解決策
ガンガン書いてきますよー。
宿に帰って対策を考える。今のところ、考えだされたのは
①真面目に一階ずつ踏破していく。
一番堅実な方法だが、時間がかかりすぎるので却下。
②消失で床を消去して、最下層まで穴をあける。
時間は短縮できるが、消失は使用魔力(気)が多い。一月で最下層まで到達するのは厳しいだろう。
③魔術でぶち抜く。
砂漠で取った手法、一気に貫通させられそうだが、迷宮の壁の耐久度を知らないので、失敗する可能性が高い。
④死ぬ気覚悟で焔纏で床を焼き抜く。
死ぬ可能性があるので、あまりやりたくはない。最終手段だな。
この四つだな。どれも確実性に欠けるし、負担もデカい。どうしようか...。
「俺としては、魔術で一気に抜きたいんだけど...」
「無理だと思うわよ。そんな方法で行けるなら、とっくに踏破されてるわ」
そうだよなー。これは無理だよな。それなら、消失か?
「それは、りゅー君が死んじゃうヨ!あれって、すっごい気を消費するんデショ!?」
それはそうだけど...。でも、そうでもしなきゃ間に合わない!俺なら、そう簡単には死なないはずだ!
「絶対にさせないぞ!そんなこと、私の目が黒いうちには、絶対に!」
ミズキが声を荒げる。ビアンカとフェイさんも、顔が恐い。・・・これも、無理そうだな。
くそ...。やっぱり、地道に進んでいくしかないのか?
「そうなるわね...。・・・大丈夫よ。ちゃんと事情を説明すれば、レアたちなら許してくれるわよ」
「分かってる。分かってるよ。でも、それじゃあ駄目だ。俺を信じてくれたレアたちを、裏切ることになる」
レアたちは、俺を黙って見送ってくれた。俺が二年経ったら絶対戻ってくると、信じて待っててくれているんだ。・・・多分。
だから、遅れるわけにはいかない。約束は守る。漢に二言はないんだ。信用は、得るのは難しいが失うのは簡単なんだ。
「・・・そうね。でも、それでリューが死にでもしたら意味ないわよ」
「ああ。今は地道に進んでいくけど、別の方法も同時に探す」
絶対に一ヶ月以内に帰ってやる。絶対にだ...。
「ぜやあ!」
「グガアア!!!」
刀を振るい、大鬼を斬り裂く。奥からもう二体向かってくるが、斬撃を飛ばして斬殺する。
「よし。進むぞ」
「りゅ、リュー!飛ばし過ぎよ!もう少しペースを落として!」
ビアンカが何か言っているが、今は構っている暇はない。出来るだけ早く進まないと...。
襲いかかってくる敵を斬り飛ばし、遠くの敵は撃ち抜く。たまに出てくるボスっぽい奴は
「消し飛べ」
「ポカブ!?」
消失させる。今回は一つ目の巨人だったので、楽だった。人型は、基本頭が弱点だからな。
頭がクラクラするけど、問題ない。視界の端が暗いけど、気配を感じれば目が見えなくても戦える。俺の意識が無くなるまで、戦い続けられる!
「はあ、はあ...。まだだ。まだまだ行ける...。もっと、もっと進まなきゃ...!」
「りゅー君、止まっテ!今日はここまでダヨ!これ以上無理をしたら、命まで削っちゃウ!」
フェイさんに止められる。くそ、今日はここまでか...。フェイさんに肩を貸されて、迷宮を後にする。
このままでは、どう足掻いても間に合わない。せめてもっと早く進まなければ...。
宿に帰った後、少し一人にさせてもらう。色々頭を整理したいのと、ほかの方法を考える為に。
とりあえず、今までに覚えた魔術で何か出来ないか考えてみるか。
火の魔術では・・・厳しそうだ。攻撃用の魔術では、短縮は出来なさそうだ。
風の魔術。雷もあるけど、これも無理。・・・俺って、攻撃の魔術ばっかり覚えてるな。帰ったら、補助用の魔術も覚えよう。
闇の魔術。これが一番出来そうだ。攻撃用は基本無視して、補助用のみで考える。ミスト系は駄目。というか、状態異常系は全部だめかな。・・・いや、チャームならいけるかも。
チャームは相手を魅了する魔術。対象が有機物でなければいけない、なんて本には書いていなかった。迷宮だって、れっきとした生き物だ。生命を維持しようとしているから人間で言う大脳辺縁皮質、子孫を残そうとする機能が核には備わっているはず。無駄に長生きようとするのは、人間だけだからな。
チャームで迷宮に言うことをきかせる。サーヴァントで、配下に加えてもいいかな?・・・いや、あまりたくさん使役すると、俺の魔力が持たない。サーヴァントはやめておこう。
これで帰る算段はついた。残る問題は、迷宮が俺に魅了されるかだな。消費魔力量も気になる。とにかく明日一度試してみよう。話はそこからだ。
「それで、なんでここに来るのだ?」
「だって、ここなら怪が来ないじゃないですか」
翌日。牛のところまで赴いた。言った通り的が出ないのと、出来るだけ深いところが良かったからだ。
「いつもは女ったらしだけど、まさか迷宮を誑し込もうとするなんてね...。しかも、チャームの魔術で...」
「ちゃーむの魔術とはなんだ?」
「えっと、かけた相手を魅了するんダッテ。スゴイネー」
「魅了する?それって、惚れさせるということか?・・・兄者、使ってないよな?」
「使ってないよ、一回も!ミズキは俺をどんな目で見てるんだ!?」
師匠にも滅多に使うなって書かれてかから、使わなかったのに。かなり強力な魔術なのか?覚えるのは、比較的簡単だったけど。
「それだから危ないのよ。人の心を歪める魔術が、簡単に覚えられるんだから」
なるほどなー。まあ、そう都合のいいものはないんだけどね。
「けど、そんなものをずっと放っといているのか?」
「うーん。危ないっちゃあ危ないけど、そう上手くはいかないんだよ。一人魅了するにもかなり魔力を使うし、抵抗が高いとさらに必要になる。それにずっと魅了させ続けるには、魔力を定期的に供給しなければいけないしな。覚えるのは簡単だけど、使い物にならない魔術なんだよ」
俺は魔力量が多いから普通に使えるけど使えるけど。それに、チャームを使った犯罪は極刑。見つかったら、即デットエンド。そんなリスクをおかすなら、力でねじ伏せた方が早いし。まあ、それでもかなりの罪になるけど。
「フーン。悪いことは出来ないんダネ。それなら、この迷宮にかけたらすごい気を使っちゃうんジャ...」
「・・・大丈夫ですよ!ここなら空気中に魔素が満ち満ちていますし」
魔素が多いほど、魔力の回復が速くなる。使用するのは気だけど、身体強化魔術で体力を回復させれば、気も回復する。ここなら、かなり無茶しても平気だ。
「ふむ、魅了の気術か。確かに迷宮を魅了できない道理はないが...。聞いたことがないな。実に面白い。やってみせるがいい」
「シャラップ。牛は黙って見てろ。あと、上から目線うざい」
「むう。ここまで嫌われているとは。あやつは一体なにをしたんだ...」
またブツブツ言ってる牛は放っておいて、チャームの準備をする。気を全部使って、絶対に惚れさせてみせる!