしていません!

 ここまでしっかりキマっていると、もうどうしようもないみたいですねぇ~!


 ……解説のヴェトヴァさんは、この状況、どう判断されますかっ!?』



 コクピットで付けっぱなしにしている魔送モニターには、野外にある実況席が映し出されている。

 ショートカットでメガネのいかにも活発そうな実況者の横には、黒いレースのドレスに身を包んだ妖艶な美女が座っていた。


 ソイツは恐ろしいほど白い肌をしている。

 日差しが気になるのか、黒い日傘をさして肌を守っていた。


 ドレスは長袖のうえに、そのうえ手袋までしてやがる。

 しかし胸元だけは大きくはだけており、雪だるまみたいな胸がこぼれ出しそうになっていた。


 すげえ乳だな……それになんか、解説っぽくねぇな……と思っていたら、ソイツは黒い扇で口元を覆い隠し、くすくす笑いはじめた。



『ンフフフフフ……! このヴェトヴァが解説するまでもございません……!


 岩石乙女のメルカヴァはヘビーカスタムで、パワーだけならこの大会でもトップクラス……!

 しかもキャプテン機はリミットオーバーが可能で、機体の限界を超える力を出すことが可能となっております……!


 それが「ロック・ヤンカー」の威力の秘密でもあるのですが……リミットオーバの前では、あの白いゴーレムなどひとたまりもないでしょう……!


 初めて見る型ですが、おそらくは紙装甲……!

 本当に紙くずのようにくしゃくしゃにされてしまうでしょう……!


 ンフフフフフ……!』



 気持ち悪ぃ笑い方だなぁ……せっかくの美人が台無しじゃねぇか。

 と思っていたら、



『あ、あぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?』



 今度は耳慣れた声がコクピット内に割り込んでくる。

 声の主はララニーで、聖堂院にある魔送モニターを指さして大騒ぎしていた。



『み、みなさんみなさん大変ですっ!? コレ見てくださいっ! ボーンデッド様が、ボーンデッド様が映ってますぅーーーっ!?!?』



 その一言に、ゴハンが待ちきれない子猫のように、ドドドドドドドドドッ! とモニター前に集まってくる俺の嫁たち。



『わあっ……!? ほ、本当です……! 本当に、ボーンデッド様が……!』



 思わず嬉し泣きをはじめるルルニー。

 子供たちも口々に叫びはじめた。



『わぁーい! ボーンデッドさまだぁーっ!』



『ボーンデッドさま! ボーンデッドさまーっ!』



『ボーンデッドさま、だいすきーっ!』



 小さい子たちは感極まって、窓ガラスに張り付くみたいにピッタリとモニターに顔をくっつける。

 そして『ちかづくとみえなーい!』と離れるのを繰り返していた。



『あの……ボーンデッド様は、なにをされているのでしょうか?』



 ルルニーの疑問に答えたのはララニーだった。



『コレは女子高対抗メルカバトルの全国大会みたいです! ボーンデッド様って女子高生だったんですね! いまは相手のメルカヴァに掴まって、潰されようとしているみたいですっ!』



 ララニーの解説に「ええーっ!?」と悲鳴があがる。

 そして俺の嫁たちはヒートアップした。



『ぼ……ボーンデッド様! が、がんばって……! がんばってくださいぃぃぃっ!』



 いつになく大声を張り上げるルルニー。

 それを皮切りとして、応援が始まった。



『がんばれーっ! ボーンデッドさまーっ!』



『まけないでーっ! ボーンデッドさまーっ!』



『ボーンデッドさまを、つぶしちゃだめーっ!』



『そんなやつ、やっつけちゃえー!』



『フレー! フレー! ボーンデッドさま!』



 ……俺は、百万の味方を得た気分だった。


 否が応にも力が湧いてきやがる……!

 今の俺なら、世界中を敵に回したって勝てる気がするっ……!


 いいや……絶対に勝てるっ……!


 本当はもうちょっと様子を見るつもりだったんだが、もうかまわねぇ……!

 嫁たちのリクエストには応えてやらなきゃな……!


 俺はガシイッ、と操縦桿を握りしめる。

 そして腹の底からの雄叫びをあげようと、肺いっぱいに息を吸い込んだ。


 さぁ……いくぜっ……! と思った次の瞬間、


 ……メキメキメキメキメキィィィィィッ……!


 っと、金属がひしゃげるような音が響いたんだ……!


 ああ……しまった、遅かったか……!

 ほんのタッチの差で、相手の腕がオシャカになっちまった……!



『えええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?


 なっ、なんということでしょう!?

 必殺技を仕掛けているはずの岩石乙女のメルカヴァの腕が、くしゃくしゃになりましたっ!?


 かっ、解説のヴェトヴァさんっ! これは一体どういうことなんでしょうか!?』



 ヴェトヴァは先ほどまで優雅な貴婦人のようだったが、今はお面のように表情が固まっている。

 アイシャドウ彩られた瞳を、信じられないくらいカッと見開いていた。



『り……リミットオーバーは機体が故障する以上の力をも発揮できるので、相手が硬いと自分がダメージを受けてしまうこともあります……!』


 で、でも……あ……ありえない……!


 高校生の使うメルカヴァとはいえ、岩石乙女の機体は(スーパー・)高校生(ハイスクール)(・クラス)……!

 それも、ヘビーカスタム……!


 それを変形させるほど頑強なゴーレムなんて……!


 も……もしや、軍用(ミリタリー)(・クラス)……!?』



 ヴェドヴァの解説が終わるのを待っていたかのように、


 ……バキィィィィィィィィーーーーーーンッ!!


 ボーンデッドをハグしていた両腕が、粉々に砕け散ったんだ……!


 『やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!』と聖堂から大歓声があふれる。

 抱き合って喜ぶ、俺の嫁たち。


 ……まぁ、俺はなんにもしてねぇんだけどな。


 サバ折りを受けて、軋むような音を聞いても俺が慌てなかったのは……相手がダメージを受けていることがわかりきっていたから。

 自分の相棒の悲鳴くらい、長年付き合ってりゃさすがにわかる。


 まぁ、そんなことよりも……気の毒なのは相手のほうだ。

 虎の子の必殺技が、無抵抗のヤツにあっさり破られちまったんだからな。


 腕を失ったメルカヴァも、取り巻きのメルカヴァも、呆然と立ち尽くしている。



『う……ウソ……だ……ろ……?』



『きゃ……キャプテンが伝統の必殺技……「ロック・ヤンカー」を、かけていたはずなのに……』



『ど、どうして……キャプテンの腕が、なくなっちゃってるの……?』



 しばらく呆然自失になっていたが、キャプテンは再び奮い立った。



『え……ええいっ! こ、これはただの整備不良だっ! きっと、腕の部位に整備不良があったに違いないっ! たとえ腕を失ったとしても、まだ3対1……! 我々が圧倒的に有利なのは変わりな……い……って……あ、あれ……?』



 ぐらりと揺れ、そのままズズン! と倒れるキャプテン。


 また突っ込んでこられると面倒だったので、俺がローキックで片足を外してやったのだ。

 仲間たちが我に返るより早く、残りの2体もまとめて片足を奪う。



『きゃ……キャプテンが!? えっ……ええっ!?』



『う、ウソっ!? まさか脚にも整備不良が……!? あっ……ああっ!?』



 もつれあうようにして2体ともバランスを崩し、ズズズン! と地に沈む。


 ……このローキックは『ダルマ落とし』といって、ゲームでは俺だけが使えていたテクニックのひとつ。


 脚のジョイント部の最も弱い方向に向かって、絶妙な力加減で蹴ってやると……プラモデルみたいに簡単に外せちまうんだ。


 ちなみに『ジャイアント・バンディット号』が相手の時も同じことをやってたんだが、脚が弱すぎて外れる前にバラバラになってたんだよな。


 なんにしても、この技はパイロットへの被害をなるべく抑えて相手を無力化することができる。

 相手が男だったらわざわざこんなことをせずに、遠慮なく破壊してやるんだけどな……。


 なんてことを思いながら、俺は再びひっくり返った亀となった女子高生たちを見下ろしていた。

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