ロキの実力〜魔術編〜
そして翌日。俺たちの教室に入ってきたのは、サン先生だけでなく
「これから彼らもこの教室で一緒に勉強します。仲良くしてくださいね」
「よろしく頼むぞ!俺のことは気軽にグルドと呼べ!」
「俺もロキって呼んでください」
王子相手に気軽に名前で呼ぶとか...。無理だろ、普通。みんなもガチガチだし。
「それでは授業を始めましょう」
緊張の中、授業は始まった。
昼休みになると、みんなこぞって食堂に直行した。クラスに残ったのは、王子組と俺たちだけだ。
「むう...。なぜ、俺らと一緒に昼食を食おうと思わないんだ」
「そりゃ、王子の前で粗相をしたらマズいからだろ」
「おお。確かリューだったな。だが俺はそんなこと気にしないぞ?」
「お前が気にしなくても、みんなは気にすんの。王になるなら、民の心も分かんないとダメだぞ」
「おう!心に刻んでおこう。それはそうとリュー、一緒に昼食を食べないか?」
「いいですけど、レアたちやロキも一緒ですよ。それでもいいですか?」
「飯は大勢で食べた方が上手いからな!むしろ、一緒に食ってくれ」
そういうわけで、王子たちと昼食を食べることになった。
食堂に行き、昼食を貰って席に着く。が
「何か視線が集まってるっすね」
「何故であろうな?」
「お前らがいるからだよ」
今注目の留学生が二人〜しかも紅蓮の魔術師付き〜がそろってるんだから、しょうがないっちゃしょうがないな。
「ふむ、ここの飯は上手いな!これから楽しみだ!」
「そうっすね。美味しいご飯を食べると、やる気が出るっす」
こいつら、全然気にしてないな...。慣れてるからか?まあ、俺も気にしない方向でいこう。
「そういえば二人はどんな授業を取ってるんだ?」
「俺は武術一択だ!魔術は使えん!」
「胸を張って言うなよ」
「俺は武術と魔術っす!先輩と一緒に勉強出来るっす!」
「俺と一緒かどうかは分からないぞ」
俺ってツッコミキャラだったっけ?コイツらといると、ツッコミしかしてないような気がする。
「俺らはこれから武術の授業だ。リューたちは魔術だったか?」
「うん。頑張ってね」
昼食を終えレアたちとグルドは武術、俺たちとロキは魔術の授業に別れた。
「魔術ってどんな授業なんすか?」
「今は魔術の改造をしてるよ」
「改造っすか?どういう風にすればいいんすか?」
「うーん...。言葉じゃ言いづらいから、実際にやってみた方がいいよ。お手本も見せるし」
「そうっすか。楽しみっす!」
「それより、その口調で固定するのか?」
「?変っすか?」
「いや...。ロキがそれでいいなら、いいよ」
俺は気にしない。気にしないぞ。気にしたら負けだ。
教室に着いた。そこには誰もいなかった。
「ここ、教室ですよね?何で誰もいないんすか?」
「魔術の授業は基本自習なんだよ。みんな先輩のとこに行ったり、図書館に行ったりしてるよ」
「そうなんすか。俺たちはどうするっすか?」
「先輩のとこに行くよ。いつも教わっている先輩がいるんだ」
「すごい人なんですよ!水の魔術を使うんです!」
「そうなんすか、楽しみっす!」
同じこと言ってるぞー。
三年の教室に着いた。教室に入ると
「あ!リュー君、こっちこっち!」
と俺を目敏く見つけたノエルさんが、俺に手招きをする。あの人、ずっと入り口を見張ってるんじゃないか?
「こんにちは、ノエル先輩」
「こんにちは、リュー君。あら?その子は...」
「初めまして。ロキと言います。これからよろしくお願いします」
後輩モードじゃなくて王子モードになった。初対面の相手だからかな?
「初めまして、ロキ王子。私はノエルと申します。以後お見知り置きを」
「敬語なんて止めてください。今の私は、ただの二年生のロキです。いつも通りの口調でお願いします」
「そうですか?それでは、いつも通りでいきますね。リュー君、課題は進んでる?」
「・・・」
「リュー君?」
「リューさん、大丈夫ですか!?」
「・・・は!驚きを通りこして固まってた!」
ノエルさん、慣れてやがる!けっこう身分が高い人なのかもな。でも、こんな人だしなー。
「リュー君、課題は進んでる?」
「はい。二つ目も終わりました。あ、まだ見せませんよ?後でです」
「そう、分かったわ。後で見せてね。タマモちゃん、宿題はやってきた?」
「はい!ちゃんとやってきました!」
「よろしい♪それじゃあ、結果を見せてくれる?」
「はい!リューさんも見ててください!」
「分かった。というか宿題って何?」
「訓練所に行ったら教えてあげるわ」
訓練所に行くのか。タマモも自分で考えたのかな?
訓練所に着くと、ノエルさんが宿題について教えてくれた。
「タマモちゃんにはね、課題に合格出来なくても良いから、改造魔術を一つ考えてくるように宿題を出したの」
「考えることが大切なんですよね」
「あら、気づいてたの?」
「いえ。気づいてはいませんけど、そういうことを聞いたことがあります」
「ちぇ、驚かせようと思ったのに」
「まあ、タマモが考えてきたのを見ましょう。それで驚くかもしれませんよ?」
タマモはどういう風にやったのかな?
「それじゃあいきます!エクスプロージョン!」
爆破の魔術を発動させる。だが、爆発しないでオレンジ色の丸い魔力の塊が出来た。
「もっといきますよ!エクスプロージョン、エクスプロージョン!」
四回爆破の魔術を詠唱して、計四個のオレンジ色の魔力の塊が出来た。
「ふー...。リューさん、あれに魔術をぶつけてください」
「ん、分かった。そい」
ダークボールを撃つ。闇の玉が魔力の塊に当たると
ドーーン!ドン!ドン!ドーーン!
魔力の塊が爆発し、そのまま連鎖して他の塊も爆発した。ふーむ...。
「魔力を固めて固定したのか。何かが当たると爆発する仕組みかな?罠に使えそうだけど、魔力だから光っているとこを直さなきゃな」
「爆発する条件を、魔術が発動したらじゃなくて外部からの衝撃に変えたのね。どのくらいの衝撃で爆発するのかしら?」
ノエルさんとあの魔術について考察していると
「ふーむ。まあ、良いじゃろ。タマモも一つ課題達成じゃ。あの魔術の名はどうする?」
「そうですね...。リューさんが決めてくれますか?」
「え、俺!?そうだな・・・鬼爆っていうのはどう?」
タマモの魔術なので、和風テイストで。
「すっごくかっこいいです!それにします!」
「ふふふ、良かったわねタマモちゃん」
「リューの考える名前はこうなんと言うか、昔を思い出すの...」
「昔ですか?」
「ああ。若気の至りじゃ...」
それって黒歴史ってことか?どんだけ恥ずかしい名前をつけたんだ...。
「それは置いといて、そっちの坊主はどうなんじゃ?」
アルバス先生がロキに話を振る。そういえば、ロキってどんくらい魔術が使えるんだ?
「そうですね...。こんなのはどうですか?」
ロキは手をかざし
「ライトスフィア!」
と唱えた。
すると、光っている正八面体の物体が現れた。これはなんだろう?
「先輩、これの前に立ってください」
言われた通りに正八面体の前に立つ。すると
パン!
「おっと」
光の球を撃ってきたので、抵抗をかけた手で迎撃する。
「さすがっすね。ちゃんと反応するなんて。分かってたんすか?」
「うーん、何と無くな」
「ふむ。ライトボールをいくつも凝縮して、敵性体が来た時に撃ちだすようにしたのか、これは合格じゃ」
「本当ですか!?やった!」
おお!ロキも一つ出来たようだな。よかった、よかった。
その後は、ノエルさんと一緒に改造について考えていた。俺もさっさと終わらすかな。