留学生
名前を考えるのはムズイです。
あの魔術の名前は「爆炎雷槍」と名付けた。うーん、かっこいい!中二魂をくすぐられるね!
だけど、燃費が思った以上に悪すぎる!二発撃ったら気絶しそうだ。なんでこんなに高くなったんだろ?
「何ででしょう?」
「こんな朝っぱらから来るでない...」
「気になったら、解決しないと落ち着かないので」
ただいま朝の六時前でございます。校舎に来たばかりであろう、アルバス先生を捕まえて聞いてみた。
「それはな、その魔術が新しい魔術に昇華したからじゃ。もう上位、それもかなり上の魔術じゃよ」
「マジですか...。どうりで消費が多いわけだ」
「正直、儂もお主がここまで出来るとは思っておらんかったわ。あん時何が起こっておった?」
「なにって、深い海みたいな場所にいましたけど」
正直に答える。これが分かればまた、爆炎雷槍みたいな魔術ができるかもしれないし。
「深い海...。ふむ、他には何か感じたか?」
「うーん・・・鍵穴に合う鍵を探す感じでしょうか。あ、鍵はたくさんありました」
「鍵か...。・・・おそらくそれは、智の社じゃな」
「智の社?」
「うむ。この世の全てがそこで分かると言われておる。おそらくそこじゃろ」
「社って感じじゃなかったんですけど」
「物の捉え方なんぞ人によって変わる。社もまた然り。お主には海の中で鍵を探すのが、一番捉えやすかったのじゃろう」
ふーん。アカシックレコードみたいなもんか。そんなもんを見てたのか。
「誰でも見れるもんなんですか?」
「んなわけないじゃろう。儂でも数回しかないわ。お主にも魔術の才がありそうじゃな」
まあ、そうだよな。そんなホイホイ見れるわけないか。ちぇ。
「それより、朝食はいいのか?」
「え?もうそんな時間!?やばっ!先生、ありがとうございました!」
アルバス先生に背を向けて、食堂へ猛然と走る。早くしないとチョークが飛んでくる!
〈side アルバス〉
リューテシアが食堂に走り去っていく。まったく、朝でなくてもよいだろうに...。
それにしても、あの歳で智の社を見るとは。初日に火嵐を見た時は中々見込みがあるやつじゃ、と思ったがこれは予想外じゃ。
リューテシアが放ったあの雷槍。訓練所の壁に罅をいれておったが、あの壁には対物理・魔術防御の魔術を張ってあったのじゃがな。
そこそこの強度だったのじゃが...。まあ、壁が割れるよりはマシか。
儂もこの歳で、あれ程の逸材を見れるとは思ってもいなかった。面白くなってきたぞ、ゲオルグ。
ダッシュで食堂に行き、朝食を搔き込み、再びダッシュで教室に向かう。着いたのは、始業三分前だった。
「リュー、遅かったね。どうしたの?」
「はぁ、はぁ。いろいろあってね」
「そう。とりあえず息を整えなさい」
シャネルちゃんが背中をさすってくれる。ああ、やさしいなぁシャネルちゃん。
「リューさん、先生が来ますよ!席に着きましょう!」
おっと、もう先生がくるようだ。さっさと席に着こう。
「みなさん、おはようございます。今日は、授業の前に皆さんに伝えることがあります」
「今日の放課後は講堂に来てください。帝国と皇国から留学生が来ます。皆さんと同じ、二年生です」
ざわざわとざわめきが広がっていく。留学生か。しかも帝国と皇国から。政治的な何かが関わっているな。
「それでは授業を始めましょう。最初の授業は政治ですよ」
みなながガヤガヤ言っているにも関わらず、サン先生は授業を始めた。どんな奴が来るのかね...。
放課後になり、講堂に行くことにした。レアたちも一緒だ。
「帝国と皇国からだって!どんな人だろうね」
「皇国ってロキが住んでいる国よね?」
「え?お姉ちゃん、ロキのこと覚えてたの?」
「覚えているわよ。一応リューの友達みたいなもんでしょ?」
友達っちゃあ友達だけど...。後輩?かな?
「楽しみですね!」
みんな楽しみにしているな。俺はあんまり楽しめそうにないな...。
「リュー。浮かない顔しているわね」
「うん?ああ、ちょっとな。時期とか学年とか...」
「そんなの気にしないほうがいいわよ。国にはいろいろあるのよ」
まあ、そうなんだろうけど。気楽にいこうか。気楽に。
講堂に着くと、席がかなりうまっていた。やっぱり珍しいのか。
「お!リューたちじゃないか!こっちこっち」
声の方を見ると、リカルド君とジョルジュさんがいた。
「お久しぶりです。先輩」
「まったくだよ。たまには挨拶にでもこいよ」
「・・・薄情」
「ははは、すいません。忙しくて」
リカルド君の隣に座ろうとすると
「ああ、そこはノエルの席だ。ちなみに、リューを捕まえるように言ったのもノエルだ」
なるほど、そのせいか。そう思いながら一つ席を空けて座る。各々席に座る。
しばらく話していると
「ごめんねー。遅れちゃって」
ノエルさんが来た。随分遅かったな。
「こんにちは、ノエル先輩」
「あら、リュー君。もう来てたの」
「はい。何で遅れたんですか?」
「聖教の授業が遅れちゃってねー」
「聖教の授業なんてあるんですか?」
「あるわよ。教えとかを勉強するのよ」
へー、政教分離はしてないのか。
「そろそろ始まるみたいですよ!」
お!誰が来るかな?誰が来るかな?誰が来るかなー?・・・虚しい。
壇上に校長(中年のおっさん。この人は政府が選んでいる人らしい)が立って子どもを連れてくる。
「この子たちが、これからみなさんと一緒に勉強します。仲良くしてくださいね」
壇上には二人の少年と一人の女性が立っている。
「俺はグルドだ!リュージュ帝国第一王子だ。こいつは専属騎士のラルカ。よろしく頼むぞ!」
「よろしくお願いします。若はこんな感じですが、どうか引かないでください」
帝国第一王子...。王位継承権第一位の子を、こんなとこに送っちゃっていいのかな?
周りはザワザワ言っている。そりゃそうか。王子様だもんな。
「む?随分とざわついているが、一体どうしたというのだ?」
「若は王子ですからね。みなさん、驚くに決まっているじゃないですか?そんなこともわかんないんですか?馬鹿なんですか?」
「馬鹿とは何だ!俺は少し考えるのが苦手なだけだ!」
うん、それが馬鹿って言うんだよ。やっぱり馬鹿だね。
温い目で見ていると、ラルカさんと目が合った。その瞬間
ゾクッ!
「ッ!」
魔術を撃ちそうになるのを抑えて、ラルカさんを睨む。今のは、気当てか!?この場合は魔力当てかな?
「リュー君?どうしたの?」
ノエルさんが心配そうに俺を見ている。
「いえ、大丈夫です」
ラルカさんを睨むのは止めないで、答える。
ラルカさんはもう俺から目を逸らしているが、逸らす前に笑ったような気がした。
「それじゃあ、お願いします」
「はい。俺はロキです。ヴァイス皇国第一王子です。よろしくお願いします」
そこには、大きくなったロキが立っていた。