刀をゲットだぜ!
鬼仙人は、56話で登場します。
「ここが俺たちが拠点にしている討人の街、白楼だ!」
あれから数時間経って、もう夕方。俺たちは、大きな塀に囲まれた城下町の門の前に着いた。街の真ん中には大きな純白の城がある。白鷺城みたいだな。
「討人の街って、どういうことですか?」
「ここには、討人組合の本部があるんだ。討人の本部長は、そりゃあもう強いんだってよ」
「それに腕の良い鍛冶屋や娼館、奴隷商店とかの店が揃ってる。ここで一旗挙げようと、大勢の討人が集まるんだ」
「はー、そうなんですか」
「リューも武器を変えた方がいいと思うぞ。その剣は変わってる。この大陸では、刀が主流だからな」
「・・・そうですね。でも、先立つ資金がないですから、まずは組合にでも入って金を稼ぎます」
「中古の刀なら、そんなに高くないから奢ってやるよ!俺は、これでもけっこう名の知れた討人なんだぜ!」
「でも、悪いですよ。大丈夫です。これでも、体術も得意なんですよ」
「遠慮すんなって!服とか下着とか、宿屋だって必要だろ?お前が断っても、俺は奢るからな!」
「・・・分かりました。後で、絶対返しますからね」
「おーおー、頑張れよ」
はあ、迷惑かけるな。借りは倍にして返さなきゃ。
門から街に入ると、何とも言えない光景が広がっていた。
「おにーさぁ〜ん。うちに遊びに来なぁ〜い?特別なご奉仕しちゃうわよ〜♡」
「それより、こっちに来てよぉ〜。もっと気持ち良くしてア・ゲ・ル♪」
扇情的に着物を着崩したお姉さんたちが、チラシを片手に街に入る男性を誘惑しまくっている。うわー、娼館の客寄せか。これは・・・うん、何とも言えん。
「あ!僕、きれいな髪ー。私に触らせてくれる?」
「い、いや。遠慮してください」
俺の腕に体を絡ませ、胸を押し付けてくる黒髪のお姉さん。ビアンカの視線が怖いから、離れて下さい!マジで怖いから!
「そんな、連れないこと言わないで♪うわー、さらさらー!」
俺の切実な願いを無視して、頭を撫でてくるお姉さん。くそー、このままじゃ後が怖すぎる!何とかしないと!
「ちょ!本当にマズイんです!真面目に止めてください!」
「むー、固いわねー。私の髪を、あなたに白く染めて欲しいな♡」
「何言ってんですか!早く離れて下さい!」
「はあー、わかったわ。また今度ね、坊や♪」
そう言って、ようやく離れてくれたお姉さん。もうこりごりだよ…。
「ははは、まあ誰でも受けるこの街の洗礼だ。甘んじて受けろ」
「もっと早く言ってください…」
入るだけで、なんかすごい疲れた…。今日は、早く寝よう。
翌日、早速組合に行くことにした。
泊まった宿屋は、五右衛門さんのパーティーが泊まっている『宿木亭』という宿屋に、一緒に泊まらしてもらった。
昨日の夕食時に、パーティーメンバーを紹介してもらった。
槍を使う槍士の治五郎さん。有翼族で翼を持っており、空中戦も得意だ。真面目なお兄さんって感じの人だ。
弓と短剣を使う賞金稼ぎの小左衛門さん。罠や鍵の解除もお手の物。おちゃらけて見えるが、芯はしっかりしている人だ。
放出系の気術、気導術を使う次郎兵衞さん。けっこう豪快な人だった。お肉を丸齧りしてたし。今度、気導術を教えてもらおう。
この三人と五右衛門さんを含めた四人で、いつも依頼を受けているのだという。俺の怪我を直してくれたのは、次郎兵衞さんらしい。お礼を言ったら
「何、困った時はお互い様だ!困ったことがあれば、何でも言えよ!」
いい人だった。こういう人が増えれば、戦争も少なくなるんだろうなー。
組合に登録したが、うちの国のギルドと、あまり変わらなかった。規約もほとんど一緒にだしな。違うところといえば、ランクの呼び方だけだろう。F〜Sが6〜0になっただけだ。0がS、6がFな。
五右衛門さんのパーティーは1級、Aランク相当のパーティーらしい。強いんだな、五右衛門さん達。
あと、報酬かな?こちらでは、怪を倒して素材を持っていったら、倒した分だけ報酬をくれるようだ。
登録を終えた俺たちは、装備を買いに行くことにした。ここは五右衛門さんの奢りだ。
「こら、リュー!どうして古着屋に行こうとするんだ!」
「少しでも安い方が、良いじゃないですか。下着はちゃんと新品を買います」
何故か反対されるが、それを押し切って服を買ってくる。・・・案外、洋服っぽいのもあったので、それにしておく。何でも、貴族様が趣味で作ったものらしい。部屋着は甚兵を買っておいた。ビアンカも普段着は洋服っぽいもの、部屋着は浴衣だ。
下着はパンツっぽい物を、ふんどしもあったけど試す勇気はない。履かないって選択肢もあるんだが、ビアンカに拒否られた。
次は刀だな!これが一番楽しみだ!
「どこか、良い武器屋を知ってるんですか?」
「ああ、ほらあそこだぞ」
五右衛門さんが指差したのは、村正武具商店という店だ。・・・村正か。この世界に家康公はいないよな?
五右衛門さんに続いて、店内に入る。様々な武器が雑然と、入り乱れて箱の中に収まっている。
「村正ー、いるかー?」
「・・・おお、久しぶりだな五右衛門。俺が鍛えた太刀を、もう刃毀れさせたのか?」
奥から出て来たのは、ムキムキの禿のおっさんだ。なぜか上裸。
「そうじゃない。こいつの刀を見繕って欲しいんだよ」
「・・・人助けなら、お断りだ。慈善事業じゃないんでね。金を持って来たら、相談くらいにはのってやるよ」
そう言って、奥に下がっていく村正さん。当然の反応かな。
「おい、村正!あー...。すまないな、悪い奴じゃないんだが」
「いえ、店主の村正さんがダメって言うんなら、しょうがないです。武器は自分でお金を貯めて、買いますよ」
さて、これで目をつけられるかもしれないが、しょうがない。今は、自分の拳と気術で切り抜けよう。
そう思って、店を出ようとしたら
「待て。これを持っていけ」
村正さんが、何かを投げてきた。受け取ってみると、一振りの刀だった。
「そいつは前にただでいいから、受け取って欲しいと言われていた刀だ。状態はかなり悪いが、ただでやれるのはそれくらいだ。手入れすれば、金が貯まるまでくらいなら使えるだろ」
刃を見てみると、刃こぼれが酷く所々錆びていた。俺、手入れの仕方知らないんだけど…。
「・・・俺がやってやる。少し待っていろ」
刀を持って、下がっていく村正さん。俺が、手入れを出来ると思っていたようだ。・・・覚えとかなきゃ。
しばらくして、再び村正さんがやってきて、俺に刀を渡した。
「ありがとうございます。譲っていただいて」
「勘違いするな。刀を捨てるのがもったいないから、それならお前に使ってもらおうと思っただけだ」
ツンデレだ!男のツンデレとか誰得!?・・・恩人にこれはない。どうもすいません!
「そうですか。それでは有り難く受け取ります」
「さっさと新しい刀を買えよ。少しは安くしてやる」
こうして俺は、刀を手に入れた。後でステータスを見ておこう。