表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/110

憤怒


「・・・ヨシ!これで大丈夫!りゅー君、開いたヨ!」

十分ほどで、結界を通れるようになった。フェイさんの方を見ると、結界に扉が一つ出来ている。ここを通ればいいのかな。

「それじゃあ、行きましょうか。中では何が起こるか分からない。戦闘になるかもしれないから、準備は怠らないでね」

「了解」

「もちのロン!」

「心得た」

そうして、俺たちは扉を開けて結界の中に入った。



結界の中は、何やら神秘的な空間だった。

目の前には、巨大な木。天辺が全く見えない。ドラ◯エの世界樹みたいだな。

木の根元まで歩いていく。そこには、一つの彫像があった。

「これ、何だろうな。人身馬頭?」

「私たちの大陸では、馬は智の化身だって言われているネ。馬は頭が良いシ」

彫像に触れてみる。すると、

「ようこそ、若き仙人の卵。ここに仙人の見習いが来るのも、300年振りだな」

馬の頭が俺たちの方を向き話しだす。うわ、すごいシュール。馬がイケメンボイスで話かけてくるとか。

「えーっと、あなたは?」

「私は、いわゆる試験官みたいなものだ。仙人に試練を与え、それに合格した者に報酬を渡すことになっている」

「その報酬が、お前ら仙人の免許皆伝の試練に必要な物だ。試練を受けるか?」

「モチロン!そのために来たんだからネ!」

そりゃ、そうだけど。せめて、内容を聞いてからでもいいんじゃないんでしょうか、フェイさん。

「良かろう。それでは、試練を出してやる。私の試練では、お前達の智を見せてもらう。この問いを解け」

そう試験官が言うと、地面から石盤が迫り上がってくる。そこには

「これって・・・証明?」

「頭を使うのカー。私に期待しないでネ」

「私もだ。戦闘なら、活躍出来るんだがな...」

証明問題ね...。どんな問題かな?石盤を見てみると

「・・・解けた」

「ほう。それでは、答えはなんだ?」

「この問いに、解はない。もっと言えば、この問いは成り立たない」

だって・・・ここに書いてある問題、ケーニヒスベルクの問題にそっくりなんだよ。多少の違いはあるけれどな。川が道だったり。

「ほむ。その答えも正解だ。だが、もう一つ答えがある。それは分かるか?」

「こう上の道を、ぐるっと迂回すればいいんだろ?問題には違反してない」

「・・・正解だ。智の試練はこれで終了。次は心を試さしてもらおう」

次は心か。心技体を試すのかな。

「これからお前達の心を狂わせる。それに耐えてみせよ」

そう言うと、馬の目が怪しく光り、黒い気が俺たちの中に侵入してくる。ナイトメアみたいなものか?

突然、周りが暗転する。これは・・・意識が落ちて心の中の風景が映し出されているのか?

「やだ!来るな!来ないで!」

後ろを見ると、尻餅をついて後ずさるレア。前には、複数の男が迫っている。

レアが男達に押さえつけられる。目には恐怖が浮かび、必死で俺に助けを求めている。

「やめろ!この!離せ!」

レアが男達にリンチされる。腹を殴られ、蹴られ、また殴られる。

「ごほ!ぐ、はぁはぁ。リュー、助けて...。怖いよ...」

レアは羽交い締めにされ、男達はレアを汚そうとしている。

「なんで...?リュー、助けてくれるって言ったのに...。やだ、怖いよ!リュー、助けてよお!」

おい、止めろ。止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!体は動かない。まるで、空間そのものが俺を拘束しているようだ。

そうしているうちに、レアは口を塞がれ腕を縛られる。・・・こういうことか。心を狂わせるって。

確かに、効果覿面だ。だって・・・この世界に来て、こんなに怒ったのは初めてだからな。

バリン!と何かが割れる音がする。いつの間にか、周りは彫像の前に戻っている。だが、そんなことはどうでもいい。今は、この糞野郎をぶち壊すことだけが重要だ。簡単に楽にはしない。この世の絶望を余さず味わしてくれる...!

「リュー、落ち着いて!これは全部幻想!幻なのよ!」

「そんなの関係ない。どんな形であれ、レアにあんなことした奴は殺す。何としても殺す。王でも竜でも全部殺してやる...」

体を魔力で強化する。攻撃重視、防御は軽視。後のことなど関係ない。今出せる力を全部使って、コイツを殺す。

「ふむ。狂ってはないが、怒りで我を忘れている様だな。ちょうどいい、最後の試練だ。コイツを倒せ」

そう言うと、木の中から何かが出てくる。獣竜のようだな。強靭な四肢。あらゆる物を噛み砕く顎。立派な尻尾。

「あれは、グランデイル!?上位獣竜種が、何でこんな所にいるのよ!」

「ぐらんでいる?あれは、暴乱牙竜ダヨ。強そうダネ」

「名前はどうでも良い!兄者!構えろ!」

・・・あいつがいたら、集中して馬を殺れないな。先に殺しておこう。

体内の魔力密度、攻撃部位の気の密度を引き上げる。体が悲鳴を上げるが無視。限界まで上げる。

「リュー!そんなに魔力を体に流したら駄目!壊れちゃう!」

火属性を付与すると、体を白の炎が覆う。・・・ようやく、ここまできた。熾天流焔纏。

「なんと!神の使いの炎か!」

刀を抜くと、刀身にも炎が纏う。さっさと殺ってしまおう。

「グラアアアアァァァ!!!」

獣竜が俺に向かって、爪を振り下ろす。今までも、こうして数多の生物を屠ってきたのだろう。

刀を鞘に入れたまま、腰だめに構える。爪が俺を裂こうとする、が

「疾ッ」

居合いで腕を斬り落とす。血は出ない。高熱で、血管が溶けて血を止めている。

「グギャアアアァァァ!!!???」

バン!と瞬動で腹の下まで移動し、残った脚を全て斬る。首と尻尾だけ残りだるまの様になった獣竜には、最強の幻想種、竜の威厳はまったく感じられない。

「すまないな。何の恨みもないんだが。まあ、むこう(・・・)で謝るよ」

首を斬り落とす。グランデイルは上位の竜っていっても、上位の中の下くらいの強さだ。焔纏を取り戻した俺の敵じゃあない。

「これで、試練は終了だ。これを受け取れ」

「オオ!この宝玉が、集めてこいって言われてた奴ダヨ!これで一個目ダ!」

フェイさんが緑色の宝玉を受け取っている。これでもうあの馬の役目が終わったな。

「それじゃあ、殺すか」

「チョ!ダメだよ、りゅー君!これを壊したら、他の仙人が困っちゃうヨ!」

フェイさんが俺を止める。

「ふふふ、どいてフェイさん。あいつ殺せない」

「りゅー君の目が逝っちゃってるヨ!みんな止めテー!」

「リュー、しっかりして!一体何を見たの!?」

「落ちつけ、兄者!言葉が病んでるぞ!」

みんなが俺を押しとどめる。こうなったら、力づくでも...!

そう思い、体に力を入れようとする。が、逆に力が抜け、その場に崩れ落ちる。あれ?なんか、意識が...。





〈side ビアンカ〉

急にリューが倒れる。だから、あれほど言ったのに!

「りゅー君!?大丈夫!?しっかりシテ!」

「兄者!おい、兄者!どうしたんだ!?」

「魔力と気の使いすぎよ。それに加えて、限界まで魔力密度を上げて体につぎ込んだのよ?肉体的、精神的にも限界を迎えて、倒れるのも無理ないわ」

それにしても、あんなにリューが怒るなんて。一体何を見せたのよ、あの馬は。

「さあ?私にも分からん。人によって変わるからな、幻の内容は」

まったく、無責任にもほどがあるわ。もう帰りましょう。内容は後でリューに聞けばいいわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ