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判明


『茶は出せんが、まあ勘弁してくれ。楽にしていいぞ』

棺の中の人がそう言うので。座っておく。偉そうにしゃべるやっちゃなー。

「それで、何か言い残したことがあるんですか?早くしゃべっちゃってください。俺にはあまり時間がないんです」

『急いては事を仕損じる、と言うだろう。少しくらい休んでも、誰も文句は言わないぞ、少年』

少年って...。中の人は爺さんか?アルバス先生と似たような話し方だし。

『爺ではないわ!ぴちぴちで永遠の1?歳じゃ!』

「そうですか...。話す気がないなら帰りますよ」

『ちょ!少し巫山戯ただけじゃろう!久々に話して、テンションがアゲアゲなのじゃ!大目に見ろ!』

・・・なんだこの人。この大陸の人は、基本的にカタカナはしゃべらないのに。もしかして、別の大陸の人が入ってるのか?

『いや、儂はこの大陸出身じゃ。今の言葉は、この遺跡を作った奴が言っておったのじゃ。「ヒャッフー!!!異世界ktkr!俺TUEEEすんぜー!!!テンション上がってきたー!!!」とな』

「おかしな奴ね。気違いなんじゃない?」

「ソウダネ。絶対、おかしいヨ!」

「もし見かけたら、近寄らないほうがいいな」

「・・・」

どっからどう見ても転移してきた奴です、はい。こんなことってあるのか?俺の場合は、神界の任務だからな。人事部の奴がミスったのか?

「どうしたのリュー?顔色悪いわよ」

「うえ!?そ、そう?気のせいじゃない?それで、そいつはどうなったんですか?」

『巡回してたあの機械に殺されたぞ。自分を攻撃しないよう設定しないで外に出たときは、さすがの儂でも驚いた』

どうやらもう死んでるみたいだ。よかった。そんな奴が世界に放たれたら、何をしでかすか分かったもんじゃない。

「そうですか。・・・で、結局何を話したいんですか?」

話が脱線してしまった。死んでるなら、もうどうでもいい。

『おお、そうじゃった!お主は仙人じゃないじゃろう?なんでその娘と一緒に行動しておるんじゃ?』

「俺は転移の気導具を探しているんです。別の大陸から、転移させられたので」

『それは災難じゃったな。・・・そうじゃな。わざわざここまで来たのじゃ。場所を教えてやってもいいぞ』

「知ってるんですか!?教えてください!」

これで帰る算段がつく!帰還する希望が持てる!

『その代わり、頼みがあるのじゃが...』

「何でも言ってください!俺が叶えられるものなら、何でもやります!」

『これを一緒に持っていって、毎晩気を注いで欲しいんじゃ。そんなに沢山注がなくてよい。出来るか?』

再び棺の奥から、何かが飛んでくる。これは・・・石?

「これはなんですか?見た感じ、ただの石ですけど...」

『そ、そのうち分かる。それより、出来るか?出来ないか?』

「出来ますけど...。これ、呪いとかそういう類いのものではないですよね?」

さすがにそういうものは預かれない。危ないし。

『そんなんじゃないわ!その石に封印されてるのはわ...』

「わ?わ、なんですか?」

『そ、そのうち分かると言ったじゃろう!これ以上詮索するなら、頼まんぞ!』

「わ、分かりましたよ。お受けしますから、場所を言ってください」

機嫌を損なわれて、ご破算になったら困る。後のことは、後に考えよう。

『コホン。それで転移の気道具は、迷宮都市のどこかにある。詳しいことは分からん』

でましたよご都合主義。都合良すぎ。俺としては、嬉しいけど

「何か必要な物とかは、あるんですか?」

『詳しいことは分からんと言ったじゃろう。自分の目で確認せい。儂はお主が欲しい情報をやったぞ。頼んだことは』

「ちゃんとやりますよ。教えてくださって、ありがとうございます。これで失礼しますね」

『頑張るんじゃぞ。現実に負けるな』

「?どういうことですか?」

『何、ただの老婆心じゃよ。心の片隅にとどめておくが良い』

よく分からないが、俺のことを心配して言ってくれたようだ。覚えておこう。




棺のあった部屋を後にし、入り口にまで戻る。機械竜を倒したからなのか、道中襲われなかった。行きは辛くて、帰りはよいよいだな。

遺跡を出て、俺たちが空けた大穴の真下に向かう。うーん、見事に結界を貫いてるな。このままじゃマズいかも。

「リューなら直せるんじゃない?結界魔術、使えるようになったんだから」

「いくらなんでも、厳しいんじゃないか?規模が桁違いだ」

「まあ、やるだけやってみるよ。無理そうだったら、放っておこう」

飛んで結界を抜けて、穴の中で止まる。破れた部分に手を当てて、術式に意識を沈めていく。

・・・ここだな。結界の欠損部分。維持はしてるみたいだけど、修復はまだみたいだな。目に見えた被害がないから、後回しにしているんだろう。良く出来たシステム、無駄なことはしないんだな。

だけど、それは間違い。小さな罅がだんだん広がり、やがては大きな割れ目となる。気づいてからでは遅いのだ。

龍脈から供給されている気を、少し拝借して修復にあてる。完了したら、該当箇所の障害を分解、除去。これで大丈夫。

「ふう。終わったよ。さっさと帰ろう」

「エ?りゅー君、結界を直してたノ?というか、もう終わったノ!?早いネ!」

「こんな大きな結界を修復するなんて...。兄者、体におかしいところはないか?無理はしてないか?」

「問題ないよ。既存の術式に、少し手を加えただけだから。気もそんなに消費していない」

大きな改変をするには、かなりの気を使う。よっぽどのことがなければ、やりたくないな。

「そうか...。それならいいんだが」

どうやら砂漠で俺が頑張ってたことに、責任を感じているみたいだな。帰ったら肩でも揉んでもらおうかな。

こうして、砂漠の地下に眠る遺跡の探索は終了した。地上に戻ると、もう日が昇りそうだった。確か朝方に潜ったから、丸一日地下にいたことになる。今頃になって、疲れが出てきた。早く宿に戻って寝たいな。




〈side ミズキ〉

「はー。今日はすっごく疲れたな。もう寝るか」

砂漠から黒砂に戻り、宿屋に着いた。兄者は部屋に到着すると、すぐに布団に倒れ込んだ。

「風呂は明日入るわ。おやすみー・・・zzz」

目を閉じて、あっという間に眠りにつく兄者。私もかなり眠い。今にも瞼が落ちそうだ。

「ミズキも眠いでしょう。後のことは私たちに任せて、もう寝なさい」

「だが、ビアンカたちも疲れているだろう?私も手伝ったほうが、早く終わるぞ」

「そんなフラフラして言われても、説得力がないヨ。おねーさんたちに任せて、もう寝なさイ」

フェイに無理矢理兄者の布団に寝かしつけられる。なんで兄者の布団?

「りゅー君と寝たくなイ?それなら、私が寝るケド」

「待ちなさいフェイ。それなら私が寝るわ。最近、一緒に寝てなかったし」

フェイとビアンカが、兄者との添い寝の権利を主張し始める。

「二人とも落ち着け。兄者が起きてしまうだろう。後、私は兄者との添い寝を譲るつもりはない」

そう言って、兄者の胸に顔をうずめる。兄者の匂いと暖かさに包まれ、微睡んでいく。

「ムウー!明日は私だからネ!」

「いーえ、次は私よ!少しは自重しなさい!」

二人が言い争う声を聞きながら、意識は沈んでいった。明日は晴れるかな?


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