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邂逅 その1

ようやくヒロイン登場です。


「フッ!フッ!」 フォン!フォン!

俺が木剣を振るたびに、風切り音でる。額からは汗が落ちていく。

「フッ!フッ!ハァー!セイ!」フォン!フォン!ダン!

剣を大きく振り上げ、前に飛びだし剣を斬りおろす。

ふー。いい汗かいたな。

「おっ、リュー素振り百本終わったのか?」

親父が素振りしながら聞いてくる。

「はい、終りました」

「そうか。汗を拭いておけよ。風邪をひくからな」

「わかりました」

俺は剣を習い始めてから、毎朝百本の素振りをすることになった。まだ本格的にはやってなくて、素振りや体力作りが主だ。

「今日は街に行くからな。汗臭いままじゃダメだぞ」

「はーい!」

そう今日俺は初めて街に出るのだ!初めてこの世界の街に行くんで今から楽しみだよ。

「リュー様、タオルです」

「ありがとう、キャメルさん!」

キャメルさんからタオルを受け取りつつ俺は部屋に着替えに行った。




「それじゃあ、リュー。気をつけるのよ」

「リュー様、周りには気をつけてくださいね」

「はい、わかりました」

朝食を食べたあと、使用人さんが馬車を用意してきた。今日は母さんは一緒にいかないみたいだ。

「父様、今日は何をしに行くんですか?」

「今日は整備に出していた俺の武器を受け取りに行くんだよ」

「父様が?」

「ああ、自分の命を預けるものだからな。これだけは他人には任せられないな」

「へぇー」

そんなものなんだな。

「行ってらっしゃーい」

母さんに見送られながら俺たちは街へと向かった。


道中何事もなく街に着いたのは良かったが、

「うう‥。お尻が痛い‥」

俺はケツの痛みでグロッキーだった。

馬車には、サスペンションなんてついていないので石を踏むたびにガタガタ揺れる。その度に体が浮き上がるので、ケツが打たれて痛くてしょうがない。

「ははは。そのうち慣れるさ」

親父はケロっとしている。慣れるってこれは‥。

「うう‥、もう街に着いたんですか?」

「ああ、今は街に入る許可をもらっているんだ」

町に入るのに許可がいるのか。まあ、犯罪者は入れたくないよな。

ガタッ、と馬車が動きだす。

「おっ終わったか。リュー、ここがチロルの街だ」

「おぉー!」

窓からは赤レンガの屋根といろんな人がみえる。武器を持っている人や野菜を持っている人。ネコミミの男性や羽のはえた女性もいる。

「イラの実、5個で銅貨4枚!この街で一番安いよ!」

「そこのお嬢さん!ネックレスはいかが!?」

「武器を買うならウチで!安くしとくよ!」

活気が溢れていて、あちこちで声が聞こえる。イラの実っていうのは、リンゴみたいな果物で味もリンゴ。貨幣には、小銅貨・銅貨・銀貨・金貨・白金貨があって、小銅貨が約10円。銅貨が約100円、銀貨が約一万円、金貨が約百万円、白金貨が約一億円である。

白金貨は国規模で使われる貨幣なので、個人で使うのは金貨までだな。

しばらく街並みを見ているとガタン、と馬車が止まった。

「父様、ここですか?」

「ああ、ここがキャメルの実家でもあるマリー武具店だ」

馬車を降りると目の前に、剣がクロスした意匠の看板が掛かった店があった。親父が入っていくので一緒に中に入った。

中に入ると所狭しと様々な武器が並んでいた。だがぐちゃぐちゃになってるわけではなく、ちゃんと武器別に分けてあった。大剣や槍、斧などに目を奪われていると、

「リュー、コッチだぞー」

と親父に呼ばれた。気づかないうちに離れていたみたいだ。

「ガントルー、いるかー?」

親父がカウンターの奥に向かって叫ぶと

「うっせーな。叫ばなくても聞こえてるわ!」

と言いながら、チビのおっちゃんが出てきた。身長140cmくらいかな?

「相変わらずでっけー声だな。何の用だ?」

「相変わらずじゃないだろ。剣を受け取りにきたんだ」

「気づいてないのか‥。ん、このガキは?」

「ああ、俺の二人目の息子だよ。リュー、挨拶は?」

いきなり俺に回ってきた。っていうかこのおっちゃん、俺に気づいてなかったのか?

「初めまして、ガントルさん。リューテシアです」

「おお、初めましてだな。ガントルだ。ふむ、こいつはファイーナに似たな」

「そうだろう。目は俺だけどな」

「そうか。で、剣だったな。できてるぞ」

「ああ、わかった。リュー、長くなるから店の物でも見てなさい」

「外に行ってもいいですか?」

「いいが、あまりここから離れちゃダメだぞ」

「はーい」

そう言って親父とガントルさんは奥へと入っていった。

んじゃお言葉に甘えて武器でも見て回るかね。

しばらく武器を見て回っていたが、そんなに広い店でもないのですぐに見終わってしまった。外を見にいこうか。

店から出て周りを見渡す。たくさんの人が行き来しているな、と思いながら路地の方を見る。路地は薄暗くゴミが散らかっていて、危ない空気を漂わせている。

「やっぱどこでもこういうところはあるんだな」

と、前に動くものがあった。

何だろう?と思い近づいてみるとゴミだと思っていたものは、子どもだった!

「おい!大丈夫か!?」

揺すっても反応がない。口に耳を近づけると微かだが呼吸をしている。

ここにいても何も出来ないと思い、その子を背負って武具店に戻る。


武具店に戻ると、親父がガントルさんと奥から出てくるとこだった。

「あ、リューってどうしたんだその子!?」

「路地で倒れてた!起きないの!」

「とりあえず、上に寝かせろ!俺は神官を呼んでくる!あとはシャルルに任せとけ!」

ガントルさんは外にとびだし上から奥さんのシャルルさんが出てきて、

「どいてどいて!邪魔だよ!」

とその子を上に連れて行ってしまった。

大丈夫かな、あの子。


「空腹と疲労で倒れてしまったんでしょう。回復魔術で体力を回復させたので、しばらくしたら目を覚ますと思いますよ」

「ありがとうございます」

ガントルさんのお店の二階にある生活スペースのベットで、あの子が寝ていた。

あの後ガントルさんが神官さんを引っ張ってきて看てもらい、目が覚めるまでここで寝かせてもらっている。

目が覚めたとき一人じゃ不安だろうから、俺がそばで看病している。

親父たちは別の部屋で話している。

「…ううん」

どうやらあの子が起きたようだ。

「・・・ここは?」

「大丈夫?」

「…あなた、だれ?」

その子の髪は青く、肩で切りそろえられている。目は金色で綺麗だ。っていうかこの子女の子だったのか。こんな子がどうしてあんな所に?

「僕はリューテシア。君は?」

「・・・レア」

「そう、レアっていうんだね。レアはどうしてあんな所にいたの?」

「・・・」

わかんないか。どうしようかな。

「・・たの」

「え?」

「おとうさんとおかあさんにすてられたの」

「・・・は?」

え?どういうこと?捨てられた?どうして?

「えっと、なんで?」

「・・・わたしがはねなしだから」

はねなし?羽無しか?

「羽無しって?」

「りゅーじんなのに、はねがないひとのこと。わざわいをまねくんだって」

部族に伝わる伝承か。レアは竜人だったのか。

「みんなわたしにはねがない、いみごだって」

レアが吐きだすように言う。

「おかあさんがごめんねって。おとうさんがゆるしてくれって」

目から涙が落ちる。

「わたし、いいこだったよ?わるいこと、してないよ?」

「どうしてすてられるの?」

伝承に人生を狂わせられるなんて、馬鹿げてる。

この子と俺が会ったのは、運命なんだろう。お互いに引き寄せられたのだとしたら、俺が責任を取らなくちゃいけない。

だから、俺はレアを受け入れる。抱きしめて撫でる。

「リューテシア?」

「レアは何にも悪くないよ」

「でも、みんなが」

「みんながなんだ。俺にとって、レアは捨てられた女の子だ」

「わたし、いみごだよ。わざわいがきちゃうよ?」

この子はまだわざわいの意味も知らないんだろう。

「なら、俺が災いを倒せるくらい強くなって、レアを守るよ」

「でも、りゅーじんの」

「竜人の子に羽が無いと忌み子なんだろ?」

「・・?そうだよ」

「なら竜人じゃなくなればいい。レアは今から龍人だ」

「龍人?」

「ああ。だからレアは忌み子じゃない。龍人のレアだ」

「いみごじゃないの?」

「そうだよ」

「リューテシアといっしょにいていいの?」

「もちろん。一緒にいて欲しい」

「あそんでもいいの?」

「一緒に遊ぼう」

「・・・あかちゃんもうめる?」

「レアは可愛いから、結婚したい人はたくさんいるよ」

「うぇ、うえええーーん!」

レアが俺に抱きついて泣き出す。俺はレアが泣き止むまで、ずっと頭を撫でていた。


「この子をウチで引きとって欲しい!?」

レアが泣き止んだ後、俺たちは親父にレアを引きとるよう頼んだ。

「レアは捨てられちゃって、行くところがないんだって。だから家族になれないかなって」

レアは俺の後ろに隠れている。

「あのなぁ、そんなの俺たちだけで決めていいことじゃないだろ」

「レアは一緒にいたいって」

「本当か?」

「うん!ほら、レアも」

レアを前に引っ張り出す。

「えっと、おねがいします!リューといっしょにいさせてくだしゃい!」

緊張して肝心なところで噛むレア。

「おい、ジェイル。こんな小さな子が一生懸命頼んでんだ。お前ん家まだ余裕はあんだろ?むかえてやれよ」

ガントルさんが援護してくれる。ナイスです!

「はぁ、わかったよ。ファイーナも女の子が欲しいって言ってたしな」

親父が許してくれた。ふぅ、ひとまずは安心だな。

「レア、これからよろしくね」

「うん!」

さっきとはうってかわった、満面の笑顔だった。


この子が人外にまで育つなんて、ホント誰も思わないよなぁ。




終わりどころが見つかりませんでした。

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