案内者達の夜話・後編
「あっ、アホかおぬしッ! まさか灰賀と寝る算段ではあるまいな!?」
「フフン……」
レクチェはうろたえているアップルに対し、靦然たる態度で、あたかも大人の様に色気をアピールする。そして、その右手のいやらしい手つきで彼女を煽る。
これに関しては以前記述した通り、この電脳世界で生殖行為自体は可能である。
「とにかく見てみようではないか……、貴様もフレッドとセックスしてみたいとは思っているのだろう?」
DVDを内蔵できる16インチのテレビに、そのAVをためらいなく差し込む。
「ワシが……、ワシはそのような事を考えておらん。それにフレッドには……モニカという恋人がちゃんとおるのじゃ……!」
「そうか…………、だが私はこれで色々と勉強したいのだ。灰賀のためにな」
対立していがみ合うアップルとレクチェ――。自分の使命を第一にして、普段から恋愛感情を完全に抑えていたアップルには理解しがたい相手である。
「まぁ……、先輩のその外見では激しく犯罪臭がしてしまうな」
「……ワシらの役目はこの世界のセキュリティを改善し、閉じ込められたユーザー達を開放してやることなのじゃ。ナビゲートの意味をはき違えるでない!」
「閉じ込められた……か、フフッ…………強制的に仮想世界へ押し込んだのは《《コチラ》》側の人間のはずだが? はき違えているのはどちらだろうな? 」
アップルの揚げ足を取るために、レクチェは意味深な憎まれ口をたたく。
レクチェの魔女の様な服装がより一層、腹黒い彼女の内面を浮き彫りにしている――。どうやらアップルに対して、敬意を払う姿勢はあまり無いようだ。
「レクチェよ……、ワシらには責任がある。プレイヤーの霊子線がコンピューターに融合しておる状態を、なんとか解除せねばならぬのじゃ…………」
「フフッ……。最悪、本来の肉体を捨てるというのも手であろう? 私が灰賀とここで永遠に愛し合えるのなら、願ったり叶ったりというものだ」
――――ふたりの発言の度合いが徐々にエスカレートしていく。
アップルは眉間にしわを寄せ、テーブルの上のリモコンを手に取り、嫌々DVDの再生ボタンを押した。下着姿の金髪のセクシーな女性がテレビに映し出され、挑発的なポーズで画面狭しと動き回る。
『オォ~イェース………カマーンボーゥイ』
「もう好きにするがよい。……おぬしと口論をしても無駄のようじゃ」
説得の甲斐も空しく、遂にはアップルの方が折れてしまった……。
「……アップル、別に腹いせのために嫌味を言ってるわけではないのだ」
「…………」
完全に機嫌を損ねたアップルは台所に行き、食べ物を漁り始めた。200グラムのステーキを平らげて、尚も彼女の腹は満たされていない様である。
「音量を下げてもらえんかの。……気が散って食えぬのじゃ」
リモコンを操作しスピ-カーの音が聞き取りづらくなったため、レクチェはテレビから至近距離に居座り、パツキン美女のAV鑑賞に集中する。それを呆れた表情をして、レクチェの後頭部から覗くように観るアップル。
うす塩味のポテトチップスを食べて気を紛らわせているのだろうか……――。露骨にパリパリと音を出し、それを大げさに噛み砕く。
「卑猥じゃのぉ……。これなら先ほどのメロドラマの方が100倍マシじゃな」
「前戯には10分以上はかけるものだと思っていたが……、中々どうして……。行為に及ぶまでが早すぎないか、アップル?」
「ワシにそのような話をふるでないわッ!」
しきりに猥談をし、興奮を隠しきれないレクチェ。
50分の再生時間を耐えきったアップルはあくびをして、その場の空気を清涼にすべくテレビの主導権を取り返す。そしてレクチェと同様、何かしらの方法で取り出した持参のDVDを再生する。
「SF超大作スターシップ・レコードのベストセレクションじゃ。今度はワシの番じゃからな? 文句はあるまい!」
素直に無言でうなづき、テレビ前にかじりついていたレクチェがその場から退く――。すんなり言う事を聞いたレクチェに対しアップルは少し不安がよぎった。
先端がとがった前衛的なデザインの宇宙船が離陸する映像が流れる。
「ん? なんじゃ……ワシに何か用でもあるのかの?」
すると、レクチェの方からアップルにジワリとすり寄っていく。
「…………さっきはお子様体型とか悪口をいってすまなかったな、アップル」
「ぬぬっ? もうそのことは気にしていないのじゃ……」
さらには肌と肌を密着させ、媚びるようにアップルの鼻息をうかがう。よく見るとレクチェの全身が火照って、風呂上りのように真っ赤である。
「可愛らしい繊細な上半身とは相対的に、むちむちのエッチな下半身とは……いやらしい女だなアップル。さては、私を誘っているのだな?」
「アッ、あふんっ! 何のマネじゃレクチェーーーー!?」
右手でアップルの太ももをさすり、続いて彼女のボリューム満点のプリティヒップを揉みしだく。敏感肌なアップルはレクチェのセクハラに耐えれずに、ソファーの上で背中を丸めて猫背になってうずくまってしまう。
「ココの感度が良好のようだな……。ホラホラ、もっと股を開いてくれ」
要するに、エロビデオを見て発情してしまったパターンのようだ。
「くぅ……、フレッドみたいなネチっこい攻めをしおって! あぁん!」
このレクチェの愛撫は先ほど鑑賞したAVを手本にして、アップルの局部を絶妙にまさぐる。次第にアップルは涙目になり、その吐息を荒くする。
「もう……やめるのじゃ…………。あぅ……!」
「今からが本番なのだぞ? さぁ、生まれたままの姿になってもらおうか……」
遂にはアップルの赤色のアンダースコートに手を伸ばし、股に食い込んだハイレグをじわじわ緩めて、大胆にも服を脱がし始めた。
――と、その時ガタッと物音がした。アップルに淫らな行為をしつつも、レクチェはそれを聞き逃さなかった。
「見ているなッ…………、貴様!?」
「ヒィー! スッ、スイマセンでした!!」
なんと二人のこの光景を目にしていたのは……、目を覚ましてこっそり覗いていたフレッドだった。面食らった彼は思わず、両手で股間を抑え飛び跳ねた。
「フレッドォ……! 隠れてワシのあられもない姿を見て、興奮しておったな!!」
脱がされそうになった服をそそくさと直し、身なりを整えるアップル。
「いやぁ……、お楽しみの最中に邪魔しちゃ悪いかなっと思ってさぁ……。まさかナビゲーターのふたりがレズビアンだったなんて知らなかったから」
どうやら今しがたのプレイのせいで、誤解を受けている模様である。
「いやッ……、勘違いするでない! ワシはノーマルじゃ…………」
「言い訳をするとは、みっともないぞアップル!」
その場のノリでレクチェが叱咤し、アップルの弁解に余地をなくす……。もはや、二人の関係は疑いようのない同性愛者になってしまった。
「じゃあ……俺は2度寝してくるから、ごゆっくりどうぞ!」
熱くなった身体の一部を落ち着かせてから、フレッドは改めて2階への階段を上っていく。
「ワシを助けるのじゃ、アンポンターーーーーーんっ!!」




