ロマン!
「ここなら、あいつらは入ってきそうにないわね。休憩にしましょ」
「ソウダネー。暗い所を歩くのは疲れるヨ...」
遺跡を探索すること一、二時間。俺たちは、遺跡内の小部屋で小休止していた。
あの機械たちは、50mくらいの範囲で音と魔力、気を探知するらしい。しかも避けられないように配置されていて、戦闘になりやすかった。一機に見つかると、周りの奴らも寄ってくる。幸いにも、一度に多くの数は寄って来ないので、窮地には陥っていない。
通路には光る石が置いてあり明かりはあるものの、そこまで強い光量ではないのであまり前が見えない。だから自然と警戒してしまうので、体力と精神を消耗しやすい。休息を時々とらなければ、いざという時に戦えないだろう。
「それにしても、不思議な遺跡だな。敵は多いし、このようなわざわざ休憩させるような空間もある。殺したいならこんな部屋もいらないだろうし、この遺跡を作った奴は何をしたいんだろうな」
「そうだな...。この遺跡には偉い人が、埋葬されているんじゃないか?墓荒らしを撃退するために、警備を厳重にしてあるんだろ。王と一緒に、財宝も墓に入れるって聞いたことあるぞ」
ピラミッドにも、そんな仕掛けがあったしな。あんな機械は巡回してないけどな。
「それじゃあ、こういう部屋ハ?これこそ、ある意味がないんじゃナイ?」
「そうですね...。一応、なんであるのかっていうのは、予想はつくんですけど...。言わなくても、問題ないでしょう。あって困るものでもありませんし」
「見当はついてるの?知っていたのかしら...」
多分だけど、恐らくセーフティーエリアみたいなものだろ。ゲームとかで、休憩するところだ。なんでこの世界の遺跡にあるのか分からないけど、それは今はどうでもいい。神界で聞けば分かるだろうしね。
「それでは、出発しましょうか。フェイさん、行きますよ」
それから歩くこと数十分。俺たちは、広場に出た。そこそこの広さで、バスケくらいなら出来るかもしれない。
奥には通路が続いており、
「急に広場に出たわね。今までは、狭い通路ばっかりだったのに」
「いいじゃん、ノビノビできテ!こういうところばっかだったら、いいのにナー」
「そうだな。戦闘もしやすいしな。あんな通路ばかりじゃ、うまく戦えない」
「えーっと、戦いやすいなんて言っちゃうと、本当に敵が...」
俺が言葉を言い終わるより早く、上から何かが落ちてきた。手遅れだったか...。
落ちてきたのは、機械の亀だった。甲羅に砲を装備した大きな亀だ。ミドリガメみたいな可愛い奴ではなく、カミツキガメみたいな厳つい奴だ。大きいので、威圧感が半端ない。
「みんな、戦闘準備。甲羅に乗ってる筒からは、何かを撃ってくるだろうから気をつけて。他にもまだなにかあるかもだから、すぐに離れられるように」
「何かを撃ってくる?魔術でも撃ってくるの?」
「まあ、そんなものだと思ってて。来るよ」
「GYAAAAAA!!!」
亀が砲を俺らに向けて、ドウ!と撃ちだす。気が集まって収束し、太い光線が放たれる。ビームか!かっこいいけど、受けたくはない!
横っ飛びで避ける。ビームは柱に直撃し、粉々に粉砕した。
「リュー、あれ何!?光の魔術!?」
「そんなこと聞いてる場合じゃない!次くるぞ!」
亀はどんどんビームを撃ってくる。それを避けながら、亀の懐に入る。これなら、ビームも撃てまい!
刀で亀の腹部に斬りかかる。が、ギィン!と弾かれる。くそ!全体が金属で出来てて、刃がまったく通らない!
「兄者!全然刃が通らない!どうする!?」
ミズキもヒレで斬れないらしく、俺にどうするか聞いてくる。魔術で攻めるか?
フレイムジャベリンで亀を囲み、一つの足に集中砲火を浴びせる。
「GYAAAA!!??」
これは効いたらしく、叫び声をあげる亀。足は焦げ、ところどころ穴も空いている。よし、これならいける!
「フェイさん、ビアンカ!気導術が効きます!一点に集中させてください!」
「了解!まっかせなさイ!」
「OK。私は前足を狙うわ」
ビアンカは氷の塊を、フェイさんは岩の槍を作り亀に向かって撃ちだす。だが、
「GYAAAA!!!」
亀の甲羅が開き、中からミサイルポッドが多数出てきて、ミサイルが一斉に撃ちだされる。ミサイルの大半はビアンカ達が撃った魔術を迎撃し、残りは壁にぶつかり爆発した。おいおい、ミサイルまで装備してんのかよ!
こっちの魔術は迎撃され、刀は刃が通らない。どうしようか...。
「大丈夫!まだ、手はアルヨ!」
フェイさんが背中に背負っていた棒を構える。フェイさん、棒術も出来るのか!?
フェイさんは自分に札をはり、亀に向かって走り出す。亀のビームを避けながら、亀に接近する。
「セイ!」
亀の足に向けて棒を振り下ろすフェイさん。フェイさんが振るった棒は、亀の甲羅に命中し、ボゴン!とその甲羅をへこませる。マジか!?一体どうやったんだ!?
「気を武器に乗せて、そのまま叩き込むんダヨ!中から壊すんダ!」
なるほどー。浸透する攻撃なら、いくら堅くても問題ないな。
再び亀に接近し、刀に気を込めて峰で足を殴る。ドゴン!と大きな音をたてて、足が変な方向に曲がる。地面にまで衝撃が伝わったのか、床が陥没している。これなら、勝てる!
攻略法が分かってから、亀を倒すまで時間はかからなかった。みんなが自分の武器で囲んでたこ殴りだ。たまに攻撃してくるけど、簡単に躱せるので余裕でした。
壊れて煙を上げている亀を刀に吸収させる。すると、ピカッと刀が輝いた。また進化かな?
銘 絡繰丸
種類 打刀
素材 謎の合金 亀砲台の素材
値段 ただ
属性 なし
制作者 かみ☆さま
特殊能力 吸収成長 硬化 血強化 バースト
成長値 33/600
丈夫さ A
斬れ味 B
使いやすさ F
どことなくメタリックな刀になった。峰のほうに排熱口的な物もあるし...。バーストって能力も気になるな。
えーっと、一時的に武器と使用者のステータスを爆発的に上昇させる、か。効果時間は五分間。その後三十分は、排熱をするためバーストは使用不可。丈夫さがDまで、ステータスも低下するらしい。最後の最後にしか使えないな。
「また進化したの?留まるところを知らないわね、その剣」
「なんだか、さっきの亀みたいな色合いだな。かっこいいな!」
「もしかして、あの光ってどーーーん!ってやつを撃てるノ!?撃って撃っテ!」
フェイさんがビームを撃てと催促してくる。・・・撃てるのか?いや、そんな特殊能力ないし撃てないだろう。
「撃てませんよ。そんなこと言ってないで、早く奥に進みましょう。遅くなったら、ここで一晩明かさなきゃいけなくなりますよ」
さっきの亀。まるで、ゲームの中ボスみたいだったな。入り口からの距離といい、そこそこの強さといい。俺の考え過ぎかもしれないけど、あのセーフティーエリアみたいな部屋のことも含めて考えると、この遺跡を作った奴は転生した奴なのかもしれない。そうだとしたら、奥には何かいるはずだ。気をつけて進もう。