贈り物
早速刀のステータスを見てみる。すると、奇妙なことが書いてあった。
銘 素刀
種類 打刀
値段 ただ
材料 正体不明
属性 なし
制作者 かみ☆さま
特殊能力 吸収成長
丈夫さ F
斬れ味 F
使いやすさ C
・・・はあ?正体不明?かみ☆さま?何がどうなっている!?
俺がフリーズしていると、さらに追い討ちがかかる。
『ちゃんと刀を受け取ってくれた?・・・大丈夫みたいだね』
「・・・部長!?」
どうして部長が!?接触はしないはずなのに!?って、思わず部長って言っちまった!ビアンカ達に怪しまれる!
『あ、他の人のことは問題ないよ。君の意識に直接話しかけてるから』
周りを見ると、真っ暗の空間だ。意識の中だから、景色もないか。
『いやー、災難だったね。ある程度の誤差は予想してたけど、まさか別の大陸にまで行くことになるなんて。こっちも大変だったんだよ』
「・・・どういうことですか?これも任務の一環じゃないんですか?」
『うん。この大陸まで君が英雄を育てる必要は無い。完全に予想外だよ』
そうなのか...。それじゃあ、どうして?
『こっちで、鋭意調査中だよ。まあ、君は気にしないでいいよ』
「そうですか。それでその、大変だったっていうのは?」
『リヴァイアサンが君を助けにいくって現界しようとするし、セラフィム様は神剣を送ろうとするし。宥めるのが大変だったよ」
「あー...。すみません」
『そんなことしたら、善悪のバランスが狂って邪神とか魔神とか送んなきゃいけなくなるって、分かってるはずなのにねー。過保護すぎると思うな』
俺の過保護も、この二人から来てるのかもな...。
『それで宥めたのは良かったんだけど、それならバランスを崩さないくらいの物を送れって言いだしてね。まあ、何かフォローは入れるつもりだんだけどね。それで、その刀を送ったってわけだ』
「そうですか。この刀は何なんですか?」
『それはね、武器や鉱石、魔獣の素材を吸収して成長する刀なんだよ!成長に合わせて、いろんな能力が付与されていくんだ』
「へー、進化する武器ですか。・・・燃えますね!」
『燃えるでしょ!自分で強化するなら、ギリギリOKだし。それじゃあ、頑張って強くしてねー』
そう言って、部長の声は聞こえなくなり代わりに街のざわめきが聞こえてきた。
「リュー、大丈夫?ぼーっとしてたけど」
「ああ、大丈夫だよ。それじゃあ、怪を倒しにいこうか」
「そうね。早くお金を貯めなきゃね」
街の外に出ていく。昨日の森はけっこう遠いようなので、周りの草原で怪を探すことにする。
「リュー、いたわよ」
「あれかー。ステップウルフみたいだな」
ステップウルフは集団で狩りをする、草原に生息する狼型の魔獣だ。一体の戦力はそこまで強くないが、狼同士の連携が脅威だ。うちの大陸では、Dランクくらいの冒険者が相手する魔獣なんだけど...。
「なんだか妙に痩せてるな」
「あれは餓狼っていうらしいわよ。この前のゴブリンもどき、餓鬼より少し強いくらいですって」
餓鬼に餓狼、ここは食べ物が少ないのか?
「それより、こんな魔獣が街の近くにいるってどういうことよ。危ないじゃない!」
「白楼は冒険者の街だからな。コイツら程度負ける奴じゃ、あそこでもやってけないってことだろ。それに商人とかはこの街に来るにあたって、討人を護衛に雇うだろ。護衛依頼みたいな感じだよ。だから、問題ないんじゃないか?」
「確かに、そう言われてみればそうね。ステップウルフはDランクの冒険者なら、相当数がいなきゃ問題ないしね。護衛だって一人前じゃなきゃ、受けられないし」
「そういうこと。それじゃあ、さっさと倒そうか」
「その刀、使えるの?」
「うーん、まだやめておこう。壊れたら嫌だし。とりあえず、殴って倒す」
「体術で?出来るの?」
「まあ、見てろって。というかビアンカに体術を教えてるのは、俺だろう...」
餓狼は二匹。狩りをする為の編成じゃないな。偵察かなにかかな?
身体強化は魔力で行い、拳・肘・腰から下は気で強化する。この前刃が通らなかったのも、気で強化していなかったからだろう。怪は常時、気で強化してるのだろうな。
「ビアンカは待ってて。ステップウルフと同じ強さとは限らないし。二匹なら、俺一人で問題ない」
「分かったわ。気をつけてね」
餓狼達の方に向かっていく。餓狼達は俺に気づいたようで、左右から俺に走ってくる。挟撃する気か。
「発!」
噛み付こうとしてくる右の狼を、右手でぶん殴る。餓狼は首を捩じ曲げて、絶命した。
「グルルゥ...」
左から迫っていた餓狼は、片割れが殺されたのを見て、下がって様子を見ている。突っ込んでこなかったのは良い選択だが、格上相手には通用しないぞ。
「そいやー」
右足に気を溜め、足を振り抜くと同時に放出。一閃の気の刃が餓狼目がけて飛んでいき、胴体を泣き別れさせた。
「ふう。久しぶりの徒手での戦闘だったけど、思ったより体は動いてくれたな」
餓狼の死骸を回収して、一番大きい牙を抜いていく。これを組合で見せたら、報酬をくれるらしい。
「ビアンカ、終わったぞ」
「なんで剣もないのに、そんなに強いのよ...」
「合間合間に訓練してたんだよ。時間はあったしな」
刀が使い物になるまでは、徒手格闘を主体にしていこう。勘も取り戻したいし。
さて、それじゃあ吸収させますか。どうすればいいんだろう?
とりあえず刀を向けてみる。すると、死骸が光の粒子となって刀に吸い込まれていった。
「ちょ!なにその剣!どうなってるの!?」
「剣じゃなくて、刀な。どうやら魔獣を吸収して成長するみたいだぞ」
「・・・それって、魔獣なんじゃないの?成長するなんて...」
「うーん、大丈夫だと思うけど...」
神様が造ったんだし。・・・もう一回、ステータスを覗いとこ。
銘 素刀
種類 打刀
値段 ただ
材料 正体不明
属性 なし
制作者 かみ☆さま
特殊能力 吸収成長
成長値 6/30
成長値か。これが上限一杯になったら、進化するのかな?餓狼は3点か。残り8匹。
「それじゃあ、狩りを続けようか。出来れば、あと八匹は倒したい。それで、この刀が進化すると思うから」
「そうなの?・・・まあ、リューがそう言うならそうなんでしょうね。それじゃあ、さっさと探しましょう」
その後、四匹の群れを運良く二回発見発見することが出来た。その結果
「うわ!」
「きゃ!」
刀が一瞬激しく輝き、光が収まると少し立派になった刀が佇んでいた。鞘は狼の皮が貼付けられている。刀身は骨で出来ている。
銘 狼骨刀
種類 打刀
値段 ただ
材料 餓狼の骨
属性 なし
制作者 かみ☆さま
特殊能力 吸収成長
成長値 0/60
丈夫さ E
斬れ味 F
使いやすさ C
「餓狼の骨で出来た刀か…。何で骨?」
「骨の刀って、刃こぼれし易そうね。今度は金属とかを吸収させたら?」
「そうだなー。村正さんに、分けてもらえないかな?」
「金属より硬い魔獣だっているわよ。そういうのも、探しましょうか」
もっと強くしないとな。目指せ、妖刀とか神刀とか怨刀!・・・刀って物騒だよな。こうして書いてみると。