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生きたがりの魔神  作者: 憂人A
12/92

12話

直視出来ない光が止んだ後の光景は中々に酷いものだった。

一瞬サーシャに見せない様にしようとも思ったが現状を理解するのに時間がかかった為手遅れだ。


ベルストの足と思われる物と腰を抜かしたブルートの姿がそこにはあった。

まるで長靴の様に立ってる足を見ながらブルートは震えている。


「はぁっひっ、ばっ、化け、物」


足から上は蒸発したのだろう。目の前で人が死んだことに驚きはしたが全く感情は動かなかった。だが、ブルートの悪運の強さはに歯噛みしてしまう。



「おいおいマジかよ!」

「ベルストが死んじまったぞ」

「貴方達!何を呆けているのですか!直ぐにブルート様をお守りしなさい!」


「魔法より聖法の方が上なのかよ」


メガネが命じると残り四人の手下達はブルートの元へと集まり魔法の幕を形成する。しかしその姿からは今までの余裕が感じられない。リースレットに脅え、出された命令に只従っただけにも見える。もしくは残った全員で幕を張れば助かるかもと思っただけかもしれない。



只、確信出来た。彼女なら俺を殺せる。

おそらく、此処にいる彼女以外の他の誰も俺を殺す事は出来ない。

何故なら今まで俺が負った傷は直ぐに治ってしまうからだ。現に背中に何か刺さったままなのに痛みを感じない。傷を負った瞬間は痛かった、なんてものでは済まないが今では痒い位だ。これも魔神としての力なのだろう。

しかしだ。あれなら死ねる。多分。

あんな足だけの状態から生き返ったらキモ過ぎだ。



「リースお姉ちゃん!」


リースレットが膝を付き錫杖に寄り掛かっている。息も乱れているようだ。


「お姉ちゃん!逃げて!」


サーシャの言葉で理解した。彼女は限界を向かってしまったのだと。

メガネ野郎の言葉が頭を過った。

彼女は有限。

それはこの事だった。


「やはり貴方が一番の危険人物でしたね。」


あぁ、そうだろよ。頭の回転の遅い俺でも気付いてるんだ。テメーも当然気付くよな。


「ベルストを失ったのは痛手ですが、貴方が手に入るなら御釣りが来るというものです。さぁ、取り掛かりましょう。」


メガネは勝ちを確信して笑う。


「脅かしやがって。まぁその分可愛がってヤるからな。」

「薬漬けにすんのは最後だぞ!最初の抵抗する姿がそそるんだからな。」


下衆野郎共がリースレットに向かって歩み出した。


「ざけんなゴミ糞が!」


鎧の男達の中で一番声を張り上げていたボスらしき中年位の金髪の男が単身で下衆野郎共に向かって駆け出す。

だが、下衆野郎共は最早相手にもしていない。

黒い結界、もしくはバリアとでも呼ぶべきそれにもう敵は居なくなってしまったからだ。


男は結界に斧を叩きつけた。

だが、やはり斧の刃は届きはしない。


「テメー等、今直ぐそこから出て来やがれ!この腰抜け共がぁ!」


男は幾度も斧を弾かれながらもそんな悪態を付く。


「シーゲルさんよぉ。テメーには世話になったよなぁ」

「あぁ、痛かったぜぇ。テメーの拳。」


下衆共は感慨深そうにそんな言葉を吐いている。


「テメー等みてーなクソったれにはそうするのが一番だからな!

糞が!殺しときゃ良かったぜ!」


「そーゆーのなんて言うか知ってるか?」

「後の祭りぃ」

「せーかい!」

「残念。シーゲル君。不正解。では、罰でーす」


4人の下衆はそれぞれ両手に魔法の玉を作り出した。

それを見たシーゲルは諦めた様に斧を構えるのを止めた。

息を切らしたその姿からは悲愴感が滲み出てる。


「テメー等にはろくな死に方させねーからな。」


「それは俺のセリフだ。」


そしてシーゲルは吹き飛ばされた。



やはりこうなった。

まぁそうだろうな。そうゆう計画だったんだし。その為の俺なんだしな。


糞が!なんでブルートを狙ったんだ。

討ち損じれば自分が危険に晒されるなんて考えなかったのかよ!

俺を殺しに来てれば確実に勝てたのに。

同情なんかしてるからそうなるんだ。

ガキが人を救うとか見下した事言ってるからそんな事になるんだ。

あの女は馬鹿だ。



「神様。」


俺の事?

少女の声に振り返る。


「お願いします。」


少女は俺の手にすがり懇願する。


「お姉ちゃんを助けて。」




俺は神様なんかじゃないんだけどな。


「ふー」

重いため息を吐き出す。


無理だろうな。

前にボコボコにされたばかりだ。

けど、なんだかな。


「……………ねぇお嬢さん?私の背中に刺さってるもの抜いて貰ってもいいかな?」


遂、《私》なんて言い方をしてしまう。子供と話す機会なんてなかったから畏まってしまった。



少女が取りやすい様に跪くと少女は後ろに回って背中の物を揺らし始めた。


「ぐわっ」


しまった。傷口が閉じてたんだった。メチャクチャ痛い。

肉が締まって抜けなくなっている。


「ご、ごめんなさい。」


「大丈夫だから続けて。」


少女は泣きそうな顔で頷いた。

この子には中々酷なことを頼んでしまったな。


「ふんーー」


可愛らしい声に思わず微笑んでしまいたくなる。

俺も気張らないとな。


「だらぁ!」

前に力一杯踏み出し足の力を使って無理矢理背中の物を抜く。


「はぁ」


やっぱり痛いものは痛いんだな。


後ろを振り返ると少女は柄の短い斧を持っていた。折角抜けたのにまだ泣き出しそうだ。

これ投げつけたの多分シーゲルって奴だな。


「ありがと。」


少女を撫でながら斧を受け取る。

そして、下衆共に向かって歩く。



よりによって斧か。武器の扱い方は先生からは習わなかったからな。しゃーねーよな。

柄が短いから投げる用だよな。まぁ、俺が投げても当たんないだろうし、片手で使うしかないな。


握りを確める。何かを掴む時は親指の付け根と中指、薬指、小指を使うんだったな。


うん。初めて振るから良いのか駄目なのかわからん。


まぁ俺のやることは変わらない。


なんでこんな事しようとしてんのか?

俺も神様にお願いしたことあるから。

願ったのは自分を救ってくれって事だったけどさ。



神様よーぉ。今さらアンタに願い事なんて無いけどさ。聞いてみたい事はあんのよ。


アンタに怖いものはあんのか?


俺には………………あるよ。


いい加減主人公に服を着せたいとは思ってはいるのですが中々。

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