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異形と再会

と、はANDです。異形とは、知り合いでも何でもありません。


白雪の背に乗って飛び続けること三十分。王国の北方面の上空に到着した。

「着いたよ。ここで変な奴らが出てきてるんだ」

「もう着いたのか?早いな。馬で飛ばしても、二日はかかるぞ」

かなり高速で飛んできたのに、背中に乗っていた俺はかなり快適だった。何か魔術でも使ってんのか?

「うん。風を避けたり、温度を一定に保つやつ。それを使わなかったら、吹き飛んじゃうし、掴まってても凍死しちゃうよ」

「そうか。ありがとな。それで、ここに何がいるんだ?変な奴らって、どんな感じで?」

「見たほうが早いよ。ちょうどこの下にいるから」

そう言われて、下を見る。はるか下の大地には、黒っぽい生物のようなものが蠢いている。

そいつらはこの世界からしたら、異形の存在だった。色んな魔獣が混ざり合い、一体を形取っている。あれは・・・キメラなのか?それにしては融合してる種類が多すぎるし、形も無理矢理まとめたみたいにグチャグチャだけど...。

「あいつらはいつ頃からいるんだ?」

「今日の朝方から、急に出てきたんだ。何なのあれ?気持ち悪いよ...」

「俺にも分からない。良いものだとは思えないけどな...」

異形たちは付近の山麓を覆い尽くしており、未だ数を増やし続けている。どうやら山の中腹から発生しているみたいだ。そこからは、さっき感じた禍々しい気配もしている。こいつらの出所も、それだろうな。早く片を付けないと、大変なことになるぞ...。

「ひとまず王都に戻ろう。ここにいても、俺たちじゃ何も出来ない」

「うん、分かった。けど、私がまた行ったら、大騒ぎになっちゃうんじゃない?」

「王都から少し離れたところに森があるから、そこに下ろしてくれればいいよ。白雪は、小さくなれるか?」

「なれるよ。蜥蜴みたいになるだけど」

「それで十分だ。早く戻ろう」






王都は逃げようとする人たちで大騒ぎだった。どうやら、あの異形たちの情報が漏れたようだ。

白雪は小さな蜥蜴に変身して、俺のポケットの中に入っている。ビアンカたちはどこにいるんだ!?

ひとまず競魔場に戻る。さっきまでの賑やかさはどこへやら、ひと一人っ子いない。

「リュー!どこいってたの!?あの竜は!?」

いや、ビアンカたちがいた。あと司会の人もいる。おれが戻ってくると思って、待っててくれたのか。

「後で説明する。この騒ぎは?」

「さっき、帝国の元老院のが映像の魔術具を乗っ取って、邪神が復活したって言ったの。通信が終わる前に、話してた若い男が殺されたの。酷い殺され方でね...」

「邪神...。本当か?」

「その男が言ってただけだから分からないわ。ハッタリの可能性もあるし」

「まあ、それは追々分かるだろ。それより、マズいことになっている」

見てきたことを説明する。司会の人は、俺の無事を確認すると避難していった。

「そんなのが、いたんですか...。でも、大丈夫ですよ!今、王国には皇国と帝国の部隊がいるんですよ!」

「・・・だが、あれには鼓笛隊も含まれている。実際に戦闘出来るのは、半分ほどだろう。冒険者を動員すればそれなりの人数にはなるだろうが、連携の面で不安だ。私たちも行ったほうが良くないか?」

「そうね。シャネルもギルドに向かってたしね。非常事態には、協力義務があるのでしょう?」

「そうだな。タマモは学院に戻れ」

「はい。・・・絶対、無事に帰ってくださいね!」

タマモを学院に戻して、俺たちはギルドへと向かう。あそこなら、情報が集まってきてるだろう。






ギルドは、行き交う職員と冒険者で大混雑していた。みんな忙しそうで、とても話を聞けるような状況じゃない。どうすればいいんだろうか。

三人揃って突っ立っているのを見た職員に、急き立てるように声をかけられる。

「こんなところで、何をしているんですか!?早く北に向かってください!敵がもう迫ってきているんですよ!?」

「そんな近くまで来ているんですか?」

「まだ王都の近くには来ていませんが、時間の問題です。少しでも多くの人を逃がせるように、時間を稼ぐんです!」

そう言って、職員は走っていった。俺たちも向かったほうがいいかな。

「そうね。じゃあ、早いうちに...」

「その必要はありません。あなた方には、城へと来てもらいます」

突然、入り口のほうから声をかけられる。振り向くと、そこには眼鏡をかけた男性が、いつの間にか立っていた。

「・・・あなたは?」

「申し遅れました。私は、帝国親衛隊のリシシューと言います。あなたのことは、レアさんから聞いてますよ」

親衛隊。あの高い鎧を着てた奴らのことだな。レアもあの中にいたのか。

「親衛隊ね...。そんな部隊に所属しているあなたが、どうして私たちの所に?城に来てもらうって?」

「グルド王子が、あなたたちをお呼びです。戦力になるとのことです」

「いつから俺たちがいると、気づいていたんだ?」

「王都に入ってから、ずっと隠密が監視してましたよ。本人だと確証を得るために、しばらく泳がせていました」

誰かに狙われてる気がするって思ってたけど、それはこいつらのことだったのか。俺の勘も、中々当てになるものだな。

「それで、一体何の用ですか?こんなところで話している場合じゃないことは、あなたも知っているでしょう」

「ええ。そのことについてなんですが、とりあえず城まで来てください。そこで詳しく話します」

「・・・分かりました。一緒に城まで行きますよ」

レアやグルドにも会っておきたいし、情報も多いだろうしな。行くだけ行ってみよう。






城には裏口から通された。一介の冒険者が城に入るところなんて、誰にも見せられないんだろう。

しばらく長い廊下を歩かされて、ようやく一つの部屋の前に到着する。ここにレアとグルドが...。いや、他にもいるんだろうけど...。

「ここです。中にグルド王子とレアさん、あと親衛隊員五名がいますよ」

「五名?少ないんですね」

「ああ、言い忘れてました。親衛隊は、二つに分けられているんです。直接王子を護衛する者と、城を守護する者達です。後者は三十人ほどいるんですが、前者は私を含めて六人しかいないんです。レアさんも、その内の一人なんですよ」

「そうなんですか」

レアの実力なら当然だな。むしろ、そんくらいの待遇をしてなかったら、文句の一つでも言ってただろうな。

リシシューさんは、扉をノックしてドアを開ける。中は説明するのも面倒臭くなるほど豪華な部屋で、中心に四人の男女が一つの椅子を囲んで立っていた。

椅子に座っていた奴が立ち上がり、俺の方を向く。それと同時に、周りの護衛も振り向き、

「久しぶりだ...」

「リュー!!!」

中心に立っていたグルドが話すのと同時に、レアが俺にダイビングハグを仕掛けてくる。まさかグルドの話をぶった切ってまで抱きついてくるとは思っていなかったので、まともに飛びつかれて尻餅をつく俺。

「リューリューリュー!!!ふわああ!!!リューだリューだリューだ!!!」

「ちょ!?待て、レア!こ、こら!顔舐めるな!犬か!?」

こうなるって分かってたから、武闘大会にも変装して出たのに!見つかっちゃったら、意味ないんじゃんか!

それからレアを引きはがすのに、数分かかった。部屋にいる全員でやったのにだ。愛の力ってすごい。







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