何処かで見たことがある設定
えー、公正なアンケートの結果、ヒロインは2番、鬼仙術師に決定いたしました。
アンケートに答えてくださってありがとうございます。
今後も実施するかもしれないので、その時はまたよろしくお願いします。
がた、がたっという揺れによって、目が覚める。・・・どうやら馬車の上にいるようだ。
頭の下には、何か柔らかいものがしいてある。プニプニしていて、ムニムニだ。いい気持ちだな...。
そういえば、何か大変なことがあったんだよなー...。何だっけ・・・そうだ!別の大陸に転移したんだった!
ガバッと跳ね起きると、ムニッとした物が顔に当たる。何だこれ?
「リュー...。わざとなの?ねえ、わざとなの?」
顔を上げると、ビアンカがムスッとした顔で座っていた。俺はビアンカの膝枕で寝ていて、突然起きたから胸に頭から突っ込んでしまったみたいだ。
「おお、起きたか!ずいぶん深く眠っていたが、怪我は大丈夫か?」
「怪我?うーん・・・どこも痛くないですよ?」
俺たちの反対の席には、大きな太刀を持った鎧をきた巨漢だ。・・・太刀!?
「ちょっと、見せてください!!」
「お、おお?別にいいが、丁寧に扱ってくれよ?」
ひったくるようにして、太刀を手に取り鞘から少し抜く。
綺麗な湾れ刃(山と山の間隔が大きな刃文のこと)が広がり、玉鋼の刀身が光を反射して輝いている。・・・いい。
やっぱりいいな、刀は!こうなんというか、妖しい魅力というか不思議と引き寄せられるよな!日本男子なら!
「ははは、ずいぶんと気に入ったようだな。お前達の大陸には、こういう刀はないのか?」
「ええ、全くないです。最初は探したんですが、全然見つからなくて。良い刀ですね」
「分かるか!?いやー、やっぱり刀の美しさはどの大陸でも共通だな!」
まったくだ。この世界で刀が見れるとはな!もう、諦めてたのに。
・・・って、今はそれどころじゃない!ここどこだよ!?なんで、馬車の上にいるんだ!?
「落ち着いて、リュー。彼はゴ、ゴエモン?よ。リューが襲われた、地竜を討伐しに来た討人ですって」
ゴエモン・・・五右衛門か?それと、討人って?
「この大陸の冒険者みたいなものよ。森で彼らと会って、彼らの拠点まで乗せていってもらってるの」
「そうなんですか...。ありがとうございます、助けていただいて」
「そんなに畏まらないでくれ。元はと言えば、俺たちが逃がしたあの竜のせいだからな。治療はしておいたが、本当に大丈夫か?正面から衝突していたが」
「大丈夫です。治療してくれた方に、お礼を言いたいんですけど」
「街に着いたらな。まあ、後で会わしてやる。それより」
「リュー達は別の大陸から来たんで、間違いないんだな?」
「・・・さっきまでは他の可能性も疑ってましたが、五右衛門さんを見て確信しました。ここは俺たちが知っている大陸ではありません」
「そうか。災難だったな。こんなことになるなんて」
「まったくですよ。魔獣に剣は通らないいし、魔術は効かないし散々です」
「ふむ、魔術か...。詳しく聞かせてもらっていいか?」
「いいですよ。まず魔術とは...」
三十分ほど魔術の説明をする。魔素濃度が濃いところに済んでいる魔獣は、魔術に対して高い耐性を持っていることを伝えるのも、忘れない。
「・・・というわけです。魔術の効かない理由は推測出来るんですけど、剣が通らなかったのが全然分からなくて...」
「その理由は俺が知っていると思う。リューが言った魔獣とは、あの地竜などを指すんだな?」
「はい、そうです」
「今度は俺の番だな。まず、この大陸には怪異というものがいる。人に害なすものだ。あの、地竜とかな」
「そんな怪異を退治するのが、俺たち討人の役目だ。まあ、他にもあるけどな」
「そんな怪異だが、コイツらには普通の攻撃は通用しない。『気術』というものを使わなければ、致命傷は与えられないんだ」
「気術、ですか?それは一体どういうもので?」
「リューの言う魔力は、空気中から魔素を吸収して得るんだよな?』
「はい。それで気術は」
「気術は体内に眠っている力、気を外に放出する技術だ。魔術とは正反対だな」
ふーん。魔術は自然エネルギーを、気術は体内エネルギーを使用するんだな。空気中に大量にある魔素からこそ、発達した技術だな。
「それで、リュー達は元の大陸に帰りたいか?」
「なんです、突然。そりゃ、帰りたいに決まってるじゃないですか。出来れば、二年以内に」
「そうね。もし、帰れなかった時を想像したら・・・寒気がするわ」
レア達、もう口も聞いてくれないかもしれない...。出来るだけ早く帰らなきゃ!
「そうか...。それなら、気術を使えるようにならないとな。話はそれからだ」
まあ、戻る手がかりを探すにも戦えたほうがいいしな。この大陸では、魔術のことは忘れてたほうがいいな。
「気を目覚めさせるには、他人に気を体に通してもらう必要がある、俺がやるがいいか?」
「もちろんです。信用しています」
「ちょっと、待って!私が先にやるわ。いいでしょ、リュー?」
「駄目だ。ビアンカより俺の方が丈夫だ。それに、ビアンカには俺がやる」
「大丈夫か?気の操作はけっこう難しいんだが」
「まあ、実際に触れてみたら分かりますよ。それじゃあ、お願いします」
「よし、いくぞ!」
五右衛門さんは俺の胸の真ん中、心臓の真上に手を当てる。そして、腕に力を込め
「ふん!」
ドクン!
「ぐっ!う、ぐああ!」
心臓から体中に、電流が走る。それに伴って、激痛が体を支配する。こ、これは...!師匠に力を無理矢理大きくしてもらった時みたいだ...!
「ふう、これでリューの体に眠っている気が、目覚めたはずだ。大丈夫か?」
「はぁ、はぁ。はい、何とか」
「よし。体の中にある力は分かるか?それが気だ。とりあえず手にだしてみろ」
手に体にある、気を集中させる。すると、ぽんっと火の球がでてきた。やっぱり、これって...。
「んな!?いきなり放出系の属性付与!?初心者ってもんじゃないぞ!」
「ビアンカ、気を送るからこっち来て」
ビアンカの胸に手を当て、気を送ってみる。出来るだけ、弱めにな。
「ん...。・・・これって」
「ああ。魔力の操作とほとんど同じだ。どちらも体の中に入っている力を、操作するってことだからかな?」
「そうだと思うわ。・・・ふふふ、こういう状況じゃなきゃ気が済むまで研究してたわ」
「おいおい、今はやめてくれよ?それより、五右衛門さん」
「お、おう!何だ?」
「気術を詳しく教えて下さい。どんなことが出来るんですか?」
「できることか。簡単に分類すれば、三つに分けることが出来る」
「自らの体や武器を強化する強化系、気を体外に出して撃ちだす放出系、気で武器や式神を造る創造系だ」
強化・放出・創造か。前の二つは魔術にもあるが、創造系ってのはないな。
「創造系で出来る、武器や式神を造るってどういうことですか?」
「よりによって創造系か。これは、難しいぞ」
「式神は、偵察や伝令に使うものだ。一応、戦闘式神もいるけどかなり高位の術だな」
「武器の創造は、まあそのまんまだ。人によって出来る武器は決まっているらしい。まあ、造るのも維持するのも気と技術が相当必要だから、滅多に使う人はいないけどな」
「街に着いたら、指南書でも読んでみればいい。魔術とやり方が似てるなら、上達も早いだろ」
「そうですね。気の総量は・・・うん、まあまあかな?」
魔力量の半分くらいしかないけどね。ビアンカもそんくらいのようだ。
そうして、馬車は五右衛門さんが拠点にしている街に進んでいった。