こんな目には合いたくない
グダグダです。何とかしないと。
翌日、朝早くに宿を引き払う。五右衛門さん達には、昨日挨拶を済ませてきた。彼らに会えなかったら、この大陸で生きていけたかどうか…。
コウヨウ達を受け取り、門へ向かう。フェイフェイさんは、ザクロに乗れて嬉しそうだ。
「こんな良い馬を買えるなんて、ついてたネ。ずっと乗っていけるヨ」
「そうですね。翠雲には、どんくらいで着くんですか?」
「エーット、三つの街を経由するヨ。どこも一週間くらいで次の街に着くから、大体一ヶ月くらいカナ?」
「けっこうかかるのね。食料は大丈夫なの?」
「私は大丈夫ダヨ!いっぱい買ってキタ!」
「俺もちゃんと買ってるよ。そういえば、最近ビアンカは俺の血を飲んでないんじゃないか?大丈夫なのか?」
「え、ええ。大丈夫よ…。まだ、大丈夫…」
まだ大丈夫って、大丈夫じゃないじゃん。前は自分から、言ってきたのにな。騎士吸血鬼になってからだよな?存在進化で、心境の変化でもあったのかな?今日の夜に、飲ませとくか。
門から街を出る。もう白楼には来ないかもしれないから、目に焼き付けておこう。
そこから馬を走らせること、十数時間。日も暮れてきたので、キャンプをはることにする。フェイフェイさんが、泊まるところは任せろって言ってたけど、どうするんだろうか?
「フェイフェイさん。どうするんですか?」
「それは・・・こうするノ!」
タンタンタンっと軽く足で地面を叩く。すると、地面が盛り上がり石のかまくらが出来た。これなら、雨風はしのげそうだな。
「さあ、入って入っテ〜。毛布を敷けば、そこまで硬くないはずダヨ」
中は広い空洞になっており、寝台らしき台も出来ている。フェイフェイさんは、その台に毛布を敷いて寝転んでいる。
俺も毛布を敷いて、寝てみる。・・・うん、少し硬いけど寝れないほどじゃないな。
それから夕食を作り、食べながら見張りの順番を決める。夕食は、ご飯と漬け物と干し肉だ。ビアンカが水を出せるので、暖かいご飯が食べれる。
「それじゃあ、俺から見張りをしますね。次はビアンカ、最後にフェイフェイさんがしてください。三人なので、一人大体四時間くらいですかね?」
「私はそれでいいわよ。というか、私は一日二日寝なくても平気よ」
「私もそれでいいヨ。ちゃんと起こしてネ〜」
そうして、ビアンカとフェイフェイさんはかまくらに入っていった。さて、寝ないように気の操作でも練習してますか。警戒は、風の魔術で充分だしな。
それから四時間経ち、ビアンカが起きてきた。ふあー、眠いな…。
「おはよ、リュー。交代しましょ」
「そうだな。あ、その前に血を補給しとかなきゃな」
そう言うと、ビアンカが少し顔をしかめる。
「どうした?俺の血は、嫌いになっちゃったか?」
「そうじゃないの!リューの血は大好きよ!でも…」
「でも?」
「わ、私ってリューの血を飲んだら、少し変になるじゃない?あれを、リューに見られるのが嫌なの。恥ずかしいのよ…」
「恥ずかしい所なんてあるか?血を飲んだ後のビアンカは、艶っぽくて好きだぞ」
実際、目も蕩けて息も荒くなり、頬を赤く染めておねだりするビアンカには、グッとくるものがあるしな。いつもは冷静だしな、ビアンカは。
「そ、そう?それじゃあ、飲むわね?」
そう言って、首に噛み付いてくるビアンカ。血管に歯を立て、血を吸い出していく。
「ん…。うん、ちゅー…。ぺろぺろ、んちゅー…」
「うん…。ビアンカ、おいしい?」
「んん…。(コクコク)」
幸せそうに血を飲むビアンカの頭を撫でると、嬉しそうにギュッと強く抱きついてくる。ビアンカは抱っこエルフ。抱きついてると落ち着く、エルフなんだ。byリューテシア
一旦、口を離させる。ビアンカはキョトンとした顔で、俺を見上げる。
「ビアンカ。もっと飲みたい?」
「うん…。もっとちょうだい…。欲しいの、リューの血ぃ…」
「それなら、俺に頼もうか。ちゃんとしないとダメだよ?」
「うん…。リューの血液依存の私に、いっぱい血を飲ませてくださいぃ…。ダメになっちゃう、リューの血がないと私、ダメになっちゃうのぉ…」
耳まで真っ赤にして、涙目で俺におねだりするビアンカ。相変わらず、妙に艶っぽい。俺の血液依存って何だろうな…。
「うん、いいよ。いっぱい飲みな」
「ありがとぉ…。大好き、リューぅ…」
カプッと再び俺の首を噛むビアンカ。よしよし、ちゃんと言うことをきけてえらいな。
満足するまで血を飲んだビアンカは、見張りにつき俺はかまくらに入り寝た。案外、寝やすかった。
翌日、今日も馬を走らせているのだが…。
「へへへ、おい兄ちゃん。死にたくなきゃ、女と持ち物置いてきな」
「おい!あの娘、鬼族だぞ!奪っちまえば、死ぬまで犯し続けられるぜ!」
「あっちの金髪も、かなりの上玉だぞ。楽しめそうだ!」
野盗に絡まれてます。まあ、二人とも美人だしなー。
全部で十五人。隠れている奴は・・・いないみたいだな。なっとらんなー、最近の野党は。
「どうするの、リュー。振り切っちゃう?」
「殺っちゃって、賞金を貰おうヨ!あまり期待はできそうにないケド…」
「そうですね、殺っちゃいますか」
後腐れは、残したくない。下手に見逃して、後々復讐とかされたら面倒くさい。
「おい!こいつら、俺たちとやる気みたいだぜ!」
「ははは!そりゃあいい!殺して全部奪っちまおうぜ!」
もう勝った気でいる野党達。まあ、俺もやり合う気はない。一方的に殺すだけだ。
シャドーバインドで、全員拘束する。もちろん気バージョンだ。
「な、なんだこれ!クソ!動けねえ!」
「コラァ!外しやがれ!」
外せと言われて、外すような馬鹿がいるか。そのまま縄状の影を、首や関節にまわしていく。
「お、おい!何する気だ!やめろ!やめてくれぇ!」
「奪ったもんを、全部やるから!だから、殺さないでくれ!頼む!」
俺が何をしようとしているか気づいた奴もいたようで、口々に殺さないでくれと喚く。
「ここにいる奴の他に、お前たちの仲間はいるのか?」
「い、いねぇ!本当だ!」
「拠点はどこにある」
「ここから森の中をしばらく行ったところに、洞窟がある!そこだ!金庫の開け方は、扉の左隅を三回叩くことだ!こ、これでいいだろ!離してくれ!」
「うん、お疲れ様。それじゃあ」
「安心して、死にな。宝は俺たちが有効活用してやるよ」
「な!て、てめぇ。話が」
「クラッチ!」
ボキ、バキ、グギャ!
「「「「「ウガッ!」」」」」
一斉に縄が強い力で締められ、首や足、肩の骨を折る。本当は首だけでいいんだけど、まあ保険だ。ミスった時のな。
「誰もそんなこと言ったら、助けるなんて言ってないだろ。何、勘違いしてるんだか」
シャドーバインドを解くと、グタリと野党達が崩れ落ちる。折り忘れは・・・いないな。
「相変わらず、エグいことするわね。感心しないわよ」
「・・・好きなくせに…」
「べ、別に好きじゃないわよ!私が好きなのは、そういうことをしている時の、リューの表情なのよ!」
ビアンカ…。何言ってるか、自分でも分かってないんじゃないか?大丈夫か?
「りゅー君、容赦無いネー。もしかして、りゅー君って怒ったら怖イ?」
「・・・リューって、怒ったこと無いんじゃない?見たことないわよ」
「まあ、レアもお姉ちゃんもタマモも良い子だし。怒る必要がないんだよなー」
それじゃあ、野党のお宝を見に行こうか。どんくらいあるのかな?