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猿狩り


「起きてください、リューさーん」

ユサユサとタマモに揺らされて目が覚める。もう朝か…。

「ふあぁ。おはよう、タマモ」

「はい、おはようございます。私はもう寝るので、ノエルさんを起こしてください」

「ん、分かった。夜には何も無かった?」

「ふわぁぁー。はい、何にも無かったです。それじゃあ、おやすみなさい…」

とタマモが横になって、寝始める。お疲れさま。

空を見ると、もううっすら白み始めていた。ビアンカは・・・起こさなくていいかな。

ノエルさんを起こしにいく。ノエルさんは、レアたちと一緒に寝ていた。

「ノエルさん。起きてください。朝ですよー」

「んー…。分かりました。起きます…」

ノエルさんがのそのそと起きる。まだぼぉっとしている。

「ふわ…。おはよう、リュー君」

「おはようございます、ノエルさん。それじゃ、行きましょうか」

ノエルさんと一緒に少し離れたとこにいく。木が倒れていて、座れるようになっている。

「火でも起こしましょうか?」

「うん。ありがと」

落ちている枝を集めてファイアで火をつけて、たき火を焚く。パチパチと枝が燃える音が、響く。

「リュー君、そんなに離れてたら寒いわよー?もっとこっちに来て?」

「えっと、別に寒くはないですよ?」

「いいから、来て。ね?」

「・・・はい…」

断ろうとしても、目が有無を言わせなかった。ノエルさんの隣に座る。

「うふふ。レアちゃんたちに聞いたわよー。ずいぶん可愛がってるのねー」

「は、はい」

レアたち何を言ったんだ!?

「そんなリュー君はぁ、私が可愛がってあげるわ」

「え?って、わ!」

ノエルさんに抱えられて、膝の上に座らされ後ろから抱かれる。

「の、ノエルさん!何をするんですか!」

「何って、お膝にのせて抱きしめてるのよ?私、弟が欲しかったの♪」

欲しかったの♪って、この人…。

「んふふふ〜。リュー君可愛いわ〜♪ホント、弟に欲しいわ〜」

肩から手をまわされて抱きしめられ、頭をグリグリされる。いつもと逆だな…。

「弟って…。どうして僕なんですか?」

「何でって・・・一目惚れ?」

「はい?」

一目惚れってこの人…。

「最初は見た目でドキってきて、その後仕草が可愛いなーって大好きになっちゃったの!」

「そ、そうですか…」

なぜかノエルさんは、俺に俺の魅力を語る。

「なんで魔術科に来なかったの〜?来てたらもっと可愛がれたのに〜」

「そうですか…」

「来年からは、授業にもでるでしょ?そのときはいっしょに受けてね?あ、帰った次の日に図書館で勉強しましょ!」

「はい…」

もう、どうでもいいや…。



その後、ノエルさんはみんなが起きるまで俺を抱き続けた。魔獣が来なくて良かった…。

朝食は魔獣を倒すまで我慢。倒した魔獣が食える奴ならそいつを食う。食えないなら、木の実や果物を探す。

「みんな集まったね。それじゃあ、課題で集めるものを教えてくれる?」

「はい」

と将軍から渡された紙を開く。

「えーっと、フォレストモンキーの尻尾ですね」

「あー、また面倒くさい奴にあたったなー」

「どういうことですか?」

「フォレストモンキーは、木の上を素早く移動するから攻撃が当たりにくいのよ」

「・・・面倒…」

ふーん、面倒くさいやつなのか。木の上を移動するね〜…。

「姉ちゃん、ちょっと作戦があるんだけど…」

「作戦?どんなの?」

ノエルさんが姉ちゃんに反応してたけど無視し、シャネルちゃんに作戦を伝えた。



「リューさんいました!モンキーです!」

あの後シャネルちゃんが作戦を了承したので、猿を探した。

タマモが見つけたのは、二匹のつがいらしき猿だ。まだ俺たちには気づいていない。

「それじゃあお姉ちゃん、よろしく」

「任せといて」

シャネルちゃんが手近な木に登って、猿たちに気づかれないように近づいていく。

「ビアンカ、準備するよ」

「ええ」

俺とビアンカは魔術を発動待機させる。シャネルちゃんも準備できたようだ。

タマモがシャネルちゃんに合図を送る。するとシャネルちゃんは、グッと足に力をこめたかと思うと

ダン!

と猿たちに飛びかかった!

猿たちは急な攻撃に反応できず、木から落ちることによって回避した。

もらった!

シャドウバインドを使って、猿たちを拘束する。猿たちははずそうと、ジタバタ暴れている。

すぐにビアンカが、氷柱を猿たちに向かって飛ばす。氷柱はまっすぐ猿たちに飛んでいき、猿の胸と頭に突き刺さった。

猿たちは少し暴れてたが、すぐにぐったりと息絶えた。

「ナイスショット」

「そっちも」

俺とビアンカの息は、数年の戦闘ですっかりぴったりだ。ナイスショットって最初言っても意味が分からなかったが、意味を教えたら満更でもなさそうだった。

「お姉ちゃん、お疲れ様〜」

「リュー、どうだった!?」

「うん、バッチリだったよ!このあともお願いね」

「ええ、私に任せなさい!」

いつものシャネルちゃんは、頼れるお姉ちゃんって感じだ。淫乱モードのときは、甘えん坊のお姉ちゃんだけどね。

「リュー、私たちはやることはないの?」

レアとタマモが俺に聞いてくる。そうだなー。

「それじゃあ、もしビアンカの魔術が当たんなくて逃げられないようにいつでも飛び出せるようにしといて」

「うん!分かった!」

「了解しました!」

うん、これでいいな。

「リュー、私がはずすとでも?」

ビアンカの機嫌が目に見えて下がっていく。目つきがどんどん鋭くなっていく。

「思ってないよ。保険だよ、保険。ビアンカは俺の女房役みたいなもんだし、信用しているよ」

野球の用語だけど、まあ間違ってないだろ。実際、戦闘の時も頼りになるしね。

「にょ、女房!?私がリューの!?・・・ふふふ、私がリューのお嫁さん…」

うん、思った通りの反応だね。可愛い奴め。ビアンカは少しトリップしている。あの墓場にいたしな…。本当にろくな奴がいなかったな…。

「リュー、俺は…」

「あ、アランいたの?それじゃあ、レアたちといっしょに待機してて」

「おう!まかせとけ!」

出番、あるかな?



あの後、合計十五匹ほどの猿を狩って先輩方の元へ戻った。

ビアンカは一回もはずさなかった。レアとタマモは不満そうだったが。魔獣を殺したがらないでほしいんだけど…。そのうち、経験させてやらなきゃいけないけど…。アランもほとんど役に立ってなかった。ドンマイ!

猿はみんなで担いでもって帰った。アランは一人で五匹も持っていた。頑張れ〜。

狩ってきた猿を先輩方に見せると

「おお!すごいな!どうやってこんなに倒したんだ?」

「・・・いっぱい。朝食…」

「すごいわねー。けっこう苦労するものなのよ?」

なかなか好感触。苦労するもんなのか。割と簡単だったけど…。

猿は尻尾を切って、捌いた。レアたちは気持ち悪そうにしてたけど、一匹は自分で捌かせた。

香草が見つかったので、それと一緒に焼いて食べた。うん、けっこうイケルな。香草で生臭さが消えている。

「・・・リュー、食うのか?これを…」

「なんだアラン、腹減ってないのか?」

「いや、その。この肉、さっきのモンキーだよな?」

「それ以外になにがあるんだ?この後はアランたちもやるんだから、しっかり食えよ」

みんながビクッっと反応する。まあ、捌いた後だしな…。無理もないか。

「リュー君は、平気なのか?」

「はい。慣れてますんで」

「慣れてるって、リュー君前にも倒したことがあるの?」

「ありますよ。5歳からですかね」

「5歳!?ずいぶん早いのね〜」

「まあ、ビアンカがいますからね。これでも戦闘技術には自信がありますから」

「・・・早熟」

「僕の話は後でもできます。早くしないとモンキーがいなくなっちゃいますよ」

そう言って、俺は手早く朝食を済ませた。これ以上詮索もされたくないしね…。






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