空中戦
みんなの朝食がすんだら、また猿を探すことにした。
狩ってきた猿はみんなで食べきった。そんなに大きくもない上に食べれる部分も少ないので、問題ない。
みんなもちゃんと食べていた。空腹には、勝てないです。
「今回はみんなに、猿を倒してもらうよ」
探索に行く前に、みんなに宣言しておく。
「・・・私にできるでしょうか…」
「大丈夫だよ。俺でも出来たんだし。そんなに気負わなくても平気だよ」
「・・・うん。いつまでもリューに頼ってられないもんね。頑張んなきゃ」
「そうね。私もリューのお姉ちゃんなんだし…。シャンとしなきゃ」
気負うなって言ったのに…。フォローしなきゃな。
「よっしゃー!やるぜー!!」
アランは能天気でいいな。
今回は先輩方もついてくるらしい。曰く「最初はみんな危なっかしい」らしい。
しばらく探していると、枝の上で果物を食っている奴がいた。珍しく一匹だ。
「あいつにしようか。俺が落とすから、ビアンカは警戒してて。誰からやる?」
「俺、俺!俺がやる!」
アランは本当に能天気だな。まあ、いいか。
「それじゃあ、みんなは離れてて。アランのほうに落とすよ」
アランが剣を構えて、待機する。俺は猿がいる木を迂回するようにまわって、アランの反対側にいく。
手で「行くぞ」とサインを送ると、「いつでも!」とアランが返してくる。さてどういうふうに落とそうか…。
うーん・・・よしこれでいこう!
まずはウィンドボールを発動待機させておき、ゲイルスライサーで枝を切り落とす。猿が落ちてくるので、ウィンドボールを合わせて吹っ飛ばす。
すると、アランの少し前に猿が着地する。猿はキョロキョロと周りを見渡して、アランを視界に捉える。
アランのことを格下と思ったのか
「ギャッ!ギャッ!」
と腕をふって威嚇する。
「この猿!調子のんなよ!」
アランが猿に接近して斬りかかる。が、猿は軽快な動きでよける。けっこう早いな。
「ギャギャギャ!」
こんどは猿が馬鹿にしたように腕をふる。
「この野郎!」
アランがさっきより、速く動く。そして袈裟切りを猿におみまいする。
「グギャア!」
今度は猿が避けられず、まともに剣をくらう。肩から腹にかけて大きな斬り跡が出来る。
そのまま、猿は血を出しながら倒れる。しばらくピクピクと痙攣して動かなくなった。
まあ、初陣にしては良い方だな。アランは大丈夫かな?
「おーい、アラン。大丈夫かー?」
アランに駆け寄っていく。
「はぁ、はぁ。ああ、大丈夫だ」
興奮して息が上がっている。
「・・・リュー。けっこうキツいなこれ」
「そうか。まあ、慣れだな」
実際、慣れればどうってことないしな。
その後、みんなにもやらせた。
案外、ショックは少なかったようで「こんなものなんですね」とはタマモの談。
レアやシャネルちゃんも全然平気そうだった。
「猿が襲ってきたら、なんか自然に体が動いたの」
「なんか、あっけなかったわね」
「俺だけなのか、へこんでたのは…」
アランがさらにへこんでいる。レアたちホントに大丈夫かな?
「アラン君みたいな反応が普通なんだけどね」
「レアちゃんたちは、強いのねー」
「・・・すごい」
みんなで話していると、何か嫌な気配を感じた。
「リカルド先輩、そろそろ昼食です。一旦戻りましょう」
「もうそんな時間か。それじゃあ、戻ろうか」
「あ、僕はトイレしてくるので先に行っててください」
「大丈夫?一人は危なくない?」
「たぶんここらへんにいる魔獣程度なら、俺だけでも大丈夫です」
「・・・気をつけて」
先輩方とレアたちが先に戻っていく。さて、それじゃあ行きますかね。
気配のいる方へ進んでいく。気のせいならいいんだけど…。
身体強化してしばらく走っていると、森の中に突然木がない場所があった。中に入ると、真ん中から木が消し飛ばされていた。
真ん中には、なんだかよくわからないものが丸まっていた。何だあれ?
すると、突然丸まっていたものが動き出した。モゾモゾしてたかと思うと、バサッ!と翼を広げた。・・・翼?
そいつは琥珀色の目、真っ白い鱗、こちらも大きな純白の翼を持っている飛竜だった。翼をいれないと2mくらい、いれたら4mくらいだ。・・・なんか小ちゃいな。ドラゴンってもっと大きいと思ってた。
ドラゴンは頭をブンブン振った後、周りをキョロキョロ見渡し俺と目があった。琥珀色の目が俺を見る。やばい…。目が離せない。
しばらく見つめ合ってると、ドラゴンが下をむいた。助かったか?と思った次の瞬間
「グオーーン!!!」
と大きな声で咆哮した。うわ、耳が!
耳に手を当てて耐えていると咆哮が止み、ドラゴンがまた俺を見た。翼を大きく広げて、唸っている。こいつ威嚇してるのか?俺、何もしてないぞ?
「グア!」
とドラゴンが一声鳴くと、光の弾が5個発生し俺に向けて撃ってきた!警告も何も無しか!ドラゴンに求めるのもお門違いだろうけど。
フレイムバレットを同じ数だけだし、相手の魔術に合わせて撃つ。ドンドンドン!と魔術がぶつかり、相殺される。
それを見たドラゴンは大きく息を吸い、構える。口の魔力の密度が膨れ上がっていく。まさかブレスか!?こんなとこで撃ったら、レアたちが巻き込まれる!
「くそ、フライ!ほらほらこっちだ!」
空に飛び、ドラゴンの気を引く。ドラゴンは口を空に向け、魔力を一気に放出する!俺は加速し、ブレスを避ける。
ドオォォォ!
と俺の横をブレスが通っていく。ブレスは雲を突き抜け、消えた。
ドラゴンの魔力が、かなり減っている。あんだけの威力のブレスを撃ったんだから、当然だな。
だがドラゴンは疲れた様子も見せず、翼をはばたかせて俺のほうに向かってきた。さあ、空中戦だ!
俺は、ドラゴンに追いつかれないように逃げる。ドラゴンは俺を追いつつ、光の槍を撃ってきた!こんどは槍か!
フレイムジャベリンで迎撃する。それでもドラゴンはどんどん撃ってくるので、俺は魔術での迎撃を止め躱すことに専念する。
右へ左へ躱し、急降下する。森の中に入って、木を盾にして魔術を避ける。ドラゴンは木をなぎ倒しながら、魔術を撃ち続ける。
・・・なんかへんだな。残魔力量を気にしないで魔術を撃ちまくるとことか、わざわざ木をなぎ倒しながら俺を追うとことか。上から撃てばいいのに。暴れ回っているみたいだな。何でだろう…。
上空に上がり、ドラゴンを見る。ドラゴンも森から出て、俺のほうに向かってくる。・・・ドラゴンにしては、魔力量が少ないな。魔術も全然使い慣れてない。大きさも小ちゃいし、もしかしてこいつ産まれたばっかりなのか?ドラゴンって知性がある奴もいるんだよな。こいつには・・・ありそうだな。上位の竜っぽいし。なんでしゃべんないんだろ?とりあえず気絶させるか。俺も魔力がキツいしな。
ふたたび俺は逃げ始める。ドラゴンはまた俺を追う。さて、それじゃあ始めますか。まず、ファイアバーストを発動待機にする。それを維持しつつ、またファイアバーストを発動させ最初に待機させてたものに、重ねる。同じ魔術を重ねて撃つと、威力がけっこう上がる。
名付けて魔術重ね撃ち!・・・なんか違うな。まあ、いいか。これを5回繰り返す。こんくらいやれば、気絶ぐらいするだろ…。
体を捻って急降下し、ドラゴンの腹へ回り込む。腹には鱗が無く、綺麗な白い色をしている。汚すみたいで悪いけど、我慢してくれ…。
「落ちろ!ファイアバースト5段重ね!」
巨大な火球が飛んでいき、ドラゴンの腹に当たり大爆発を起こす。
ドカァァァン!!
「グギャアァァーー!!」
とドラゴンが落下していき、ドオォンと森に落ちる。う…。俺ももう飛んでらんない。魔力が切れそうだ。
ふらふらとドラゴンが落ちたとこへ、下りていく。ドラゴンは腹から落ちたみたいで、グッタリしている。
ふう、とんでもない目にあったな。ちょっと休憩しよう。
と俺は近くの木に寄りかかり、ドラゴンが起きるのを待った。
フライはまんま舞◯術だと思ってください。