9話
「落ち着いて下さい。リースレット殿。貴女には大切な仕事が控えて有りますので、どうか落ち着いて下さい。」
あの小娘はリースレットと言うらしい。
「私はそんなもの存じません。それよりも私の質問に答える気はあるのですか?無いのでしたら、覚悟して頂きます。」
メガネは降参とばかりに両腕を軽く持ち上げる。
「はぁ。それでは説明致します。ですのでかかって来ないで下さいね。皆さんは貴重な戦力なんです。此方も悪戯に数を減らしたくはないのですよ。」
向かい合う人々は皆困惑している。
しかしリースレットだけは毅然と在り続けた。その姿に一部の人々は彼女に期待している様に映る。
やっぱり女神にしか見えない。
「先ずはこれについてですね。」
左手を俺に向け視るように促す。
《これ》呼ばわりだ。
「これは魔人族が神と崇める存在《魔神》です。」
ドーモ。《これ》こと《魔神》です。
「魔神は魔王すらもこえる危険な存在。そんな危険な存在が領地の近くに現れたのです。」
話が違うな。コイツ等は俺を魔女から買ったと言っていたはずだ。
「魔神を倒す為の道具が必要で皆の金銭が必要だったのです。そう、言うなれば私達が皆を救ったのです。」
とんだ嘘つき野郎だ。
「ソイツが魔神だって証拠が何処にあんだよ!」「皆で討伐すれば良かったじゃねーかよ!」「魔神を捕らえるとかテメーは魔人族と戦争する気かよ!」「テメー等が魔神に勝てるわけねーだろ!」
「はぁ。質問には答えますので落ち着いて下さい。
先ず魔神としての証拠ですが、先程私達が使っていたのは呪法ではなく魔法です。
ご存知ですか?魔法は私達が使う法術とは次元が違います。
そう、人族最強の聖女リースレット殿の聖法とは対極に位置する力なのです。だからこそ、土法では防げなかった。
魔法を使えるのは各魔人族の中でも各々の魔王と次期魔王のみ。魔物の中では一族の長である魔獣のみ。これはどう見ても魔獣ではない。そして、この様な姿の魔人族は存在しない。よってこれは魔神なのです。」
暴論による証明だ。けど誰も否定出来ない。
どうやら魔神てのは未知の存在らしい。まぁ神様なんだからそうだよな。
未知の存在だから否定の使用がないのも仕方ない。
「次に戦争をする気か?と言う質問ですが、肯定です。」
「ふざけんなぁ!」「この国が勝てるわけねーだろが!」「死にてーならテメー等だけで死にに行けや!」
「勝てるんですよ!魔神がいれば!
おっと失礼。少々取り乱しました。先程も御覧になりましたでしょう。この鎖によって私達は魔神の力を魔法を扱うことが出来るのです。
わかりますか?
私達は最強の力を手に入れたと言えるのです。
勝てるのです。私達は。
リースレット殿、貴女の力が加わればそれは絶対的です。
ですので、もうこんな辺境で燻っているのは終わりにするべきなのです。
さぁ皆さん行軍の準備に入りましょう。我々のアルバロス王国を取り戻すのです。そして、帝国を倒し魔人族をシルフもエルフもドワーフも小人も巨人も獣人も全てを支配しようではありませんか。
私達人族こそが、否、私達、アルバロス人こそがこの世界で一番優れた存在だと知らしめるのです。」
「私は戦争に手を貸す気はありませんが?」
リースレットの拒絶にメガネは厭らし笑った。
「えぇ、貴女は戦う必要は有りません。ただ、産んでくれさえすればいいのです。聖法が使える私達の子供を。」
コイツなに言ってんだ。
「ミリア様方には兵の慰み者になっていただいた後は魔神の子を孕んでいただきます。魔神の子供ですからね。おそらくは魔王並の強さを持つことが予想されます。そして奴隷にして戦場に投入すれば敵無しでしょう?
その子等の抑止力として貴女の力を持つ存在が必要なのですよ。
奴隷として飼い続ける為の力が。」
コイツなに言ってんだよ。
アイツ等はなんで黙ってんだよ。
「先ずはブルート様の御子を産んだ後に私達の子を産んで貰います。平民の生まれである貴女が高貴なる子を産めるのです。そして、その子等は救世の英雄となるのです。どうですか?素晴らしい事でしょう?」
…………………………………………………………………………………。
「拒否します。貴殿方の子など産みたくありません。」
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まぁそうだろうよ。
「まぁ否定なさるのは解っていましたよ。貴女はクーデターを先導した人ですからね。あの時は貴女に勝てる者はおりませんでした。
ですが今は違う。ご存知無いでしょう?
魔神は無限の法力量を持つのです。いや、魔神の場合は魔力と呼ぶらしいのですがね。
まぁ何が言いたいのかと言いますと、有限の貴女では無限の力を持つ私達には勝てないと言うことです。」
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「「「ブルート様。カルバス様。」」俺達を貴方様方の兵に加えて下さい。」
汚いゴミが増えた。
行動も汚ければ姿も汚いゴミだ。
「テメー等‼」
鎧の男が怒りで叫ぶ。アイツはまともらしいな。
「ウルセー!元はと言えばコイツ等が悪いんだろーが!コイツ等がクーデターなんて起こすから。
だから俺達まで要らない物みたいにこんな所に連れてこられたんじゃねーかよ!?こんな、クソみてーな所によぉ!
だからだ。だからコイツ等には落とし前着けさせなきゃなんねーんだよ‼」
女の子達は皆自分を抱き締めたりお互いを抱き締め合っている。リースレットもそうしてる。
怖いのだろう。周りを男に囲まれいるから。
「いいでしょう。
さぁ他の皆さんも急いだ方がいいですよ。出ないと彼女達を抱く番がどんどん遅くなりますよ。」
「「「「「うおぉーーーー」」」」」
武器を持たない数人の男共が彼女達に群がって行く。
「止めろ!テメー等‼」
鎧姿の男達がそれを防ぐ。
「このゴミ糞共がぁ‼
テメー等嬢ちゃん達を守れ‼男を見せやがれぇ!!!!
あの糞共を今日殺すぞ!!!!!!!!」
「「「「「「「「「「「オオオオオオ!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」