試し撃ち
分割しました。
人が多い。アランの影が薄い...。
「ちょ、おま!?」
え?なんでロキがあそこにいんの?ヴァイス皇国第一王子?え?え?
「リュー、落ち着いて!驚くいてるのは分かるけど、とりあえず深呼吸!」
シャネルちゃんに言われて、「スーハー」と深呼吸をする。ふー、ビックリした。
「リューさんがあんなに驚くなんて、珍しいですね。皇国の王子を見て驚いてましたけど、お知り合いですか?」
「いやー。知り合いっちゃあ知り合いだけど...。昔会ったことがあってね」
「あ!五歳のとき、王都でリューが連れてきてた男の子?王子だったんだー」
いや、王子だったんだーって軽いなレア。
こちらの驚いている間に、ロキの自己紹介はどんどん進む。
「俺の国でも、この学院の名声は聞いています。ここで学ぶことが出来て光栄です」
「まだまだ至らないところがあると思いますが、これからよろしくお願いします」
パチパチパチと拍手の音が響く。本当にロキか?全然違うじゃんか。
「それではこれで解散です。彼らは明日から授業に参加しますよ」
こうして驚きに満ちた留学生の紹介が終わった、
「いやー、まさかロキが王子だったとはなー」
森で蜘蛛の攻撃を避けながら、ビアンカに話しかける。
「そうね。商人の子だと思ってたわ」
氷のつぶてを撃ちだしながら、ビアンカが答える。氷は虫の頭に命中し、虫の頭を砕いた。
ちなみにこの虫の名前は斑麻痺蜘蛛。黄色い斑模様が特徴のけっこう大きい蜘蛛だ。苦手な人が見たら、卒倒ものだな。
ほかにも糸を吐くのと、毒を吐くのがいる。斑糸蜘蛛と斑毒蜘蛛って名前だ。
「よし、毒袋だけ取り出すか」
「そうね。そういえば、新しい魔術を使えるようになったようね」
毒袋を取ってたら、いきなりきりだされた。
「はぁ。誰に聞いたの?」
「あのお爺さんに直接聞いたわよ。かなり凄いみたいじゃない」
「見せるのはいいけど、訓練所じゃなきゃだめだよ。危ないから」
「分かったわ。今日はもう上がりましょ」
「うん。まだ存在進化しそうにない?」
「もう少しね。ほら、早く早く」
ずいぶん急かすな。そんなに見たいのか?
森から戻って素材を売っぱらった後、訓練所に向かった。途中でレアたちに会い、一緒に来ている。そこには
「く!また勝てなかった!」
「私に勝とうなんて、一昨年きやがれですよ」
グルド王子とラルカさんがいた。グルド王子は深紅の短髪の少年だ。ラルカさんは橙色の髪を上でまとめている美人騎士様だ。王子は膝をついているけど。何やってんだ?
「む?誰だお前らは」
あ、気づかれた。
「訓練所を使いにきた。生徒さんでしょう。ほら、そこにいたら邪魔ですよ」
「むう、それはすまなかった。何をするのだ?」
「え?えっと、魔術の試し撃ちですけど」
「ほう!試し撃ちか!この学院のレベルを計るには、ちょうどいいな。共に見せてもらってもよいか?」
「べ、別にいいですけど。危ないので前に出ないでくださいね」
うむと返事をして下がる王子様。
「すみません、うちの王子が迷惑をかけて。邪魔ならどかしますけど」
「平気です。でも、本当に危ないので絶対前に出さないでください」
「分かりました。ありがとうございます」
みんなが下がって俺を見る。さて、それじゃあ
「あら、リュー君じゃない。何をしているの?」
「え、エリザさん」
エリザさんが現れた!リューテシアは逃げられない!
「そんなに嫌そうな顔しないでよ。いくら私でも傷つくわよ?」
「すいません。つい癖で」
癖でこんな顔をするのも、充分ひどいけどな。
「それで、何してるの?」
「魔術の試し撃ちです。新しいのを覚えたので」
「ふーん。私も見ていい?」
「いいですけど...。危ないので前にでないでくださいね?」
「分かっているわよ」
エリザさんが離れていく。それじゃあ、改めて
「あれ?みなさん何をしているんですか?」
今度はロキが来た。俺が王都で会った、あのロキなのか?
「あ!もしかして先輩ですか!?」
うん、あのロキだね。
「あ、ああ。そういうお前はあのロキなのか?」
「そうですよ、先輩!忘れちゃったんですか!?」
「いや、忘れてないよ。久しぶりだな」
「お久しぶりっす!何してるんすか?」
「魔術の試し撃ちだよ。見てくか?」
「見てくっす!ありがとうございます、先輩!」
ロキがレアたちの方へ走っていく。よし!三度目の正直だ!
「爆炎雷槍!」
ボン!バチン!と炎を纏った雷の槍が現れる。くっ、相変わらずきっついな。
「リュー、すごーい!そんなの出来るようになったんだ!」
「・・・またリューが強くなっていく。もっと頑張らなきゃ」
「ううう、またリューさんが離れていきます...」
「リューもやるようになったわねー」
レアたちの反応はあまり芳しくない。追いつくのが大変か...。少しは自重しよっかな...。
「むむ!ここの学生は凄いな!あのような魔術が撃てるのか!」
「凄いですねぇ。あの子、本当に二年生ですか?」
帝国組は予想通りかな。精神は500歳以上ですよー。
「ふーん。面白いわ、やっぱり。・・・欲しいわ」
「すごいっす!やっぱり先輩はすごいっすよ!」
エリザさんは相変わらずなんだか変な感じだ。嫌な感じではないんだけどな。ロキはテンションが鰻登りだ。
それよりこれどうしよう。うーん、消えろ消えろ消えろと念じるとフッと槍が消えた。
「ふう。疲れたなー」
レアたちの方に歩いていく。
「何で消しちゃったの?撃った後も見たかったよ」
「この前撃ったら、壁に罅が入っちゃってね」
「どんだけ強力なのよ...」
「リューさん、私もあのくらいの魔術を撃てるようになれるでしょうか...」
「なれるよ、タマモなら」
タマモを撫でる。うん、相変わらずいい撫で心地だ。
「えへへ、頑張ります!」
王子たちがやってきた。
「素晴らしい魔術だった!お前、俺の下で働かんか?」
「お断りします」
政治に関わる気は全く無い。自由じゃないからな。
「そうですよ。いきないそんなこと言ったら、迷惑ですよ。ごめんなさい、若が無理言って」
「気にしてませんよ。働く気も毛頭ありませんし」
「そう。それにしても君凄いのね。二年生でしょ?お名前は?」
「リューテシアです。リューって呼んでください」
「よろしくね、リュー君、ふふふ、覚えておくわ」
さっきまでの雰囲気とは一転して、妖艶な笑みを見せるラルカさん。むう...。
「私のリュー君に手を出さないでくれるかしら?ラルカ」
「あら、エリザ。こんなとこで何してるの?」
「私はここの教師なのよ。あなたこそ、いつの間に騎士になってたのかしら?」
「少し前よ。そろそろ身を固めようと思ってね。それよりも、あなたのリュー君ってどういうこと?」
「私が最初に目をつけたの。手を出さないでくれる?」
「あなたには関係ないでしょ?リュー君はあなたの物じゃないわよ」
空気が険悪になっていく。な、なんだか怖いぞ?
「えっと、エリザさんとラルカさんはお知り合いで?」
「私は故郷が帝国で、ラルカとは同じ街の出身なの」
「そうなの。どこにいるのかと思ってたら、王国にいるなんてね」
まあ、大人二人は放っとくか。俺は誰の物でもないしな。
「先輩マジやばいっす!一生ついていきます!」
「お前王子だろ!?ついてきちゃだめだろ!」
「むむむ、こんなときに王子という肩書きが邪魔になるなんて」
はあ、まったくこいつは。
「とりあえず今日は解散!また明日ね!」
こうして今日は無理矢理解散させた。なんで俺が仕切っているんだ...。