サービス、サービス!
温泉回である。
褐砂の街に着いた。街中から湯気が上がり、鼻をつく匂いが漂っている。
「この街は、温泉で有名なんダッテ!入ってこうヨ!」
「臭いな。これが温泉なのか?こんな物の、何が良いというんだ」
「温泉っていうのは、自然に出てくるお風呂のことよ。怪我の治りが早くなったり、お肌がツルツルになるらしいわよ」
へー、この世界でも似たような効果なんだな。怪我の治りが早くなるってことは、討人にも重宝されてそうだな。
「そうなのか。兄者!入ってみたいぞ!」
「そうだなー...。疲れが貯まってたら、戦闘でも危ないし...。入っていきましょうか」
俺も日本人としては、温泉は無視出来ない。一晩ゆっくり休んで、疲れを癒そう。
宿屋をとった俺たちは、早速温泉に入ることにした。
「・・・と言っても、俺は一人なんだけどね...」
男湯と女湯が分かれている中で、女湯に特攻する勇気は生憎持ち合わせてない。べ、べつに一人で寂しいって訳じゃないんだからね!
服を脱いで浴場に入る。見事な露天風呂だ。しかも、人がいないので貸し切り状態。
「おおー。見事なもんだなー。さっさと体を洗って、ゆっくり浸かるとするか」
ぱぱっと体を洗って、湯船に入る。体の芯まで染み渡る暖かさに、思わず息を吐いてしまう。
「あああー...。極楽だー。生きてて良かったー」
グッタリと体を湯船に預け、空を見上げる。雲一つない青空。こうして見れば、平和なんだけどな。街を一歩出れば、弱肉強食の世界だ。
ぼーっとしながら、色んなことを考えていく。レアのこと、シャネルちゃんのこと、タマモのこと、そして神界のこと。焔纏を取り戻したせいか、妙に懐かしく感じる。
部下は元気でやってるかな。あそこにいれば、病気や怪我の心配はないけどな。心の問題だ。
師匠は、今どうしているだろう。案外、俺のことなんて忘れて、新しい弟子でも育ててるかもな。・・・それはそれで、寂しいな。
リアとベスは喧嘩してないだろうか。あいつらが喧嘩すると、地形が変わるからな。毎回、地理を担当している人が泣いてたぞ。
部長の髪は、大丈夫かな。だんだん後退していってるって聞いたけど...。帰ったら良いカツラでもお礼として送ろうかな。
〈side ビアンカ〉
リューと分かれて、脱衣所に入る。フェイはもう服を脱ぎ始めている。
「そんなに急がなくても、いいんじゃない?温泉は逃げないわよ」
「楽しみなんダヨ!温泉に入るのなんて、久しぶりだからネ!」
私も服を脱ぎながら、ミズキの服を脱がすのを手伝う。尻尾とかがひっかかって、一人では脱ぎにくいのだ。
「うむむむ、ふう。すまない、ビアンカ。私も一人で服を脱げたらいいのだが...」
「時間がかかるじゃない。効率が悪いわ。ほら、早く入りましょう」
ミズキを連れて、浴場に入る。大きな岩の湯船があり、お湯がモクモク湯気をあげている。まだ昼だからなのか、誰も入ってない。
「貸し切りダ!早く体を洗って、入ろウ!」
あっという間に体を洗い、湯船に飛び込むフェイ。
「飛び込んじゃ、駄目じゃない。マナー違反よ」
「そうだぞ。幼児でも守れることを、19の娘が守れないとは...」
「誰もいないんだから、いいじゃーン!二人も入りなヨ!気持ちいいヨー」
フェイに促されて、私たちも体を洗って湯船に入る。体中を包み込む暖かさに、思わず息をつく。
「はふぅー...。これはいいわね。癖になりそう」
「デショー?はー、極楽極楽」
タオルを頭にのせて、足をあげてくつろいでいるフェイ。むう、相変わらずの美脚。
「ふわー...。眠くなるな、これは。兄者に抱かれているようだ」
顔を湯船のはじにのせて、ウトウトしているミズキ。こうしているのを見ると、とても竜だと思えないわね。
しかし、人が来ないわね。リューの方は、どうなのかしら?
「リュー、そっちに誰かいるの?」
「いんや、一人風呂だ。そっちもか?」
「ええ。そうよ。・・・そう、一人なのね...」
浴場の端っこに、扉がある。掃除の時に使うのかしら。多分、あそこから男湯に...。
「ビアンカ、どこに行くんだ?そっちには何も...。その扉は?」
「理想郷に通じる道よ。ようやくリューと一緒に、風呂に!」
「兄者はそっちにいるのか?それなら、私も一緒に行こう!兄者に頭を洗って欲しい」
「二人共、男湯に行くノ!?・・・それなら、私モ...」
え?なんでみんなついてくるの?男湯よ、男湯。普通の女の子なら、行かないでしょ。
・・・普通じゃないわね。竜に鬼、私は吸血鬼か。しょうがない、二人っきりはまたの機会ね。
二人が呼ぶので、扉の方に向かう。リュー、どんな顔をするかしら?
ボケーッとしていると、奥の方から何やらおかしな音が聞こえる。ギィーっという、何か開くような...。
「兄者。頭を洗ってくれ」
「・・・ミズキ。ここは男湯だ。なんで、入ってきてるんだ?」
奥の扉から、ミズキが入ってきた。あそこって、掃除とかの時に通るとこだよな?なんで、鍵をしてないんだ...。
「鍵はしてあったわよ。女湯の方から」
ビアンカも入ってくる。その裸体を隠そうともしないで、タオルを持って歩いてくる。むう、ナイスバディ。
「前隠せ。丸見えだぞ」
「見られて恥ずかしいような、体じゃないわ。どう?興奮する?」
胸を張って、俺に見せつけてくるビアンカ。青白くなく、真っ白な肌。美巨乳が惜しげもなくさらされ、ピンク色の乳房がピンと張っている。腰はくびれて、足は肉付きがよく艶かしい。
「そりゃ、まあ。そういうのも好きだけど、俺はああいったほうがより好みかな?」
「ウウウ...。二人とも。なんで体を隠さないノ?こんなに恥ずかしいノニ...」
前をタオルで隠したフェイさんが、俺に背中を見せないように入ってくる。これだよ!照れて顔を赤くし、さらに風呂という環境により拍車がかかっている。タオルからチラッと覗く横乳と、隠し切れていない美脚が欲情を煽る。エロ力53万だな!
「あんまり見ないで、りゅー君。恥ずかしいヨ...」
体を抱いて、縮こまるフェイさん。これは・・・いい!
「フェイさんを見習え、ビアンカ。お前にはお前の良さがあるが、これには敵わない」
「・・・そうね。思わず、キュンとなっちゃったわ。けど、私は私の道を行くわ」
「その意気だ。精進しなさい」
「何を言っているんだ、兄者とビアンカは。別の大陸の風習か何かなのか...」
ビアンカ達を湯船の中に入れる。風邪をひかせるわけにはいかない。
「ん、リュー...。暖かいわね」
「兄者と入ると、また格別だな」
「りゅー君...。こっち見ちゃ、駄目ダヨ。ギュッとくっついテ...」
右手にビアンカ、左手にフェイさんが絡み付き、前からミズキが抱きついてくる。柔らかいやら、良い匂いやらで頭がクラクラしてきた。
「えーっと、ビアンカ。少し離れて...」
「いや。満足するまで、離れない」
より密着してくるビアンカ。
「その、フェイさん。ちょっと離れて...」
「見ちゃダメって言ったデショ!」
ムギュウっと腕に胸を押し付けるフェイさん。わざとか?わざとなのか?
「ミズキ。一旦、離れて...」
「私だけ、除け者か?酷いぞ、兄者」
「・・・はあ。幸せなんだよな、これ」
みんなの気が済むまで、抱き人形になっていましょうか。日頃の、せめてものお礼だ。