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パレード


結果から言うと、俺は予選を突破した。

予選が始まると同時にシャドウバインドを発動。首に影の縄を巻き付かせて、締め上げて気絶させた。

しかし、こうも簡単に本戦に出れるなんて、なんか拍子抜けだな。さすがにあれだけじゃ落ちないと思ってたのに。俺と当たった人は、弱い奴らだったのかもな。

本戦は明日なので、今日はこれで終了。王族のパレードを見に行くか。





道中、物陰で着替えてパレードのコースになっている大通りに向かう。だが

「これはまた...。どこにこれだけの人がいたんだ...」

「王都中の人と、観光に来た人が集まっているしね。かなり混雑するとは思ってたけど、ここまで多いなんて...。想定外だったわ」

「冷静に分析している場合じゃないだろ。どうする?このままじゃ見えないぞ」

どうしようか考えてると、「兄者ー!」とミズキの声が聞こえる。どこにいるんだ?と辺りを見回してみると

「こっちだ、こっち!前の列だ!」

最前列に、ミズキの頭がひょこっと抜きん出ている。タマモに肩車されてるのかな?

ミズキの方に、人ごみを押しのけて進んでいく。そこは最前列で、絶好のポジションだった。

「兄者、予選はどうだった?」

「俺もビアンカも、本戦に行けたよ。あと、お姉ちゃんも来てたよ」

「シャネルさんが!?元気でしたか!?」

「話してないからよく分からないけど、見た感じは元気そうだったわよ。予選では、相手を瞬殺してたし」

「そうですか...。良かった...」

心配してたんだろうな。みんな一人だったからな。

「シャンルとは誰だ?」

「そうね。・・・リューの彼女兼姉兼ペットってとこかしら?」

「難しい関係だな...。私には分かりそうにないな」

「変なこと教えるなよ。ビアンカとタマモと同じような関係だよ」

ビアンカは俺とシャネルちゃんを、どういう目で見てたんだ...。小一時間ほど問いつめたいぞ。

「レアさんはいなかったんですか?」

「いなかったな。多分、王都には来てないんだろ」

「そうですか...。残念です」

レアは一体どこにいるんだか。連絡くらいすればいいのに。

「お!来たみたいだぞ!」

ミズキが門の方向を指差すと、そっちから歓声が聞こえてくる。だんだん先頭が見えてきた。あれは・・・白い甲冑を着た騎士が白馬に乗り旗を持ってきてるな。紋章から見るに、皇国みたいだ。

数騎の騎士が通りすぎると、次は鼓笛隊がやってきた。派手な衣装でにぎやかな音楽を奏でながら、踊り子が踊って行進している。

「すごいです...。こんなの初めて見ました...」

日本はテレビだってあったし、こういうことは年に何回か行われていた。だけど、この世界はとても過酷だ。魔獣という恒常的な脅威がある上に、そのせいで供給が不安定だ。娯楽に金をかけるくらいなら、軍備に力を入れるだろう。なので、こういうパレードなんかは滅多にない。それこそ、日本で言うならオリンピックの後の、銀座のパレード並に珍しいことだ。人生で一回見れるかどうかっていうくらい、貴重な経験だ。しっかり目に焼き付けているんだろう。

鼓笛隊が過ぎ去った後に、豪華に装飾されている馬車がやってきた。真っ白な車体に、天使や女神の装飾が施されている。美しいの一言につきるな...。

馬車の中で手を振っているのは、法衣を着た老人と王冠を冠った初老の男性。それと・・・ロキか?粧し込んで髪型も変わってるから、全然気づかなかった。タマモたちは・・・今は声をかけないでおこう。真剣にパレードを見てるしな。

あ、もう一人いる。老人たちが影になっていて見えなかったのか。あれは、ノエルさんだな。きれいな純白のドレスで、その美しさにさらに磨きがかかり、さながら現界した女神のようだ。あんな人と、一緒に勉強してたのか...。

ロキたちが乗った馬車の後には、歩兵たちが行進する。一糸乱れぬその動き。見事に統率された軍隊だ。軍事力を誇示するのも、こういうパレードの目的だからな。

皇国の次は帝国の番だ。最初は皇国と同じような騎士が旗を持って進んでいくが、次にやってきたのは皇国以上だった。

鎧を着た兵が、ドラゴンに乗って進んでくる。見た感じ地竜だな...。どうやって竜を手懐けたんだ?

「地竜だけじゃないわよ。上を見て」

ビアンカに言われた通り上を見ると、空には多くの飛竜が飛んでいた。統率がとれているので、恐らくあれらも帝国の軍だろう。

「飛竜まで使役してんのか...。どうやったんだ?」

「卵をとってきて、幼竜から育てたんじゃないかしら?幼竜の時から育てていれば懐くと思うわよ」

「そうなのか。刷り込みみたいなものだな」

鴨の赤ちゃんみたいだな。地竜もそうやって使役してんだな。

初めて見るであろう竜に、観客は大きな歓声を上げる。こうして見ると、皇国と帝国で役割を分けてたのかもな。皇国は娯楽、帝国は軍に力を入れているし。竜なんて、そう簡単には出さない。

地竜の次にやってきたのは、またもや豪華な馬車とそれを取り巻く騎士たち。馬車には赤い竜が彫られており、目や鱗が宝石で表現されている。だが、それはただ豪華なだけ。より凄いのは、騎士たちが着ている甲冑だ。

よく目を凝らさないと見えないが、表面には複雑な術式が刻まれている。幾重にも複雑な陣が重なり合い、さらに複雑な陣を形成している。帝国の最先端の魔術技術。それはすなわち、この大陸の最先端だ。まさかあんなやつまで持ってくるなんて...。

「あの鎧は、どこの隊が着ているんだ?」

「場所には帝王と王妃、グルドが乗ってるから親衛隊でしょうね。帝国の親衛隊っていえば、最強の部隊ってことで有名よ」

「親衛隊か...。あんな鎧を着ることが出来るなんて、相当だな...」

どんな奴らか、顔を見てみたいな。兜で隠れていて見えなくなっている。鎧のせいで男か女かも分からない。装備は見せるけど、それを扱う人は見せないんだな。そんだけ重要な部隊だってことだな。顔が分かれば身分も分かり、そこから弱みを調べることも出来る。

顔を隠すのが、一番楽な対策だしな。

それからは、歩兵やら魔術兵やらが行進してきた。皇国より規模は大きいけど、似たようなもんだな。




「すごかったな、兄者!竜に人が乗っていたぞ!」

パレードが終わったので、俺たちは宿に戻った。もうすぐ寝る時間だというのに、ミズキは興奮してベッドに座ってバシバシ枕を叩いている。

「ミズキ。楽しめたんならそれでいいけど、もう寝る時間だぞ」

「分かってる。けど、気が高ぶって寝れそうにないんだ!」

今度は枕を抱いて、ベットの上をゴロゴロ転がるミズキ。明日は寝坊確定だな。

「しかし、あの鎧は凄かったわね。物理・魔術耐性に耐熱・耐寒。他にも、強化系の魔術が沢山仕込まれていたわ。解析したいわ...」

「さすがに買うことは出来ないぞ。グルドに頼んで見せてもらえ」

無理だろうけどな。国家機密だろうし。

「明日は本戦だ。疲れを取る為にも、早く寝るぞ」

明かりを消して、目をつぶる。俺はどこまで勝ち残れるだろうな。



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