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19 ボーンデッド、町を奮起させる

新連載、はじめました!


『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


本作と同じ、スキルチートものです!


https://ncode.syosetu.com/n3047es/

※本作の最後に、小説へのリンクがあります。

 相手は百人規模だったが、俺はもう過剰な期待を抱くのをやめていた。


 なにせ襲い来るメルカヴァはどれも虚弱体質で、軽いローキックだけで脚がバラバラになって倒れ、指先ひとつで身体ごと吹っ飛びダウンするからだ。


 俺は世紀末救世主伝説の主題歌を頭に思い浮かべながら、次々とガラクタを鉄クズへと変えていく。


 ボーンデッドのサイドカメラで町のヤツらの様子をチラリ伺うと、揃いも揃って唖然としてやがった。



「す……すげ……!」



「ゴーレムが、メルカヴァに立ち向かってるだなんて……!」



「ゴーレムって、メルカヴァの半分以下のパワーしか出ないと思ってたんだが……?」



「ああ、俺もそう思ってた……! 魔送のメルカバトルだと、よく一体のメルカヴァに何十体ものゴーレムが挑んでって、返り討ちにあってるよな……!」



「でも……あれじゃまるで逆……! ゴーレムのボーンデッドに、ブラックサンターのメルカヴァが一方的にやられてるじゃねぇか……!」



「あれはやられてるとか、そういうレベルじゃねぇ……! なんかもう、戦いですらねぇよ……!」



「ブラックサンターのメルカヴァって、もしかしてすげー弱っちいのか? 見た目にすっかりビビっちまってたけど……」



「そんなわけねぇだろ! 前にいちど、町はずれの山小屋がメチャクチャに壊されちまったの、忘れたのかよ!?」



「じゃ、じゃあ……いまのコレはなんなんだよ……!? そんなヤバイやつが何十体とボーンデッドに向かってってるのに、どいつもこいつも、紙くずみたいに吹っ飛ばされてるんだぞ……!?」



「も、もしかして……ボーンデッドって、メチャクチャ強いんじゃないか……?」



「まさか!? アイツはパイロットのいないゴーレムなんだぞ!?」



 半信半疑の様子の町人たち。


 戦力か半分以下になったところで、ブラックサンターのヤツらも薄々感じはじめたようだ。……遅っ。



『な、なんだコイツ!? なんなんだコイツ!?』



『これだけの数のジャイアント・バンディット号を相手に、よろめかせることもできねぇだなんて……!』



『それどころか、全く歯が立たねぇ……! とんでもねぇパワーと装甲じゃねぇか!?』



『や……やっぱりだ……! 間違いねぇ……! コイツはゴーレムなんかじゃなかったんだ……!』



『な、なんだよっ!? メルカヴァだって言いてぇのかよっ!?』



『こんなデタラメな強さのメルカヴァが、いてたまるかよっ!?』



『そうだ……! メルカヴァでもねぇ……! コイツは魔神だ……! 神が乗り移った魔神なんだ……!』



『ま、魔神っ!? そんなバカなっ!?』



 ジャイアント・バンディット号の頭上に浮かび上がるフェイスが、かつてないほどの恐怖に染まる。

 それは町のヤツらにもハッキリと見えていたようだ。



「ま……魔神さまだって!? そんなバカな!?」



「で、でも……それならわかる……! 見ろよ! あの神々しいお姿……! そして鬼神のような強さ……! 魔神じゃなければ何だってんだよ!?」



「きっと……この町が悪いヤツらに苦しめられていると知って、助けに来てくださったんだ!」



「ま、まさか……聖堂院の子たちの祈りが通じたのか!?」



「そうだ……そうに違いない……! あの子たちは、祈りを持ってこの町を救おうとしてくれていたんだ……!」



「ああっ……そんな素晴らしい子たちに、俺たちはなんてことをしてたんだ……!」



「だが、謝るのはあとだっ! 我々も……我々も立ち上がるんだっ! 魔神様がいれば、ブラックサンターたちの撃退も夢じゃないっ……!」



「そうだ……! 俺たちも一緒に戦うんだ! それがせめてもの罪滅ぼし……! 神を信じる心を失っていた俺たちができる、唯一の贖罪だっ!」



「よおし、みんな、武器を取れっ! 魔神様につづけーっ!!」



「おおーっ!!!」



 町人たちは草刈り鎌やら木槌やらショベルやらを構えると、雄叫びとともに戦場に向かって突っ込んできた。

 俺が止める間もなく山賊どもとぶつかり合う。


 よ、余計なことしやがって……!

 俺のことを魔神だと思うなら、だまってお祈りでもしてろよ……!


 間違って踏み潰しでもしたら、寝覚めが悪くなるじゃねぇか……!


 いままでは鼻歌混じりだった俺の戦いは、音ゲーでいうならラスボス曲に変わったかのように忙しくなった。


 自分の攻撃で町のヤツらを巻き込まないようにするだけじゃなく、町のヤツらがやられねぇように援護しなきゃいけなくなったからだ。


 俺は『サンダーアーム』をレベル2にして、遠距離にも届くようにして山賊どもを狙い撃ちにする。


 ボーンデッドの手のひらから繰り出される雷撃に、黒焦げになっていく山賊ども。

 すると、これまた町人たちが大盛り上がり。



「おおっ!? ボーンデッド様が、雷をお出しになられたぞ!」



「やはり、ボーンデッド様は魔神様だったのだ!」



「詠唱もなく雷撃を放つとは……! あれぞまさしく、神の雷……!」



「ボーンデッド様が、怒りの鉄槌を下されているのだ……!」



「もはや勝利は我々にありっ! 一気につぶせーっ!」



『……うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』



 ハウリングしまくりの怒声が、突如として戦場に響きわたった。


 見ると、そこにはブラックサンターのボスのメルカヴァが立っていて……信じられないものを指で摘みあげていたんだ……!



「るっ……ルルニぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーッ!?!?!?」



 草原を揺らす絶叫。

 俺も思わずシートから立ち上がって叫んでいた。


 ボスのメルカヴァのマニピュレーターには、子猫のように襟を掴まれたルルニーがぶら下がっていたんだ……!



「はっ、離して……! 離してくださいっ……!」



 いつもは大人しいルルニーも、さすがにジタバタともがいている。

 そしてなぜか、手には調理道具のおたまが握られていた。


 ……もしかして、戦いに参加しようとしていたのか?


 しかしルルニーのヤツ、どうやって聖堂院から抜け出したんだ……?

 いや、そんなことは今どうでもいい……!


 俺は助けに向かおうとしたが、それよりも早く巨大な蛮刀がルルニーに突きつけられてしまった。



『……おおっと! 動くんじゃねぇ、クソゴーレム! 少しでも動いたら、このお嬢ちゃんはふたつに分かれちまうことになるぜぇ……!? タテかヨコかは知らねぇけどなぁ! ……ガッハッハッハッハッ!』



 ……くっ……!


 俺は人知れず歯噛みをしながら、思考をめぐらせた。

 どうすれば……どうすれば、ルルニーを助けられる……!?


 『サンダーアーム』は……ダメだ、ルルニーまで感電させちまう……!


 『ヒートアーム』は近づかねぇとダメだし……『ロケットリム』は動作が大きすぎてバレちまう……!


 くそっ……!

 今あるスキルじゃ八方塞がりじゃねぇか……!


 遠隔操作ユニットでもあれば……!

 いやせめて、CAT2兵器でもあれば……!



「……ボーンデッドさん」



 不意に、ボーンデッドのうなじのあたりから声がした。



「あたしです。ララニーです」



 背面カメラのモニターを確認すると、ボーンデッドの後頭部に隠れるようにしてララニーがいた。



「ボーンデッドさんが心配になって、ルルニーさんといっしょに聖堂院の壁を破壊して出てきたんです。その時のルルニーさん、すごかったですよ……泣きながらテーブルをがばあって持ち上げて、ボーンデッドさーんって名前を叫びながら壁にガンガン叩きつけてたんですから」



 ……ルルニーがそんなことを? 想像もつかねぇな。



「なんとか聖堂院から抜け出して、町の外にやって来たら、ボーンデッドさんとみなさんが戦ってましたから、こうしちゃおれん、って馳せ参じたんです。そしたらルルニーさん、捕まっちゃったみたいですね……」



 そう悔しさをにじませるララニーの手には、フライ返しが握られていた。


 なんだ、そういうことだったのか……と顛末を理解していると、思いもよらぬ提案が飛び出す。



「あの、ボーンデッドさん、カレー屋さんのオープン初日のときに、カレーのニオイを風で飛ばしてたじゃないですか、アレをもういちどできませんか? あたしがあの風に乗って、ルルニーさんを一気にさらいますから」



 『ウインドアーム』か……!

 俺は盲点を突かれた思いだった。


 ウインドアーム単体であれば、ボスのメルカヴァをよろめかせるくらいだろうが……ララニーをあそこまで飛ばすくらいなら簡単だ……!


 でもそうなると、『ウインドアーム』はレベル2じゃなくちゃならねぇ……!


 なぜならばレベル2になれば、腕以外からも風を出せるようになる。

 怪しまれる構えをとる必要がなくなるんだ……!


 俺は迷わずスキルウインドウを開き、『ウインドアーム』をレベル2にした。



「……ボーンデッドさん、コッチはいつでも準備オッケーです! 風さえ起こしてくれれば、あたしはそこにチャッカリ飛び込みますから……!」



 コイツは俺が返事をしなくても、勝手にどんどん話を進めていくところがある。

 今ほどそれが有り難いと思ったことはなかった。



『……さあっ、クソゴーレム! このメスガキの命が惜しかったら、離れな! おめぇはイキナリ手から電撃を出したりするだけじゃなく、手も飛ばすそうじゃねぇか……! この距離だと、なにしでかすかわからねぇからなぁ……!』



 そうだ……よくわかってるじゃねぇか……!

 その通りだよ……お前みたいなオンボロが、逆立ちしてもできねぇこと……今からやってやるよ……!


 俺は期待に応えるように、『ウインドアーム』をブッ放した。



――――――――――――――――――――

●レベルアップしたスキル


 武装

  Lv.01 ⇒ Lv.02 ウインドアーム

  Lv.01 ⇒ Lv.02 サンダーアーム

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