間違ってますよ
機械の亀を倒した後、俺たちは時々休憩を挟みつつ奥に進んでいった。
出てくる敵は変わりなく、しかし数が多くなって俺たちが進むのを阻む。が、
「セリャアー!」
「はああ!」
亀との戦闘で棒での戦闘に目覚めたフェイさんと、なんかすごく張り切っているミズキが敵をなぎ倒していく。何があったんだろうな?
「あの子なりの、リューに対する献身よ。ここを探すのに無理させちゃったから、戦闘では役に立ちたいのよ」
「そうなのか...。自分が出来ることをやっただけなのにな。帰ったら気にしないように言っとくか」
「それより、リューが褒めてあげたほうが喜ぶと思うわよ」
そうかなー?まあ、ビアンカがそう言うなら正しいんだろうけど。嘘を言うような奴じゃないしな。
そして、ついに遺跡の最奥らしき場所に到着した。なぜ最奥と分かるかというと
「見るからに怪しい大きい扉があるからだよ!」
「ウワ!いきなり大声出さないでヨ!ビックリするジャン!」
大きな声を出したら、フェイさんに怒られた。すいません、言わなきゃいけないような気がしたんです。
俺たちの目の前には、豪華な装飾が施された大きな扉がある。高さ5mくらい、いやそれ以上ありそうだ。
「ここが一番奥なのか、兄者?」
「多分な。今まで見た中で、ここが一番豪華な扉だし。王様は豪華なところに埋葬するだろ」
「そうね。それじゃあ、開けましょうか。警戒は怠らないでね」
ビアンカに言われ、自然と手が鞘にのびる。俺もずいぶんこの世界に馴染んでるな...。
扉に手を当てると、ギギギッと軋んだ音をたてながら、扉が開いていく。さてと。何が出てくるかな。
扉の動きが止まる。・・・何も出て来ないな。
「何もいないのカナ?」
「まだ気を抜いてはダメだぞ。安全が確認されるまで、警戒を続けるんだ」
ここで止まってても仕方ないので、部屋に入る。
部屋の中には、複数の柱が立っており、奥には棺が一個だけポツンと台の上に置いてある。
「おかしいわね。どこかの王族が眠ってるなら、もっと色々あっても不思議じゃないのに...」
「隠し部屋とかあるんじゃないか?まあ、あの棺を調べれば何か分かるだろ」
部屋の中心を突っ切って、棺まで歩いていく。何が入っているのかな。
棺は石で出来ており、縦に2mくらいだ。特に装飾はされておらず、簡素な物だ。扉は豪華だったのな。
開けてみようと、蓋に手をかける。すると、
『待て。棺を開けるでない』
「ッ!みんな、下がって!」
後退し、刀を構える。くそ、気配は感じない。どこから声がするんだ!
『こっちじゃ、こっち!棺の中から、頭に直接話しかけてるんじゃ!』
「エエ!?どういうコト!?」
「・・・念話ってやつか。それとも、テレパスか?」
『どっちも同じじゃろ。それで、おんしらはここに何をしに来た。墓荒らしら?』
「そうじゃないヨ!私は仙人の見習いで、試練であるものを集めているんダ。それがこの遺跡にあるらしいんダヨ」
『仙人?・・・ああ、あいつらか。昔、変な珠を渡されたが、あれがそうなのか?』
どうやらここであっていたようだ。ここで間違っていると言われたら、あの棺をぶっ壊してただろうな。多分。
「ソレソレ!きっとそれダヨ!譲ってくださイ!」
『ふーむ,,,。私としては構わないんだが、あいつらに只ではやるなと言われててな。すまないが、試させてもらうぞ』
そう棺の中の人が言うと、背後に何かが降り立つ。またこの展開か。今度は何がでてくるんだ?
振り返ると、そこには機械の竜がこちらを睨んでいる。むう、また機械の獣か。こいつもビームやミサイルを撃ってくるのか?
『びーむにみさいる?そんなもの撃たないぞ。ブレスや気導術を再現したものなら撃つがな』
それだよ!とは言えなかった。なぜなら
「GYAAAA!!!」
と竜がいきなりミサイルを乱射してきたからだ。ちょ、ま!慌てて回避するが
「って、これついてクル!」
追尾式!?ハイテクすぎるだろ!ってそんなこと言ってる場合じゃない!
フレイムミサイルで迎撃する。ミサイルとミサイルがぶつかり、大爆発をおこす。
「くっ...!みんな、大丈夫!?」
ビアンカ達の方を見ると
「ヘイル・ダンス!」
大量の氷塊を作り、ミサイルにぶつけているビアンカ。
「セイセイセイ!」
岩の壁や弾を撃ちながら、棒をぶん回して迎撃しているフェイさん。
「ふ!は!せや!」
ミサイルが当たる直前に、ヒレで斬り裂いていくミズキ。ジャンプして回避し、くるっと一回転してミサイルを両断している。・・・心配なかったな。
全て撃ち終わった竜は、こんどは口を開く。中には、円筒状のものが回転していた。まさか、あれって,,,。
「GYAAA!!!」
口から細いビームを撃ってくる機械竜。やっぱりか!
ビームを回避しつつ、フレイムミサイルtypeパトリオットを数個撃つ。見事命中し、その体を焦がす。・・・不思議に思ってたんだが
「なんで、竜にしたんだ?竜じゃなくてもいいだろ」
『そりゃ、強いからじゃろ。竜の強さは、お主も知っておるじゃろ?』
「・・・そうか。馬鹿だな、この遺跡を作った奴は」
竜の最強たる所以は、空を飛べることだ。空から魔術を撃たれたら回避も反撃もしづらいし、強襲も出来る。こんな閉所じゃ、竜のアドバンテージを活かしきれてない。飛べねぇ竜は、ただの竜だ。
「リュー、どうするの?そこまで強くはないけど、あの巨体で暴れられたら厄介よ」
「そうだな。金属だから体も重いだろうし。遺跡を崩したらいけないから、あまり強い魔術も撃てない。・・・やってみるか」
刀を抜いて構える。この前手に入れた特殊能力、バーストを使ってみよう。多分、斬れるだろ。
頭の中で、バーストと念じる。すると、刀身が赤く発光し体に力が漲ってくる。これがバースト...。これならいける!
竜に向かって走り出す。いつもより速い。ミサイルを撃ってくるが、簡単に躱せる。
腹に潜り込み、瞬時に焔纏を発動させ腹を斬る。刀の刃は金属の体を通り傷つける。
機械竜は腹を落として、俺を潰そうとしてくる。腹の下から抜け出て、瞬動で動き回りながら脚や尻尾、体を斬っていく。
「うっわー...。いつにも増して、人間離れしてルネ...」
「兄者がまったく見えないぞ!?どれだけ速く動いているんだ!?」
「また無茶して...。あんだけ言ったのに...」
しばらく機械竜を斬り続け、俺が動きを止めた時には竜は体中を斬り刻まれ、ボロボロになっていた。
「G、GYAA...」
「ふう。そろそろ五分か。決めるか」
焔纏を最大火力で発動し、機械竜に向かって駆ける。白い炎が渦巻き、刀は炎がまとわり白い太刀のようになっている。
機械竜の頭の前に瞬時に移動し、刀を大きく振り上げ、首に目がけて一気に斬り下ろす。
炎の太刀は、機械竜の硬い装甲を斬り裂き、その首を焼き斬った。
『ほう。倒したか。やるな』
「それはどうも。褒めても何も出ませんよ。それより、さっさと仙人から渡された物をよこせよ、コラ」
『そう焦るな。これがその渡された物だ』
棺の奥から、褐色の宝玉が飛んでくるので、受け取る。これで二つ目。転移の気道具は見つからない。
「ありがとうございます。それではこれで」
『まあ待て。久しぶりの来客だ。少しは儂の話を聞いていけ』
・・・変な奴に捕まってしまった。まあ、気道具のことを知ってるかもしれないから、とりあえず聞いてみるか。