ドラゴン
「グルァ…」
かれこれ1時間ほど待っていると、ようやくドラゴンが目を開ける。目が覚めた途端襲ってこないよな?
「起きた?大丈夫?」
通じるかどうか分からないけど、とりあえず声をかけてみる。
「グルアア…。(ううう…。いたいよぉ…)」
っ!頭の中に女の子みたいな声が聞こえる!?こいつか?
「俺の声が分かりますか?」
「グルゥ。(わかるよ。だれ?)」
「僕はリューテシアです。リューって呼んでください」
「グル。(うん。それで、ここどこ?)」
「グリュネの森ですけど。知ってます?」
「グルゥ?(しらないよー。なんでこんなとこにいるのー?)」
ドラゴンは泣きそうな声をだしている。見た目とのギャップが激しいな。
「えっと、あなたのお名前は?どこに住んでたんですか?」
「グルグルァ。(なまえはないよぉ。おやまにすんでたんだよぉ)」
ヤバい、泣きそうだ。ドラゴンが泣いたらどうなるか分かったもんじゃない。
「そうですか…。起きる前に覚えていることはありますか?」
「グルグルグワァ。(あさおきて、ごはんをとりにいこうとしたら、きゅうにめのまえがひかって、つぎおきたらリューがいたの)」
急に現れたから、転移でもしたのかな?それは置いといて、これからどうするかだな。
「グルゥ…。(ヒクッ、ヒクッ。おなかすいたよぉ。うえ、うえーーーん!!)」
うわ、泣き出した!うっさいな、こいつ!
「わ、わかりました!何かとってきますんで、少し待っててください!」
「グ…。(ううう。ありがとぉ)」
早くとってこなくちゃ!
〜10分後〜
「とってきましたよ〜!」
森に戻ったら都合良く猪がいたんで、レーザーで頭を撃ちぬいた。ご都合主義万歳!
「グラァ!(わーい!おにくちょーだい!)」
「ちょっと待ってください!焼きますから!」
「グルゥ?(やく?そのままでいいよー)」
ドラゴンが待ちきれないと言わんばかりに、尻尾を振る。風がブオン!ブオン!と巻き上がる。
「焼いたほうがおいしいですよ?」
「グルゥ!(おいしいの!?なら、がまんする!)」
猪から頭と皮をとり、ファイアで焼いていく。ジューっと肉が焼ける音があたりに響く。そして、しばらくして
「はい、もういいですよ。どうぞめしあがれ」
「グルルルゥ!(いただきまーす!)」
ドラゴンが焼き肉をガツガツと食べる。うわー、骨も食べてるよ。どんだけ腹減ってたんだ。
すぐに猪を食べきってしまった。けっこう大きかったんだけどな…。
「グルゥ…。(おいしかったー!やくとこんなにおいしくなるんだー)」
「満足しました?そういえば何であんなに暴れてたんですか?」
「グルァ?(あばれてた?うーん・・・おぼえてないよ)」
覚えてないか…。転移したときのショックで何かあったのかな?まあ、今はいい。
「それは置いときましょう。それよりも、名前がないのは不便です。つけてもいいですか?」
「グラァ…。(名前をくれるの!?えっと、いいの?)」
「?別にいいですよ。そうですね・・・白雪っていうのはどうですか?鱗が雪みたいに白いので」
「グル…。(しらゆき…。うん、それがいいよ!ありがと、リュー!えへへ、しらゆきかぁ…)」
気に入ってくれたようだな。良かった。
「それで、これからどうしましょう?住んでた場所から随分離れてしまってようですし」
「グ、グルル。(えっと、リューについていっちゃだめ?)」
「すいません。さすがに今の僕じゃ、白雪を連れて行けません」
「グルル…。(そっか…。・・・それじゃあ、リューがつよくなったらむかえにきてくれる?)」
「いいんですか?僕なんかで?」
「グル!(リューがいいの!ぜったいだからね!やくそくだよ!)」
「はい、分かりました。絶対強くなって迎えにいきます」
「グルルルゥ!(わたしもつよくなるからね!いつになったら、むかえにきてくれる?)」
「えっと、八年くらい経ったらですね」
「グルラァ!(わかった!はちねんだね!)」
白雪が翼を広げて、はばたく。
「グル!(それじゃあ、またねリュー!ぜったいぜーったいむかえにきてね!)」
白雪が飛んでいく。俺は白雪が見えなくなるまで、手を振っていた。
「リュー、遅いよぉー!」
レアたちの所に戻ったら、遅いと涙目のレアが飛び込んできた。そういえば、もう二時間くらいたってるな。トイレにしては遅すぎたか…。
「ヒグ、グスッ。リューざーん…。じ、じんばいしたんでずよー…」
タマモはグズグズと泣いている。心配かけちゃったな…。
「ごめんね…。心配した?」
「あたりまえじゃないですかあ〜。リューさんのバカバカバカァ!」
「ううう、リューの馬鹿!すっごく心配だったんだよ!」
「ごめんごめん」
悪いことしちゃったな。
「リュー…」
「・・・」
レアとタマモが離れた後、シャネルちゃんとビアンカが近づいてきた。様子が変だぞ?
すると、突然シャネルちゃんが抱きついてきた。
「ちょ、お姉ちゃん!?」
「・・・ばか」
シャネルちゃんは腕を俺の背中にまわして、ギューッと抱きしめる。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。僕はここにいるよ」
「・・・どこにもいかないで」
だいぶ不安にしてしまったようだ。
「リュー」
「あ、ビアンカ。d」
「帰ったら・・・分かってるわよね?」
・・・やばい。めちゃくちゃ怒ってる…。俺、帰ったら死ぬかも…。
「まったく、大丈夫だったか?」
「あ、先輩。心配かけてすいません」
「・・・無事?」
「はい。少し枝とかで引っ掻き傷ができましたけど、大丈夫です」
「リューくーん?何やってたのかしらー?」
ノエルさんが恐ろしい笑顔で聞いてくる。っていうかホントに怖いな!
「えっと、大きいほうです…」
「二時間も?」
「・・・はい」
「少し前に爆音が聞こえてきたんだけど、関係ないの?」
「そういえば聞こえましたねー。何があったんでしょうかねー?」
「・・・そう。わかったわ。今は、そういうことにしてあげるわ」
ふう、なんとかなったかな。まあ、言っても信じないだろうけど。
「リュー!無事だったのか!」
「あ、アラン。無事だったのかって、まるで俺が死んだと思ってたみたいな言い草だな」
「い、いやそういうわけじゃないけど」
「冗談だよ。それより、お腹空いたよ。猿余ってない?」
「ああ、数匹余ってるよ」
「それじゃ、そいつをもらうわ」
この時食べた猿は、かなり美味しかった。
その夜も見張りについた。組は昨日と同じだ。
「ふわー、こんばんわノエルさん」
「こんばんわ、リュー君。それじゃあ、行きましょうか」
倒木まで歩いていく。昨日と同じなら
「はい、リュー君。おいで♪」
と膝をたたいて、手招きするノエルさん。
「はあ。分かりました」
「あら、今晩はずいぶんと潔いわね。なにかあったの?」
「いえ、何言っても無駄そうなので」
ノエルさんの膝に収まる。まあ、柔っこくていいにおいだしいいか。
「ふふふ、よしよしリュー君♪」
ノエルさんに撫でられる。むう、悔しいが気持ちいい。
「リュー君は昼間に何してたのかしらねー」
「トイレですよ、トイレ」
「はあ。何も言う気はないみたいね」
なんのことやら。
「まあ、いつか言ってくれればいいわ」
乗り切ったかな。
「でもね、リュー君。私だって本当に心配だったのよ…」
俺を抱きしめる力が強くなる。頭の後ろにノエルさんの顔がうずめられる。
「ノエルさん…?」
「まだ会って一日しかたってないけど、とっても大切に思ってるのよ?」
「・・・すいません」
「別に謝らなくてもいいのよ。でも今度は一言いってね?」
「はい。分かりました」
そうして夜は明けていった。
白雪は今後で登場予定