閑話1 新魔術
「新しい魔術でも開発するか」
黒砂を旅立ち数日後。俺は新しい魔術を考えることにした。
というのも、最近同じやつばっかり使ってるなー、と思ったのだ。レーヴァテインとかフレイムジャベリンとかな。
俺は学院を出てから、あまり魔術面では進歩していない。これでは停滞だ、マンネリだ。いい加減、主人公級のものを使えるようになりたい。
俺が今使える魔術は、火・風・闇・火+風・火+闇だ。風+闇でもやってみようかな?・・・いや、これじゃあ主人公級にはなれない。もっと飛び抜けた奴じゃないと!
そうすると、火+風+闇の三属性複合魔術か。そういえば、三つの属性を混ぜる魔術は聞いたことないな。なんでだろう?
「ビアンカ、知ってるか?」
「・・・考えなくても分かるでしょ、そんなの。不可能なのよ」
ビアンカに聞いてみた。不可能ってどういうことだ?
「三属性の複合魔術。私が生きてた頃から、研究はされていたわ。挫折したけどね」
「なんでだ?二属性ができるなら、三属性も出来るだろ」
「理由は今から説明するわ。まず第一に、魔術を三属性使える人が、あまりいないこと。三人で試してもみたけど、無理だったわ。二属性はいけんだけどね」
他人と魔力を合わせて魔術を使うには、かなりの訓練が必要となる。魔力の量、質、詠唱速度なとを一致させなければいけないからだ。
それを三人でやるのは・・・無理ダナ。難しすぎる。出来たとしても、戦場では役に立たないだろう。
「第二に、属性を三つ合わせるのは、一つの鍵で違う二つの錠前を開けるようなもの。言ってる意味分かる?」
無理だってことだな。確かにそう言われると、不可能だと思う。だけど、
「やってみいと、何も分からない。やるだけやってみるよ」
「そう言うと思ってたわ。出来たら教えて」
去っていくビアンカ。期待に答えますかな。
まずは普通に三つの魔力を混ぜてみる。赤・黄緑・黒い魔力をひとまとめにしようとするが、
バチン!
失敗。まあ、これで成功するんなら、ビアンカ達も苦労しない。比率を変えてやってみるか。
・・・無理でした。いろいろ試してみたけど、どれも出来る気がしない。これは違うな。
さて、お次はどうしましょうか。うーん・・・そうだ。わざわざ、三つを混ぜる必要はない。複合した魔力を、さらに複合すればいいんだ!なんというコペルニクス的発想!俺の頭が怖いぜ。
最初は、(火+闇)+(風+闇)でいこう。まずは魔力を混ぜて、黒い火と黒い風を作る。こんどはそれをさらに混ぜる!
バチバチバチン!
むうまた失敗か。だけど、少しは持ちこたえた。大きな進歩だ。この調子でやっていこう!
・・・ダメだな。もう少しで、成功すると思ってたんだけど...。案が尽きた。どうしよう...。
全然思いつかない。(火+闇)+火いうふうに、混合魔力と単属性の魔力を合わせてもみたが、火の魔力が強くなるだけ。風では三属性混合と変わらないので、意味ないだろう。
本格的に手詰まりだ。魔力もけっこう消費してしまい、額には汗が浮き出ている。気分転換も兼ねて、少し休憩するか。
お湯を沸かして、熱いお茶を入れる。お茶請けには・・・饅頭があったな。影の中から饅頭を見つけ出し、ちゃぶ台の上にのせる。
ビアンカはどこかに行って、フェイさんとミズキは街に買い物に行っている。しばらく帰って来ないだろう。
それにしても、一つの鍵で違う二つの錠前を開ける、か。そりゃあ、無理だよな。形、長さ、太さとか色々違うし。
・・・いや、そもそも違う鍵で錠前を開けることが間違っているんじゃないか?鍵がないなら、作ってしまえばいい。
鍵を作るのは例えで、ようは何かで仲介する。三つの魔力を混ぜるための、つなぎを用意すればいいんじゃないか?
魔力ではつなげないから、使うとしたら気。上手く混ざってくれるかな...。
再び魔力を三つだし、それに加えて気も放出する。計四つの球が俺の周りを漂っている。
一気に全部を混ぜる。魔力がバチバチと火花を散らし、今にも爆発しそうだ。外に出ようと暴れる魔力を抑えながら、これはいける!と思った。魔力が中で、溶け合い一つになっているのが分かるぜ!
魔力を抑えること、十数分。ここ数分は安定していたが、突然急激に魔力が融合し始める。くそっ!けっこうキツい!
魔力の塊が急に激しく発光する。これで完成か?
光が収まる。そこには、真っ白い球体が浮いていた。これが三属性混合魔術?どこにも火や風、闇の要素がないんだけど...。
つんつんと突っついてみると、ふよふよと動く。うーん・・・これはどんな魔術なんだ?
上に上げようと念じると、上に上がる。下に下ろそうとしたら、勢い余って地面にぶつけてしまった。するとパン!と破裂音をたてて、白い球と球とぶつかった地面が消えた。消えたところは、クレーターのようになっている。・・・はい?
えーっと、これがこの魔術の効果?属性を混ぜすぎて、なくなっちゃったのかな?ということは、三属性混合魔術は属性無しなのか。見た感じ、魔力をそのまま加工して、魔術にしているみたい。
もう一回、白い魔力球を作る。一回作ってしまえば、発生させるのは簡単だ。
また地面に落としてみると、またパン!と音をたてて消える球と地面。・・・よし。この魔術の名前は、消失だ!
しかし、けっこう魔力消費が多いな。普通の弾には出来ないかな?試してみよう。
えーっと、消去の効果を消して、弾丸として魔術を構成。一発は小さめにして、量で圧倒する魔術にするか。試しに一つ作ってみる。
拳大の光球が発生する。自由自在に動かすことが出来、弾速も結構速い。使い勝手が良さそうだ。
消失を改造することで、いろんなバリエーションの魔術を作ることが出来そうだ。いろいろやってみよう!
そうして、二個ほど魔術を作ったので、試し撃ちをしてみることにした。街の外に出る。
小鬼が二体いたので、こいつらで試すことにする。まずは消失。二つ発生させて、小鬼たちに向けて飛ばす。
白い球は小鬼の腹と背中にぶつかって、
パパン!
「「ギャバン!」」
その部位を消滅させる。うわ、グロ...。消失面から内蔵とか骨とかいろいろ見えてるよ...。あまり使わないようにしよう。
お次は、最初に改造した弾丸の魔術だ。えーっと、あの三匹の餓狼でいいか。
名前は・・・シュートでいいかな。十個出して、それいけ!
光の弾が出現し、餓狼に向かって飛んでいく。前にいた二匹には命中し倒す。だが、最後の一匹には気づかれてしまった。ダッシュで回避しようとするが
「ギャ!?」
大きくカーブし、餓狼を追尾。命中し、その命を散らす。追尾出来るようにしておいて良かったな。便利だ。
さてと、それじゃあラストだ。魔獣は・・・お、俺に向かって走ってくる小鬼がいる。あいつでいいか。
今から撃つのは、魔力砲撃だ。気だけど。名前は・・・カノンだな。ぶちかませー。
一筋の光が、放たれる。高密度の魔力は、小鬼を焼き、消し炭にした。
うーん。威力は高くていいんだけど、魔力消費がなー。多いんだよなー。魔力を加工しているとはいえ、そのまま撃ってるんだし...。
これから要研究。今後のためにも、もっと実用的な魔術にしなきゃな。