怖いのだよ
自身の都合により、投稿ペースが遅れます。一週間に二回くらいを予定しています。
ご容赦ください。
「う・・・ん...。ふあぁーー...」
小鳥の囀りで目を覚ます。うーん...。まだ眠い...。
「ウニュウ...。りゅー君...」
隣を見ると、裸のフェイさんが一緒の布団で横になっている。真っ白な肌。ほどよい大きさと美しい形の胸。鮮やかな桃色の乳首は、さながら雪原に咲く桜のようだ。
下に目をずらすと、見事な美脚が目に入る。シミ一つない肌を、おもわず撫でてしまう。
「ア...。りゅー君...」
「すいません。起こしちゃったみたいですね」
フェイさんが目を覚ます。が、まだ少し眠たそうだ。・・・ふと魔が指して、手を頭の方に持っていく。艶やかな黒髪には、所々白くカピカピにまっている。まあ、髪だけじゃないけどね。
鬼族特有の黒曜石のような角をさっと一撫ですると...。
「ふわあああァァァーーー♡」
ビクビクビクッ!と体をエビ反りにし、痙攣するフェイさん。口の端からはヨダレが垂れ、さっきまで眠たそうだった目は大きく開き、蕩けている。
「だみェーー!ちゅのぉ、だめにゃノーーー♡」
さらに角を握り、こしこしとシゴくとさらに乱れるフェイさん。うん、これで目が覚めた。
どうやら鬼族の角は性感体の様で、ある程度興奮している時に触ると、非常に性的刺激を与えることが出来る。
「はあ、はあ。ひどいよぉ、りゅー君...」
「そんなこと言ってないで、早く風呂に行きますよ。カピカピになってますよ」
フェイさんと一緒に風呂に入る。そこそこ良い宿屋に泊まっているので、個室の風呂が備わっている。こんな状態のフェイさんを洗うには、二人っきりになれたほうが都合がいいのだが...。
「ハム!じゅるじゅル!ン...。おいひイ...」
「うん!?むわ!・・・ふん!」
こうして二人っきりになると、フェイさんが隙あらばキスをしようとしてくる。まあ、俺も応酬してるんだけどね。
「はあはア。りゅー君、すきィ...。だいすきィ...」
「はい。俺も好きですよ、フェイさん」
俺に抱きついてくるフェイさん。体中が柔らかくっていい匂いだ。
「りゅー君、りゅー君!・・・ご主人様ァ...」
「フェイさん!?え?ご主人様!?」
魂から隷属しているからか?どうあれ、これはマズい!主にビアンカが!
「フェイさん!ご主人様は止めてください!」
「ウー...。じゃあ、りゅー様」
「それもダメです。いつも通りりゅー君で」
「しょうがないナー。本当は、あなた様とかが良かったんだけど、りゅー君がそこまで言うなら変えないヨ」
ふう。なんとか確約をえることが出来た。後は、いつビアンカ達に説明するかだな。
フェイさんの体を洗いながら、考える。やっぱり早い方がいいよな。なら、朝食の後かな?
ふと、ガチャと扉が開く音が聞こえる。・・・まさか、この展開って...。
「あれ?誰かお風呂に入ってるの?」
やっぱりビアンカかー!!!マズい!このままじゃ鉢合わせる!
「誰が入ってるの?聞こえてる?」
「あ、ああ。俺だよ、俺」
フェイさんの口を塞ぎ、俺が答える。フェイさんも、空気を読んでじっとしている。
「リュー?早いわね。いつもは朝風呂はしてないけど...」
「今日は入ってみようと思ったんだよ。そ、そろそろ出たいから、どいてくれるか?」
「・・・なにか都合の悪いことでもあるの?」
うま!?何故バレたし!?
「な、何もないぞ!俺しか入ってないぞ!」
「しか?私は何か都合の悪いことでもあるの?、と聞いたのよ。誰かと一緒に入ってるとは聞いてないわよ。・・・そういえば、フェイもいなかったわね」
や、ヤバい...!もうほとんどバレているようなもんだ!ど、どうしよう...。
「・・・部屋で待ってるわ。ちゃんと話してね」
ビアンカが部屋を出ていく物音が聞こえる。・・・怒られるんじゃなくて、泣かれそうだな...。ちゃんと謝らなきゃ...。
「りゅー君。ビアンカ、冷静だったネ...」
「そうですね...。ああ見えて、けっこう怒ってると思います」
さて。どう切り抜けようか...。
ビアンカの待っている部屋に入る。フェイさんには部屋の前で待ってもらい、他人を入れないようにしてもらっている。
「・・・来たわね」
ビアンカは、椅子に座って待っていた。心なしか、顔色が優れない。
「何が言いたいか、分かっているわよね?」
「・・・フェイさんのことか?」
「さすがに分かっているようね。まあ、これで分からないようだったら、少し頭を心配するわ」
らしくない悪態をつくビアンカ。それだけ、頭にきているということか...。
「私は、リューと長い間一緒にいるわ。誰よりもリューのことを愛しているつもりよ。でも、リューはどうなの?」
「リューは、私のことをどう思っているの?愛する女性?信頼できる従魔?それとも・・・自分の言うことを何でも聞いてくれる、都合の良い兵器?」
「んな!?何言ってるんだビアンカ!そんなこと思って...」
それ以上、言葉を繋ぐことは出来なかった。なぜなら
「一体どう思っているのよ!!答えなさい!答えてよぉ...!」
涙をポロポロこぼしながら、俺に詰め寄るビアンカ。その顔は、大人に縋る子どものようで、自分の言ったことを信じたくないと思っているものだった。
・・・俺は、ビアンカをここまで追い込んでしまったのか...。レア達に先を越され、次は自分だと思っていたのに後から出てきた奴に搔っ攫われる。信じていたのに裏切られる。その気持ちは、想いが大きいほど裏切られたときの恨みも大きくなる。
ビアンカには、言い訳は通じない。俺の考えていることを、ちゃんと伝えなきゃ。
「・・・ゴメン。俺は、少しビアンカに甘えすぎていたみたいだ」
「・・・甘えてた?どういうこと?」
「俺は、これからずっとビアンカと一緒にいると思っている。俺はビアンカのことが好きだし、従魔でもあるしな。だから、いつで出来ると思って、後回しにしていたみたいなんだ」
「だから、ビアンカのことを軽視してしまった。ビアンカなら俺のことを分かってくれると思って、勝手に頼っていたんだ」
「ビアンカなら、俺が何を考えてるか全部分かってくれていると思って、言葉にしなかった。ごめん」
「・・・それで、リューは私のことどう思ってるの?」
「大好きだよ。ビアンカは、俺が愛している一人の女性だ」
「兵器だって思ってない?」
「思うわけないだろ!愛してる、ビアンカ」
「・・・本当?」
「本当だ」
「本当に本当?」
「本当に本当だ」
俺の思いを、ビアンカに曝け出す。今の気持ちを全部、余すことなく伝える。
「・・・リュー」
ビアンカが抱きついてくる。いまだに顔は晴れず、目には涙があふれている。・・・これでだめだったらどうしよう?愛想つかされて、どこかに行っちゃったらどうしよう?
「・・・怖かったの。リューが、どう思っているのか分からなくて。もしリューが私のことを好きじゃなかったら...。そう考えたら、どんどん思考が悪いほうへと向かっていって、怖くて怖くて...」
「そうか...。ごめんな、ずっとほったらかしにして。大好きだ、ビアンカ。俺も、ビアンカに嫌われたらどうしようって思ってた」
「同じね。大好きよ、リュー。大好き...」
そうして、俺たちは抱き合う。空いてしまった溝を、埋めるために。