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22 ボーンデッド、旅に出る

 ボスを倒したおかげで、『ブラックサンター』の脅威は町から完全に消え去った。


 同時に聖堂院と町のヤツらのわだかまりも消え、もはやカレー屋なんてなくてもお祈りに来るヤツが後をたたなくなった。

 俺は俺で魔神としての地位を確立し、神様同然に敬われるようになっちまった。


 変化はそれだけじゃねぇ。

 『キング・バンディット号』を倒した瞬間、ボーンデッドのステータス画面に変化が起こったんだ。


 『ランキング』の項目が増えていたので、それを開いてみると……。



 『キング・バンディット号』を倒したので、あなたはディス・ベスタ王国のランキング11位になりました!

 ランキング11位の報酬として、『走行ユニット』と『低出力バーニア』をさしあげます!



 その表示に、俺はすぐにピンときた。



「ランキングシステム……! ついに実装されたのか……!」



 『ランキングシステム』というのは、ゲーム内にいる特定の敵を倒すことにより上昇していき、報酬が得られるというもの。


 ちなみに各ランクごとにもらえる報酬というのは、こんなカンジになっている。



 11位 走行ユニット & 低出力バーニア

 10位 CAT2兵器

 09位 遠隔操作ユニット & 脳波コントロール

 08位 SMDU(ショートレンジ・マス・デストラクション・ユニット)

 07位 CAT3兵器

 06位 潜行ユニット & 中出力バーニア

 05位 覚醒ユニット

 04位 LMDU(ロングレンジ・マス・デストラクション・ユニット)

 03位 飛行ユニット & 高出力バーニア

 02位 ベースユニット

 01位 合体ユニット



 ゲームでは11位から6位までは別の手段でも入手可能なんだが、5位からは初登場の兵装で、しかもプレイヤーキャラ同士の奪い合いというシステムになっている。


 俺はこの新システムの実装を、ずっと心待ちにしていたんだ。

 だって……5位以上の報酬が、すっげえ欲しかったから……!


 考えてもみろよ……! 遠距離用の大量破壊兵器に加え、空も飛べる……!

 しかも……しかもしかも……てっぺんを取れば、男のロマンである『合体』ができるようになるんだ……!


 くぅ~っ! こんなの……絶対やるっきゃねぇだろ……!

 今すぐにでも、次のランクのメルカヴァを探しに行きてぇ……!


 ランキングシステムを初めて見た瞬間の俺は、そう思った。

 しかし……つぶらな瞳で見上げてくる女の子たちを前に、その思いはすぐに消え去っちまったんだ。


 俺には、守らなきゃいけねぇヤツらがいる……!

 そうだ、俺はずっとここにいなきゃいけねぇんだ……!


 ……しかし、皮肉にも……。

 俺はある出来事をキッカケに、旅立ちを決意することとなる。


 町のヤツらが聖堂院に、大きな『魔送』の受信装置をプレゼントしてくれたんだ。

 多くの人が集まるから、あったほうがいいだろう、って。


 当然、子供たちは大喜び。

 さっそくみんなで集まって、鑑賞会を始めたんだ。


 しかし……最初に飛び込んできた映像は、実に胸糞悪ぃものだった。

 サンタキャップをしたオッサンが、偉そうにわめいてやがったんだ……!



『諸君っ! 余はブラック・サンター総帥、ダッワーマである!


 今日は諸君らに、実に悲しく、嘆かわしい知らせをせねばならない!


 ディス・ベスタの国に駐屯していた同胞たちが、先月から定例連絡を断ってしまったのだ……!


 最後の連絡の際、彼らは言っていた「謎のゴーレムが、我らブラックサンターに歯向かっている」と……!


 その時はたかがゴーレムかと思っていたのだが、どうやら同胞は、そのたかがゴーレムにやられてしまったようだ……!


 余は、我が目と我が耳を疑った……!

 この世界のすべての地を領土とする、崇高なる自由国家……ブラック・サンターに仇なすテロリストがいるとは……!


 余はかつて、何度も声を高らかにしてきた……!

 だが、改めてここに宣言する……!


 このブラック・キャップに誓って、テロリストには、絶対に屈しないと……!


 そして、新たに宣言するっ……!


 余はテロリストに対し、この世界の誰もが体験したことのない、厳しい懲罰を下し続けてきた……!

 そしてそれはゴーレムであったとしても、例外ではないことを、新たに示そう……!


 ……諸君っ!

 同胞を奪われた諸君らのショックは、余にも痛いほどわかる……!


 ならば、武器を持て!

 立ち上がるのだ!


 我らが自由を脅かす、憎きテロリストを粉砕するのだっ!


 疑わしきゴーレムは、すべてスクラップにせよ!

 我らが同胞を奪ったゴーレムの首を、余に捧げるのだ!


 見事成し遂げた者には、1千万(エンダー)の報酬をとらす……!


 さあっ、今こそ我らがブラック・サンターの力を示す時……!

 我らの正義の力で、悪のゴーレムを鉄くずに変えてやるのだ……!』



 ……演説がもうあと10秒続いていたら、俺は間違いなく魔送(テレビ)をたたき壊していたであろう。


 あまりにもふざけた放送に、俺は怒りが止められなかった。

 聖堂院の女の子たちも、街のヤツらも、またブラック・サンターが来たら何度でも追い返してやろうと息巻いていた。


 ……その時は俺も、もちろんそう思っていた。

 ……しかし、時が経つにつれ……考えが変わっちまったんだ。


 俺がこの町にいることがバレたら最後、ブラック・サンターのヤツらはメンツをかけて総攻撃を仕掛けてくるだろう。

 『キング・バンディット号』程度のメルカヴァであれば、たとえ千体同時に相手にしたって負けねぇ自身はある。


 しかし……女の子たち……。

 俺の嫁たちは、タダじゃすまねぇかもしれねぇ。


 ……そして俺は、決めたんだ。

 この街から、出ていくことを。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 旅立ちの日の朝。

 まだ夜が明ける前に目覚めた俺は、横たわるボーンデッドの上で寝ている小さな子たちをそっと手で包み込み、身体から降ろした。



「むにゃむにゃ……ボーンデッドさま……だいすきぃ……」



「うぅん……ボーンデッドさま……ずっと、いしょだよ……」



「ふにゃ……ボーンデッドさま……ちゅーしてぇ……」



 子供たちは揃いもそろって、俺の寝言を言っている。

 胸にチクチクしたものを感じながら、俺はそっとテントから出ようとした。



「……行かれるんですね」



 背後から、ささやくような声。

 俺は振り向いて『アア』とだけ返す。



「……わたしたちのことを心配して、町から出ていかれるんですよね?」



『イヤ チガウ』



 俺は、ウソをついた。



『シタイコ トガアル』



 こんなテキストは、かつては首を傾げられていたのだが……今では普通に通じる。



「したいこと……? それは、何なのですか……?」



『ガッタイ』



「がったい……? 合体が、されたいのですか……?」



『ソウダ』



「それは、ここから出ていかないと、できないものなのですか……?」



『ソウダ』



「……わかりました。では、約束していただけませんか……?」



『ナンダ』



「ボーンデッド様が、合体ができるようになりましたら……わたしとも、合体していただけませんか……?」



 ……合体は、そういうモンじゃねぇんだが……。

 コイツは合体の意味をわかって言ってんのか?



「はい。存じ上げております。合体とは、永遠の愛を誓い合う行為……。聖道者であるわたしにとって、神であるボーンデッド様との合体は……」



 しかし途中で言葉を切って、ふるふると首を振った。



「いいえ……正直に申し上げます……! わたしは聖道者としてではなく、ひとりの人間として……ひとりの女として、ボーンデッド様をお慕いしております……! どうか、ボーンデッド様……! 何番目でもかまいません。いちばん最後でもかまいません。いつまでもお待ちしております……! どうか、どうか……! わたしの愛のすべてを、ボーンデッド様に捧げさせてください……!」



「じゃあ、あたしはその次ってことで!」



 ひょっこりと、ひとりの少女が起き上がった。



「ら、ララニーさん!? 起きてらしたんですか!?」



「へへー! だってあたしも、ボーンデッドさんは行っちゃうんだろうなぁ、って薄々感づいておりましたから……! 実を言うとこっそりへばりついて、ついていっちゃおうかと思ってたくらいです!」



「つ、ついていこうとしていたんですか……!?」



「でも、やっぱやめにします! だって、あたしがいないとルルニーさんはモジモジしてばっかりだから……あたしが引っ張り出してあげないと! それに、あたしもボーンデッドさんと合体したいですし!」



「……わたしも、がったいするーっ!」



「あたしも……!」「あたしも、あたしもっ!」「わたしも、ぼーんでっどさんと、がったいしたい……!」



 連鎖反応のように、次々と起き上がってくる少女たち。


 ララニーが明け方とは思えないテンションで、元気いっぱいに立ち上がった。

 ぐしっ、と涙をぬぐってから、いつもの笑顔で颯爽と言い放つ。



「ではでは、約束してください! ボーンデッド様っ! いつの日か戻ってきて、ここにいる全員と、合体するって……! でないとみんなして、ついていっちゃいますよ? あっ、それとそれと、最後にみんなとちゃんとお別れをしてください! いいですねっ!?」



 俺はコクピットの中で苦笑していた。

 そして別れの言葉のかわりに、こう打ったんだ。



『キス シナ』

『聖女ハーレム編』はこれにて終了となります。次回からは新章です。

区切りとなりましたので、ボーンデッドの現在の所持スキルを載せておきます。


――――――――――――――――――――

●現在の所持スキル


 基幹

  Lv.01 電力供給

  Lv.01 水分供給


 内装

  Lv.01 バスユニット

  Lv.02 魔送

  Lv.01 食料ストレージ

  Lv.02 便器クラス

  Lv.01 シートクラス

  Lv.01 空調

  Lv.01 アウトラインネットワーク

  Lv.01 コクピット安定化


 カメラ

  Lv.04 増設

  Lv.01 ズーム


 マイク

  Lv.03 集音


 アプリケーション

  Lv.01 言語

  Lv.03 地図

  Lv.02 メディカル


 機動

  Lv.01 オートバランサー

  Lv.01 オートパイロット


 外装

  Lv.01 プロジェクション

  Lv.02 オペレートボディ


 武装

  Lv.02 ロケットリム

  Lv.02 サンダーアーム

  Lv.02 ヒートアーム

  Lv.02 ウインドアーム


 ランク報酬

  Lv.01 走行ユニット

  Lv.01 低出力バーニア

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