驚愕
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「・・・!・・・て!・・・ー!」
誰かの声が聞こえる。俺を呼んでいるみたいだ。
「・・・ュー!・・・きなさい!・・・起きろっていってんでしょ!」
「痛!うわ!ビアンカ!?」
頭を殴られて、飛び起きる。隣にはビアンカが座っており、俺を心配そうに見ている。
「リュー!ようやく、起きたのね!大丈夫、痛いところとかない!?」
「だ、大丈夫だよ。それよりも・・・ここどこだ?」
俺たちは、チロルの山の洞窟にいたはずだ。決して、こんな薄暗い不気味な森なんかじゃない。
「分からないわ。恐らく、転移させられたんだと思う」
「転移?どうしてそんなことに?」
「あそこの遺跡の、防衛機能が働いたんだと思う。正規の手順で開けなかったら、こうなるようにされてたんじゃないかしら?」
なるほど。古代文明ってのも、あながち間違いじゃなかったみたいだな。
「それにしても、一体どこまで飛ばされたんだか。王国内だったら、いいんだけどな」
「・・・これ、見て」
そう言ってビアンカが差し出してきたのは、木の皮だ。どうしてこんなものを?
「魔術で燃やしてみてくれる?」
言われた通りに、ファイアで燃やそうとしてみる。が、いつもならすぐに燃え上がるのに、なかなか燃えてくれない
五分程火を当て続けたら、ようやく燃えた。
「・・・燃えない。魔術は発動してるのに」
「ええ。水や氷で穴を空けようとしても、効かなかったわ。この結果から」
「ここは、私たちのいた大陸でない可能性が高いわ」
衝撃の事実に、思わず呆然としてしまう。別の大陸?この世界に、俺たちのいたところ以外の大陸なんてあるのか?
「一般にはあまり広まってないけど、あるわ。私が宮廷魔術師の頃には、発見されてたもの。海には、魔獣がウヨウヨいるから行くことは出来ないけどね」
「それより、なんで魔術の効きが悪いんだ?魔獣もこれじゃあ、魔術を戦闘に使えないぞ」
「空気中の魔素の濃度が、私たちの大陸に比べてかなり高いんでしょう。幸い、強化魔術は自分の体に使うものだから、近接戦闘はなんとか出来るでしょうね」
そうか...。それなら、一安心だな。・・・ん?なんでそんなこと分かるんだ?
「そりゃ、実際にやってみたに決まってるじゃない。ほら、あの木」
ビアンカが指差した木には、五本の斬り傷が出来ていた。
「このとおり、筋力など身体系に関わる強化は大丈夫そうだけど、斬れ味とかは駄目そうだったわ」
ふーむ。要は『対外的な魔術は使えない。けど、対内的な魔術はOK』ってもんか。得意な魔術が使えないってのは、ちとキツいなー。
「けどさ、ダンジョンの中とか秘境とかは、こういうふうに魔素濃度が高いとこがあるんだろ?そういう場所って可能性はないのか?」
「無くはないけど、可能性は低いわね。そんな危険なとこにいたら、私たちなんてもう魔獣に食べられてるわよ」
「・・・そうか。とりあえず、この森を出よう。そして、街かどこかに行こう。まだ、言葉も通貨も通じるか分からないしな」
「それで、言葉が通じなかったらどうするのよ...」
「そのときは、そのときだよ。いざとなったら、フライで逃げよう」
そうして、森を脱出するべく歩き出した。
北は森が濃くなってきていたので、南に進むこと三十分。未だに森から出られていない。
「ふう。けっこう深いところに飛ばされたみたいだな」
「そうね。まだ魔獣が出てきてないのが、少し気になるわね…」
「あまり戦闘はしたくないけどな。魔術も使えんし」
二人で話しながら歩いていく。呑気に見えるかもしれないが、こうでもしないと、不安に支配される。そうなったら、後は死ぬだけだ。
そうして歩き続けていたら、左の方から嫌な感じがする。これは・・・殺気か。
「ビアンカ。魔獣がくる。後ろに注意しながら、隠れてて」
「・・・分かったわ。ごめんなさい、役立たずで…」
うなだれるビアンカ。なんだ、そんなこと気にしてたのか。
「そんなことない。ビアンカには助けられてるよ。一緒にいてくれるだけで、俺は嬉しい」
「ありがとう。街に着いたら、訓練してね。ちゃんと戦えるようになりたい」
「おう。任せとけ」
剣を抜いて、青眼に構える。どんな奴が出てくるんだ?
草むらから出てきたのは、
「「ぎゃ、ぎゃ!」」
棍棒を持った、小さい角を持った痩せて小さい小男だ。この醜い顔は・・・ゴブリンか!?うちの大陸のは、もっと太ってるぞ!?
「「ぎゃぎゃぎゃー!」」
同時に殴りかかってくるゴブリン?達。スペックは、ゴブリンと変わらないみたいだ。身体強化を施して、ゴブリン?の首を斬り飛ばそうと、剣を振る。が、
ガツン!
「んな!?」
首に剣は命中したが、刃が通らない!?何だ、何が起こった!?
俺が剣で斬ろうとしたゴブリン?は、首を押さえて悶えている。鉄の棒で首を殴ったようなもんだから、まったく効果がないわけじゃないか。
もう一体のゴブリンを吹き飛ばして、ビアンカの元まで下がる。
「ビアンカ、こいつら刃が通らない!ここは逃げよう!」
「どういうこと!?それじゃあ、私の爪も…」
「分からないけど、たぶん効かないだろう。あいつらが、悶えているうちに行くぞ!」
「え、ええ。分かったわ。検証は後ね」
そうして、俺たちは逃げ出した。ここの魔獣は、全部こんな風なのか!?
ゴブリン?たちから逃げ出た後は、隠れながら森を進んでいった。風の魔術で臭いとかを消しながらだ。効くかどうか分かんないけどな。
そんな俺たちは今、草むらに隠れている。理由は言わずもがな、だろう。
「グルルゥ...」
目の前には、体に赤い筋が入っている大熊。目も真っ赤に血走っている。バーサクしてるなー。
しばらく熊は彷徨いていたが、来た道を戻っていった。ふう、危なかった...。
「こんなのがずっと続くと思ってたら、気が滅入るわ...」
「まあまあ、もう大分出口に近づいてきてると思うよ?」
「どうしてそんなこと分かるの?そんな兆候なかったじゃない」
「熊が来た道を戻ってったからだよ。普通、もっと進んでいったと思うだろ?ここから先に、進みたくないからだよ」
熊は基本臆病なはずだからな。・・・牛が肉食だったから、不安だけど。
「そういうものかしら?まあ、どっちでも良いわ。さっさと進みましょ」
そう言って、まっすぐ進んでいくビアンカ。大分参ってるのか、声に棘が目立つ。見知らぬ土地に放り出されたんだから、仕方ないか。
ビアンカを追いかけようと、足を踏み出した瞬間
「グルオオオオオォォォ!!!」
後ろから大きな咆哮とともに、地響きが轟く。だんだん俺たちの方に近づいて来てるな...。
突然、木が横から吹き飛んでくる。そこから現れたのは
「グルアアアァァ!!!」
体中、斬り傷だらけの羽のない地竜だ。血だらけで満身創痍、ところどころ焦げており煙を出している。冒険者に追われて来たのか!?
「グギャアアァァーー!!!」
地竜が俺を敵と認識したのか、突進してきた!周りの木が邪魔で、避けられない!
トネールスマッシャーをぶっ放すが、少し怯んだだけで止まることは無い。全力で体を硬化し、衝撃に備える。
強烈な衝撃と激痛が襲う。体が宙に浮き、後ろに飛んでいき、だんだん意識が遠のいていく。
「おい、ここにいたぞ!誰かが襲われている!」
誰かが来たようだ。地竜の断末魔が聞こえるから、冒険者かな?
そんなことを思いながら、意識は底へと沈んでいった。