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羽無し

学院編ももうすぐ終わります。


夕食の後、ラルカさんの部屋に向かう。話って何だろうなー?

ラルカさんの部屋の前についた。とりあえず、ノックする。

「ラルカさーん。リューテシアです」

「入っていいわよ」

部屋の中に入る。そこには、何故かエリザさんまでいた。

「何でエリザさんがいるんですか?」

「そうよ。エリザはいなくても大丈夫よ」

「あら。これからレアのことを話すんでしょ?それなら私も関係あるわ」

「はあ、そうですか。まあ、いいです。それで、レアの話って何ですか?」

この人は言うこと聞かなそうだし、構ってちゃんには無視(スルー)が基本だね!

「レアちゃんだけじゃなくて、羽無しに関わることなんだけどね」

羽無しに?元老がやったってやつか?

「あら、知ってたの?元老院の馬鹿が広めたってこと」

「確か、グルドがレアと戦った時に、元老が何とかって言ってましたよ」

「若ですか...。まあ、いいです。それでは、何故羽無しなんていう伝承が出来たか説明します」

「ちょっと待ってください。何でそれを俺に説明するんですか?レアに言えば良いじゃないですか」

俺は関係ないよな。レアがいるってだけで。

「それはね、レアちゃんがいるってことだけじゃなくて、リュー君自身にも気をつけてほしいの」

「気をつけるって、元老院にですか?」

「ええ。元老院は、ここ十年で権力を急速に失っているの。それで」

「リュー君みたいに強い人が、取り込まれたりしたらまた息を吹き返しちゃうからね」

エリザさんの言葉に、まあ納得はする。

「何で権力を失っているんですか?羽無しっていう伝承を作れるくらい、力があったんですよね?」

「流石にやりすぎてね。それで、院の権力を縮小しようってことになったの」

やりすぎたって何をしてたんだ?

「えーっと、横領・謀殺・強姦とか?要は私利私欲を満たしてるのよ」

「はあ、そうっすか」

ここにきて、テンプレか。分かりやすい敵だなぁ。

「で?何で元老院は羽無しを作ったんですか?」

「昔から竜人族で羽が無い子は、能力が高かったの。それに突出した能力を持ってたりね」

「それで、昔の元老院は焦ったの。『このままじゃ羽が無い竜人が増えたら、自分達の権力が無くなる!』ってね。羽無しの伝承が出来た時は元老院の最盛期だったの」

ふーん。まあ、当たり前だな。大金を持ってると疑心暗鬼に陥る、みたいな?

「それで、羽無しの伝承を作ったの。歴史的証拠を捏造したり、それの検証官を取り込んだりしてね」

「もともと、羽の無い竜人は数が少ないってこともあって、そうして羽無しの竜人は迫害されたの」

「けど、院の権力が失われるにしたがってこの伝承も薄れていったわ」

「それなら何でレアは捨てられたんですか?院の権力が失われてたんじゃ」

レアが捨てられたのは十一年前。そのころは院の権力は少ないし...。

十一年前?院の権力はここ十年で急速に縮まっている...。それって

「レアが捨てられたから、院の権力が縮まった?」

「リュー君もそう思うのね。私たちもレアちゃんが捨てられたのをきっかけに、権力が無くなっていったって考えているわ」

でも、どうして?たかが子どもが一人捨てられたくらいで、権力は失われないだろ。

「それが公爵の子だったらどう?」

「え?」

公爵?公爵って五等爵の第一位。この世界では王族の次に偉い貴族だよな?って

「レアが公爵の子だっていうんですか!?」

「状況からみて、その可能性が大きいと思っているわ。そういう事件もあったしね」

「そういう事件?」

「十一年前、ライジルト公爵の子が羽無しだって、院がその子を捕らえようとしたの。王族の反対を押し切ってね」

「でも、その子はいなかった。院は公爵が逃がしたんだって、糾弾したわ」

「でも、ちゃんとした羽無しがいるって証拠を残せなかった院も、公爵を愚弄したことで糾弾されたわ。この事件がきっかけで王は院の権力を縮めることにしたの」

「そうなんですか...」

レアが公爵の子だったとはな。

「それをレアには言わないんですか?」

「そうねぇ・・・リュー君はどうすれば良いと思う?」

「何で俺に聞くんですか...」

「リュー君がレアちゃんの保護者でしょ?」

そりゃそうだけど。

「レアの親御さんは今、どうしてるんですか?」

「ライジルト公爵は、羽無しを匿っていた容疑で辺境に飛ばされたはずよ。あくまで容疑だから、ひどい処罰にはなってないわ」

「そうですか。レアが戻ったら、公爵家に入るんですか?」

「そりゃあ、入るでしょ。数少ない公爵家の子どもなんだから」

やっぱそうなるよな。そうなると...。

「たぶん、レアは帝国には戻らないでしょう」

「どうして?」

「いやー。だって、公爵になったら俺と会えなくなっちゃうじゃないですか」

「・・・」

ラルカさんの目が冷めていく。視線に温度があるなら、とっくに絶対零度だ。やめて!そんな目で見ないで!ゾクゾクするじゃない!

「まあ、確かにそうね。レアちゃんは、リュー君にぞっこんだものね。自分で言うのはどうかと思うけど」

「想像してみればレアちゃん、絶対に行かないわね。自分で言うのはどうかと思うけど」

「俺にどうしろと...」

事実だよ、事実!

「リュー君はどう思ってるの?帝国にいって欲しい?」

「はい、行ってほしいです。レアはもっと大きな場所で、表舞台に立つべき存在ですから」

「そうね、私もそう思うわ。でも、どうやってレアちゃんをリュー君から引き離すの?」

「そうですね...」

前から暖めていた作戦を実行する時が来たか。ちょうどいい頃合いだしな。

「一応、案はあります」

「へえ、どんなの?」

「それは...」



ラルカさんとエリザさんにいける、と言ってもらったのでレアに院のことを話しにいく。シャネルちゃんとタマモにも聞いてもらう。強いしな、みんな。

ラルカさんに聞いたことを全部話す。

「・・・というわけで、レアはたぶん公爵の子だ」

「そうなんですか...。びっくりです」

「レアが公爵様の子ね...。実感が湧かないわ」

肝心のレアはというと

「ふーん。それがどうしたの?」

あんまり興味がないようだった。自分のことなのにねー。

「それで、リューは私にどうして欲しいの?」

「卒業したら帝国にいっt」

「やだ。リューと一緒にいる」

予想通りの反応をどうもありがとう。でも

「それは無理だなぁ...」

「どうして!?一緒にいてくれないの!?」

「俺は冒険者になるつもりだし」

「なら、私も冒険者になる!リューと一緒に旅するよ!」

レアが俺に詰め寄ってくる。レアの好意はすごい嬉しいし、助けてもらってるけどそろそろ俺の役目も終わりかな。

レア達は充分大きくなった。もう巣立ちの時だ。

「そういうことじゃないんだよ、レア」

「じゃあ、何で私と一緒にいてくれないの?私のこと、嫌い?」

「そんなことない。大好きだよ」

「なら、どうして」

泣きそうなレアの頭を撫でる。こうしてみると、昔のまんまだな。・・・俺がいるから、レア達は変われないんだろうな。

「俺は今月でこの学院を卒業するからね」

俺の初めての弟子で、大切な姉と妹達で、愛している人たち。

彼女達と少しの間、お別れだ。



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