野外演習開始!
「野外演習?」
入学してから半年ほど経ったある秋の日、3日ほどかけて野外演習を行うとアランから聞いた。
「ああ、サバイバル訓練とか魔獣との戦闘もするらしいぞ!」
みんなもある程度武器や魔術を使えるようになったので、実戦経験をつませるためにやるようだ。
「へー、最近は戦闘してなかったな。する暇もないし」
「そうね。そろそろ私としても、再開したいのだけどね。外の森に入っちゃいけないの?」
「許可があればいいらしいけど、まだ一年生だしな。厳しいな」
「そうね。なら、今回の演習で出来るだけ稼がないとね」
早く風呂に入れるようにしてやりたいしね。ふふふ、そしたら洗ってやるぜ…。
「リューって魔獣と戦ったことがあるのか?」
「ん、あるよ。従魔を育てるためには、魔獣を倒すのが一番だからな」
「すげー!どんな感じなんだ!?」
「どんな感じって、そんな楽しいもんじゃないよ。命を奪ってる訳だし」
「そう、なのか?」
アランが首を捻っている。あの感覚は、殺した人しかわかんないよな…。
「何話してるの?」
レアたちが俺たちの方に来た。
「野外演習があるんだって、今月」
「野外演習?」
おお、まったく同じ反応。アランから聞いたことを、そのままレアたちにも伝える。
「そんなのがあるんですか。知らなかったです」
「それ、聞いたことがあるわ。二年生の先輩もついてきてくれるんでしょ」
レクリエーションみたいなかんじかな?流石に子どもにそんな無理をさせないだろ
「数人で組になって、その期間は行動するんだって。4〜5人だから俺と組をくn」
『じゃあ私たちだけで』
「・・・orz」
「入れてあげよ。このままじゃ、一人になっちゃいそうだし」
『・・・リュー(さん)が言うなら』
「リュー…」
「変な気起こしたら・・・わかってるよね?」
「わ、分かりました。(ガタガタガタ)」
あれ?どうして震えてんだろ?フシギダナー。サムイノカナー。
さて、それじゃあ準備しとくか。剣の手入れとかね。
数日後、俺たちは馬車に詰め込まれていた。まあ、一年生だけでも500人くらいはいるしな。それに加えて、二年生もいるしな。
ガタガタと馬車がゆれる。うーん、息苦しい。どうにかなんないかなー。
「リュー、息苦しいね」
「さすがにキツいわね…」
「ううう、早くついてほしいです…」
俺たちが向かっているのは、グリュネ森林という国が管理している森だ。学院の生徒が演習や実戦をするために、そこまで強くない魔獣だけを残しているようだ。国立公園みたいな感じかな?
馬車は時々休憩を挟みつつ、グリュネ森林に向かっている。騎士団の護衛もついているので、魔獣や野盗も襲ってこない。平和なのは、いいことです。
朝早くに出発した馬車は、すっかり日も落ちる頃にようやく森の入り口に到着した。案外近いな。どっかで一晩野営するのかと思ってたら、一日で着いちゃった。
馬車から降りて、伸びをする。関節がボキボキなる。あー、苦しかった。
「うーん。疲れたー」
「やっと着いたのね」
「来るだけでへこたれますー…」
他の人たちも疲れが見えている。
「お前ら!組別に別れて集まれ!」
将軍はまだまだ元気そうだ。組別に固まって、将軍の元へ行く。
「これからお前たちと、二日間ともに過ごす二年生を紹介する!敬意を持って接するように!」
『はい!』
「よし!来い!」
少し離れた馬車から、二年生たちが来て俺たちの前に並ぶ」
「礼!」
『よろしくお願いします!』
ハモったぜ!
「それでは、今からそれぞれで別れてもらう!先生方に従って移動しろ!」
さて、どんな先輩にあえるのかな?
いつものメンバーにアランを加えた六人で、三人の先輩方と向かい合う。
「それじゃ、まずは自己紹介から。俺はリカルド、武術科だ」
リカルドなる先輩は、金髪を短く切りそろえた美男子だ。将来はイケメンだな。死すべし。
「・・・ジョルジュ。鍛治科」
この人はドワーフだ。もじゃもじゃの茶色い髪が特徴的だな。少しひげもはえている。
「私は、ノエルです。魔術科です。みなさんよろしくお願いしますね」
銀髪のボブカットのおっとり美人の先輩だ。白い法衣みたいなのを着ているから、聖教の信者さんかな。
「ノエルは聖女って言われてる、回復魔術の使い手なんだよ」
「そんなことないですよ。少し回復魔術が得意なだけです」
ふぅーん。聖女ねぇ。
「そっちの自己紹介もしてくれるか?」
「あ、はい。僕はリューテシアです。リューって呼んでください。武術科ですけど、魔術も使えます」
「そうなのか。属性は?」
「火・風・闇です」
「・・・トリプル。珍しい…」
「すごいのね、リュー君。なんで魔術科に来なかったの?」
「魔術科の授業は取るつもりですよ。武術科にいったのは、みんなが武術科だったからですよ」
今の俺は、魔術の方が強いけどね。
「私はレアです。武術科です。よろしくお願いします」
「シャネルです。拳術を使います」
「タマモです!リューさんと同じで、魔術も使えます!属性は火です!」
「アランです!将来は騎士になりたいです!よろしくおねがいしまっす!」
一通り自己紹介を終えた後
「そういえば、この演習では何をするんですか?」
「魔獣の特定の部位を規定数取ってくるとかだな」
「・・・取り合い」
「毎年かぶる魔獣も出てくるから、奪い合いになってだいたい1日中探しまわることになるわよー」
そうなんだよなー。課題が面倒なんだよなー。これも授業だからちゃんと宿題もあるんだよなー。
「まあ、毎年全員合格してるからもんだいないよ」
リカルド君が安心できることを行ってくれる。頑張るか!
「それでは、今から野外演習を開始する!各員、教師についていけ!」
将軍の号令と共に先生の後を追って、森の中に入る。もうすっかり日は落ちて、あたりは真っ暗だ。俺たちの他に数グループがいっしょに行く。
先生は時々立ち止まって、「ここで君たちは待ってて。炎が上がったら、動き出していいよ」と行ってグループをおいていった。
俺たちもおいていかれてしばらく待っていると
ヒュゥーーン ドォォン!
と大きい炎が上がった。
「それじゃあ、動き出そうか。まずは、寝る場所を確保しよう」
演習では、テントとかも用意されていない。着の身着のままで放り出される。
「水はノエルがだせるから、探さなくていいよ」
「水の魔術も使えるのよ」
「魔術で作った水を、そのまま飲んでもいいんですか?」
「良くないけど、リュー君とタマモちゃんは火が出せるんだろ?沸騰させて冷ませば飲めるよ」
煮沸消毒か。この世界にも伝わってるのか。
「どんなとこで、寝た方がいいんすか?」
「・・・雨がしのげる所。とりあえずは…」
「あんまり高望みしても、見つからないからね。それだけあればいいのよ」
そんなもんなのか。
俺たちが寝る場所にしたのは、崖が出っ張って雨が当たらなさそうなところ。まわりにもあまり木がないので、魔獣が来ても分かりやすい。
食事は森に入る前にすませてきた。風呂は今日は我慢だ。寝るにあたって、見張りを決めた。最初は、あまり起きてられそうにないアランとリカルド君。次はレアとシャネルちゃん。お次はタマモとジョルジュ君。最後に俺とノエルさんだ。タマモが少し心配だが、ジョルジュ君なら大丈夫かな。
そう思いながら見張りにつくために、眠りについた。
グリューネって緑って意味ですよね?