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試合開始


「それでは、今から撃退百周年記念武道大会を開催します!」

司会が宣言をすると同時に、競魔場中から大きな歓声が巻き起こる。祭りのメインイベントの一つ、武道大会の幕開けだ。

予選の時は誰もいなかった観客席は、今は大勢の人で埋め尽くされて、立ち見をしている人までいる。

「まだ一回戦なのに、人が多いわね。決勝戦になったら、どれだけ人が来るのかしら?」

「入りきらなくなるかもな。でも、あれで中継してんだろ?」

選手は控え室で待機していて直接競魔場を見ることは出来ないのだが、壁に一枚の鉱石で出来た板が設置されていて、そこには競魔場の映像が映し出されている。映像と音声を出す魔術具らしく、外にも大きい物があった。テレビみたいなもんだな。こういうイベントのときにしか、使われないらしいけどな。

「俺は第三試合か。ビアンカは第四試合だから、勝ち上がったら戦うことになるな」

ちょうど今、対戦表が発表された。シャネルちゃんは第一試合。当たるとしたら、決勝戦だな。

「・・・そして、あそこにおられるのが帝王様、皇王様とその御家族。教皇様と聖女様であられます!皆様、盛大な拍手を!」

上にある特別席から王族と聖教の人たちが見える位置に出てきて手を振ると、さっきより大きな拍手が起こる。ステータスにカリスマの項目があったら、Sランクなんだろうな。

王族が下がり司会がルール説明に移ると、男性が一人控え室に入ってきた。

「説明が終わり次第試合が始まります。ガントルさんとサンクさんは、舞台に向かってください。司会が呼ぶまで、舞台には上がらないように」

シャネルちゃんと対戦相手の金属鎧を着た男性、サンクさんが部屋を出て行く。シャネルちゃんなら問題なく勝てるな。






「それでは第一試合の選手の入場です!どうぞ!」

シャネルちゃんとサンクさんが司会に呼ばれ入場する。堂々としてるなー。

「緊張してないみたいだな。しなさ過ぎもダメだけど」

「そうね。適度な緊張は、能力を向上させるしね」

そんなことを話しつつも、目線は画面から外さない。ビアンカも後の戦いの為に、分析してるのか。ということは、俺にも勝つ気でいるってことなんだな。・・・俺も何か策を考えておこう。対ビアンカ用のな。

「ガントル選手とサンクさんは、共に冒険者だそうです!現役の冒険者の実力を生で見れるなんて、滅多に無い機会ですよ!」

二人が舞台に上がり、試合の準備をする。シャネルちゃんは柔軟を、サンクさんは直立している。瞑想でもしてるのかな?

「それでは、所定の位置に立ってください。構えるのはいいですけど、線より前に出てはいけませんよ」

二人は舞台の上に引かれた線の後ろに立ち、己の武器を構える。サンクさんの武器はクレイモアだ。

「それでは・・・試合開始!」

司会のかけ声をかけるが、どちらも動かない。最初は様子見か。

しばらくすると、サンクさんがジリジリと距離を詰め始めた。あの装備じゃ速くは動けない。シャネルちゃんなら速さで十分圧倒出来るのに、何で待っているんだ?

「ビアンカはどう見る?」

「そうね...。体力温存の為じゃないかしら?今日で決勝までやっちゃうんでしょ?あまり動いたら、体力も魔力も切れちゃうわよ」

「そう言われてみればそうだな。ってことは、一撃で落とすだろうな」

そうしている間にも二人の距離は近づいていく。シャネルちゃんの拳では、クレイモアの間合い内だと攻撃が少し遅くれる。どこで仕掛けるかな。

もうすぐクレイモアの間合いに入るかというその時、突然サンクさんが吹き飛んだ。なんだか前にも見たことあるような光景だな...。

サンクさんは舞台の外まで吹き飛んでいき、壁に激突。気絶したみたいで、そのままずるずると落ちていった。

「サンク選手、場外!シャネル選手の勝利です!」

気絶したサンクさんが、担架で運ばれていく。よく見ると、鎧の胸の辺りが凹んでいる。あそこを殴ったんだな。

「ねえリュー。なんであの人は気絶したの?場外するくらいには強くしたんでしょうけど、気絶するほどじゃないわ」

「うーん・・・兜が壁にぶつかって、脳震盪でも起こしたんだろ。ついてないな」

シャネルちゃんは、何も言わず控え室に戻っていく。次の人は・・・見なくてもいいかな。今のシャネルちゃんが負けるとは思えない。





二回戦目は魔術師と戦士の試合で、結果魔術師が勝った。遠くから魔術無双で、戦士を近づかせることなく勝利していた。まあ、あれじゃあシャネルちゃんには勝てないだろうな。雷さえ避けるからなぁ、あの娘。

そうして次は俺の試合。相手は長剣を使う騎士みたいな人だ。実際、騎士団の紋章をつけてるから、本当に騎士団の人なのかもな。警備とか、しなくてもいいのかな?

「それでは第三試合です!選手は入場してくださーい!」

呼ばれたので、舞台まで歩いていく。映像を映している魔術具を見ると、狐の面を被って着物を着た俺の姿が映っている。・・・改めて見ると、けっこう恥ずかしい格好だな、これ。

「あちらのお面を被っている方は狐仮面選手です!性別・年齢・使う武器など、いっさいの素性を話されない方です!ぜひともステインさんには、あの仮面を取って頂きたいものです!」

変なこと言わないでくれよ...。というか、この仮面は外れんぞ。壊されたらどうしようもないけど。あ、ステインってのは対戦相手のことだ。

「ステインさんは騎士として王国に勤めているらしく、今日はわざわざ非番を取って出場してくださいました!」

わあああ!!!と歓声が起こり、ステインさんが手を振ってそれに答える。いや、わあああ!!!じゃないだろ。こんな忙しいときに非番を取るなんて、迷惑すぎるだろ!

「それでは線の後ろに立ってください!」

舞台に上がって相手を見る。ステインさんは既に剣を抜いており、やる気満々だ。俺も武器を抜こうとしたら急に声をかけてきた。

「君はよく頑張ったよ。あの予選を勝ち抜いたんだからね。でも、幸運もここまでだ。一回戦で、この僕に!無様に負けるんだからな!」

・・・よし倒そう。それが世のため、他の騎士の為だ。面倒くさいから、一発だ。

「さあ、武器を抜け!そうして、僕の優勝への道の、贄となるがいい!」

ステインさんは無視して、影から刀を取り出し抜刀する。

「えっと、狐仮面さん?そんな剣じゃ折れちゃいますよ?」

「大丈夫、問題ない」

「そ、そうですか...。それでは・・・試合開始!」

ステインさんが突撃してくる。言うだけあって、中々速い。うん、でもまあこんくらいなら余裕だな。

キイン!

と高い音が鳴って、ステインさんの剣が根元から斬れる。やっぱり刀の斬れ味はすごいな。銃弾に勝つだけある。

「・・・は?え?」

突然斬れた剣を見て、ステインさんは呆然としている。そんな彼に俺は刀を突きつけ

「降参しないなら・・・どうなるか、分かってるな?」

「ひぃ!こ、降参します!するから、殺さないで!」

よし、これで勝ちだな。

「これで、俺の勝ちですよね?」

「あ、はい!狐仮面選手の勝ちです!それにしても、凄い斬れ味の剣ですね...。誰が造られたのですか?」

「・・・神様ですよ」

そう言って、俺は舞台を降りていった。信じるかどうかは、あなた次第です...。



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