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祭りの始まり


王国に帰ってきてから一ヶ月。ついに今日から撃退百周年祭だ。

祭りでは様々な出し物、出店、イベントが企画されているようで、数日前から帝国や皇国からの観光客で賑わっている。なんでも帝国と皇国の王族や、教王も来賓として招かれているらしい。教王ってのは、ノエルさんが入信している聖教のトップだ。そんな人たちが来るので、警備もいつもより厳しくなっている。王都に入るときには、必ず身分確認をされるようになってるしな。期間は一週間。武道大会もあるので、出てみようかな。





そんなわけで一週間は依頼を受けないで、祭りを楽しむことになった。レアやシャネルちゃんにはタマモが連絡したので、祭りの間に王都に戻ってくる。何を言われるか、今から気が重いよ...。絶対泣かれるよな...。

祭り期間中には10時にも鐘が鳴る。10時から祭りが始まるので、特別にだそうだ。

「楽しみだな、タマモ!帝国や皇国の食べ物もでるんだろ!?」

「待ちきれないですね!早く10時にならないかなー」

ミズキとタマモは祭りの始まりを今か今かと待っている。楽しんでくれて何よりだが、羽目を外しすぎないか心配だ。

「こういう祭りに参加するのは初めてだわ。ずっと研究室に篭ってからね」

ビアンカも初めてのようで、楽しみにしている。俺も楽しみなんだが、ちょっと気になることが...。

「まだ気にしてるの?王国軍による北東の捜索が遅れたこと」

そうなのだ。一ヶ月前、俺たちの推測により王国が北東の山岳地帯を捜索することになったのだが、それが遅れたのだ。

「準備に手間取ったんじゃない?けっこう人数多かったじゃない」

「そうかもしれないけど...。変なことを聞いてね...」

話は昨日に遡る。




「今日、捜索隊が出発しましたね。準備に手間取ったんですか?」

捜索隊が出発したのを見て、ギルドで聞いてみた。遅くても二週間くらいで出発すると思ってたんだけど...。

「それが、ゴタゴタがあったみたいで...。なんでも、大臣の一人が捜索隊の派遣に反対して、ここまで遅れたようです。推測だけで、派遣させるのはおかしいと」

「そうなんですか...。けど大臣一人の反対で、こんなに遅れるんですか?」

「大臣内にも派閥があるみたいで、数人が結託して反対した、と聞きました」

そんなことして何になるんだか...。俺には政治は分からないよ。

「もう出発しましたし、すぐに原因が分かると思います。もし有害なものなら依頼に出すと思うので、その時はよろしくお願いします」

「分かりました。それじゃ、失礼しますね」




その日はそれで済んだのだが、後になって考えてみるとおかしい。第一、メリットがない。だけど、誰かに頼まれたのなら話は別だ。

報酬と交換に足止めをする。大臣が元老院と繋がっているのだとしたら...。根が深そうだな、この問題は...。

「けど、元老院が関係してるとは限らないんじゃない?ただ政治的ななにかかもしれないし...」

「そうだけど、何か嫌な予感がするんだよ。遠くから狙われているような、嫌な予感が...」

「じゃあ、もし元老院が関わっていたとしましょう。元老院は何をしようとしているの?大臣ほどの人物が、下についているなんて。伝説の魔王でも呼ぶの?」

「・・・そうならないことを祈るよ」

魔王か...。それならいいんだけどな...。魔王は人間が倒すものだ。でも、それ以上だったら...。マズいかもしれないな...。

「そんな浮かない顔しちゃ駄目よ。ミズキやタマモに心配されるわ。第一まだ推測の域を出てないでしょ。心配するのは、証拠が出てからよ」

「・・・そうだな。今は祭りを楽しむか」

分からないことをウジウジ考えても何にもならない。王国だって捜索隊を出してるんだし、問題があったらすぐに対応するだろ。俺は気にせず、今を楽しもう。





十時になり、王都の中心にある鐘楼が鳴る。ゴーン、ゴーン、ゴーンと三回鳴った後、都のあちこちでウオオオオ!やワアアアア!と歓喜の声があがる。撃退百周年祭の始まりだ。

「始まったぞ!早く買いにいこう!」

「走らなくても、そう簡単には売り切れませんよー!迷子になっちゃうから、離れないでー!」

ミズキが走って出店に食べ物を買いにいき、タマモがそれを追いかける。道にあふれるたくさんの人の間をすり抜けて、二人はあっという間に見えなくなった。

「・・・すごいな。あんな狭い人の間を抜けてくなんて」

「無駄に高い技術ね...」

ミズキたちは後で合流するとして、俺たちはどうしようかな?人が多いとこには行きたくないし...。

「とりあえず、武道大会の受付を済ませちゃいましょ。今日の十五時から予選でしょ?」

「そうだな。帝国と皇国の王族のパレードも見たいし。確か十九時だったな」

親衛隊とか神聖隊が来るらしい。普段は滅多に見れない奴らだから、ぜひとも見ておきたい。





そうして武道大会会場にやってきた。普段はここで、魔獣を戦わせてどっちが勝つかを予想する競魔をやっている。金持ちの道楽だな。

受付には一人だけ、女性が座っていた。まだ始まったばっかりだから、人もそんなに来ないんだろう。

「空いてるな。それじゃ、早速」

「待ちなさい、リュー。あなた、そのままの格好で行くつもり?」

受付しにいこうとしたら、ビアンカに止められる。何でこの姿じゃ駄目なんだ?

「武道大会は王族も見るのよ。絶対、グルドやロキも来るはずよ」

「それが?」

「きっと二人は、あなたが行方不明って知っているわよ。そんな中であなたが出場したら・・・乱入してくるに決まってるわ」

「・・・いやいやいや。あの二人だって、いくらなんでも時・場所・場合をわきまえてるよ」

「断言出来る?」

「・・・OKOK。そこまで言うなら、変装しようじゃないか。万が一ってこともあるしな。服は向こうのがあるしな。顔は・・・この仮面でいいだろ」

そういって影から取り出したのは、狐の仮面。迷宮で拾った物だ。こんなとこで使うことになるとは...。

「そうね、私もそうするわ。仮面はもう一個あったでしょ?」

「ああ、これだな」

般若の仮面を取り出す。この仮面は気導具で、つけてると声が変わり外れないようになっているらしい。本来は隠密や忍者が使うような物なのかもな。早く着替えて、受付を済まそう。




<side 武道大会の受付の女性>

仕事で武道大会の受付を引き受けたのはいいけど、まさか一番最初なんて...。誰も来ないから、暇で暇でしょうがないわ...。

ついてないなー、と机に寝そべっていると、誰かがこちらに歩いてくる音が聞こえる。もしかして、出場希望者?まさか。こんなに早く来る訳がないわ。そう思って、寝続けていると

「すいません。武道大会の受付を」

「え!?す、すいません!誰も来てないもんだったから...」

顔を上げると、狐のような仮面と人に角が生えたような仮面をかぶった二人組が立っていた。服も変わっているし、外国の方なのかな?

「で、ではこちらにお名前を...。あ、文字は書けますか?」

「大丈夫です。お気遣いどうも」

狐さんと、何だろう...。強面さんが名前を書いていく。

「はい、ありがとうございます。えーっと、狐仮面さんと、鬼仮面さん?これって本名、じゃないですよね...」

「名前はなんでもいいんですよね?それでは、失礼します」

そうして、彼らは去っていった。誰なんだろう、あの人たち...。



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