8話
歳は十代だろうか。外国人の年齢は解りづらい。ただ何処か幼さを感じる。
けど、綺麗な姿だ。白みかかった金髪も、俺に微笑む唇も、清楚な衣を纏った体も、仰々しい錫杖を持つその細い腕までもが。
「もう泣かなくて大丈夫ですよ。」
そう言われて気がついた。
俺、また泣いてたのかよ。
メチャメチャ恥ずかしい。
確かに綺麗だか、あんな子供に慰められたなんて。
「来ましたか。役者が揃いましたね。」
クソメガネ野郎が否定くらいさせろや。
「それでは説明をさせていただきましょう。」
なんでそんなに上からなんだよ。
「偉そうにしてんじゃねー!」「先ずは謝罪からだろーが!」
ごもっともだ。
「私達は皆様に謝罪する気はありません。」
豚が横で『うんうん』と頷いている。
「「「「「「「「「「「ざけんなやゴラーーーーーーー」」」」」」」」」」」
厳つい男達がぶちギレてる。無理もない。
「ぶっ殺す」
数名が堪えきれずに武器を掲げて此方に駆け出してくる。
有言実行はいいが不用意過ぎじゃないか?
「貴方達!見せておあげなさい。」
最早、お前が王様気取りかよ。
横で豚が『我のセリフだ』と抗議してる。
やはり使うのは俺の力なんだな。
解っていたから止めようとしたが流れ出る感覚は収まらない。
5人は黒い球体を撃ち出した。
只それだけなのに、飛び出してきた者の前方にいた人は黒い煙を上げて吹き飛ばされている。そして、当たったであろう箇所の肌が黒く変色している。
「あれは呪法だ!土法で盾を造れ!直接当たらなければあんなものクソだ!」
「俺が壁を造るから誰か解呪に行け!」
《じゅほう》?《どほう》?
?????
かべ?
非現実的な出来事が目の前で起きているが別に気にしない。
他人事だ!俺はそうゆう人間だし。
それよりまた変な単語が出てきた。
《魔法》、《かほう》、《じゅほう》、《どほう》。
そんな事を考えていたら倒れている人を守る様に土が壁になった。これが《どほう》?
全部に《ほう》が付いている。
だとすれば、《かほう》が火で《火法》、《どほう》は土で《土法》ということか。なら《じゅほう》は呪いで《呪法》か。
解ってきた。
しかし、あれ?じゃあ《魔法》ってなんだ?そもそも《魔》ってなんなんだ?
土壁の向こう側では呪いを受けた人を助けようとしている様だが手下の一人が構わず黒い球体を撃った
。
これは《魔法》ではなく《呪法》だったのか?
土壁が一発て黒く変色した。端の方は崩れている。
??《土法》で防げるんじゃないのか?
「なっ、あぶねー!そこから逃げろ‼」
男の叫ぶのと同時に次の一発で壁は貫かれた。
助けようとしていた人達は皆吹き飛ばされている。そしてやはり黒く変色しているのが確認出来た。
叫んだ男の顔は、あり得ない物を見たような表情を浮かべている。
…………………………………………………。
なんだか気に入らない。
一方的な展開が?
違う。暴力ってそうゆうもんだろ。
あんな力卑怯だから?
違う。暴力に公平を求めるのが間違いだ。
自分がされてきた暴力に自分が利用されて要るから?
………違う。近い気はするが違う。俺はそんな善人じゃない。
他人の力をまるで自分の力の様に振る舞う姿が気に入らないんじゃないの?
そうかもしれない。
何処かで見た光景じゃないか?
そうだな。人を蹴落として笑うあの顔。
良かったじゃないか?今度こそ復讐出来るかもね?
ああ、そうだ。もう限界だ。被害者も加害者も、もう知った事じゃない。
今度こそだ。今度こそ俺の手で、殺してやる。
体が震える。歓喜の慶び。
世界で一番尊い、醜く、傷んで、汚れて、穢れて、腐りきった俺の心を貴様等にくれてやる。
「私の声が聞こえていなかったのですか?」
彼女の声が場違いにも響く。
少し怒ったのであろう、その声に何故か悪寒が走り彼女を視る。
彼女は手にした錫杖に光を灯しながら歩いて来る。
そして、倒れている男達に光を注いでは此方に歩んで来る。
男達の変色した肌が治っている。
「私は訊ねましたね。その子に何をしたのか?可哀想に。震えてるじゃないですか!?覚悟はいいですね?
待ってて下さいね。今助けますからね。」
彼女が近付いて来るにつれて綺麗だと感じた印象から、可愛らしいとゆう印象に変わってきていた。特に少し垂れ下がったエメラルド色の瞳がそう感じさせる。
そして俺もまた、歓喜の震えから屈辱の震えへと形を変えていった。
またしても年下の子供に同情された。
10歳程離れた子供に。
しかも今度は《その子》。《その人》から《その子》。
あんな子、嫌いだ。