試験開始
それから一ヶ月は、この国の歴史や周りの国のこと、数学について勉強した。レアとシャネルちゃんは、数学でつまずいていたな。ほかのものは、暗記物だからな。そこで、この世界の国について説明しよう!
この世界には1つの大きな大陸があり、主に3つの大国が支配している。シュバルツ王国・ヴァイス皇国・リュージュ帝国だ。
シュバルツ王国は、大陸の南にある平原あたりを領地としている。農業が盛んで、穀物を輸出している。人族と獣人族が多い。
ヴァイス皇国は、大陸の北西にある大森林を領地としている。林業が盛んで、聖教という大陸で一番普及している宗教の総本山がある。エルフが多い。
リュージュ帝国は、大陸の北東にある山岳地帯を領地にしている。鉱業と魔術研究が盛んで、大陸一の軍を有している。竜人族が王をしていて、ドワーフが多く住んでいる。
どの国も戦争はせず、お互いに協力し合って魔獣に対抗している。共通の敵がいるから、戦争が起きないのか。
貨幣は共通。それぞれの国が、違う産業を行ってるので関税はない。経済が盛んになるわけだ。
そんなわけで、一ヶ月たちました。俺たちは、5年ぶりに王都にきた。ロキは元気にしてるかな…。
そして本日、入学試験当日になりました。
「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ。いつも通りやれば大丈夫だよ」
「う、うん…」
校門の前で、親父がレアに話しかけていた。レアのめちゃくちゃ緊張している。
「それに比べて、リューは全く緊張してないな。もう少し緊張感を持ったほうがいいぞ」
まあ、落ちない入試なんてヌルすぎるぜ!高校入試はめちゃくちゃ緊張したけどな。
「シャネルちゃんを見習えよ。いい具合に緊張してるぞ」
シャネルちゃんは、深呼吸して「よし!」と気合をいれていた。レアはガクガク震えてる。ほぐしてやるか。
「レア。大丈夫だよ」
とレアを抱きしめて、撫でる。少し震えが弱まったな。
「でも、もし失敗しちゃったら…」
レアが泣きそうな顔で言う。まったく、この子は…。
「レアならできるよ。毎日頑張ってたじゃないか」
角を撫で上げる。気持ち良さそうにしているな。そろそろ大丈夫かな。
「レア、もう大丈夫?」
「・・・うん。頑張る!」
笑顔で答えるレア。これでもう大丈夫。
「それじゃあ、行ってこい!」
『はい!』
と言って、俺たちは門の中に入った。
しばらく進んでいくと、人が集まっているところがあった。そこに向かうと
「入学試験を受ける方は、ここで受験票を受け取ってください!」
と男の人が言っているので、受験票を受け取りにいく。
「すいません。試験を受けたいんですけど」
「はい、三人ですね。それじゃあこれを胸につけてください」
と渡してきたのは、74・192・285と書いてあるプレートだ。裏にピンがついていて、胸につけるようだ。
「あの、番号がバラバラなのは」
「ああ、それは不正防止ですよ。複数で示しを合わせて、カンニングなどを出来ないようにするためです」
へぇー、しっかりしてるな。
「このまま道をまっすぐ進むと、会場が見えてきます。頑張って下さいね」
「ありがとうございます」
と言って、レアたちの元に戻った。
受験票は、シャネルちゃんが74番 レアが192番 俺が285番になった。
言われた通りに進んでいくと、大きな建物が見えてきた。ここに着く途中でも、幾つか建物が見えた。どんだけ広いんだ?この学院。
建物の扉を通り中に進むと、大きなホールになっていた。
「うわー、広いね」
「うん。お家より大きいよ」
「スゴイわね。さすが、王立学院って感じね」
そのまま、まっすぐ進むと100番刻みで教室が分かれていた。ここで試験をするのか。
「ここで、一旦お別れだね」
「レア、がんばるのよ」
「うん!リューとお姉ちゃんも頑張ってね!」
ここで、三人は分かれた。
王立学院の試験には、筆記試験と実戦試験にわかれている。筆記試験では、地理・歴史・数学・一般常識などが問われる。
実戦試験では、希望する人が受けれる。商人などを目指す人は、やんなくても問題ない。最初に希望する科を書かされた。俺は、武術科にした。レアとシャネルちゃんが、武術科だからな。魔術は、授業をとることにした。
教室に入ると、結構席がうまっていた。俺の席は・・・お、あそこだな。
席に座って、試験が始まるのを待つ。となりの席を見ると、
ガタガタガタ
机を揺らすほど、震えていた。
「・・・君、大丈夫?」
「ひゃい!!らいじょうぶれす!!」
「大丈夫じゃないよね!?」
俺の隣の席の子は、狐耳の女の子だった。120cmくらいのまだ幼女と言ってもいいくらいの子だ。
「君、ホントに大丈夫!!医務室行く?」
「だいじょうぶ、大丈夫です。私は大丈夫です…。こんなとこで躓くわけには」
狐耳の女の子が言う。なんか、暗い顔したけど大丈夫かな?それに、まだ震えてるし
「緊張しているんだね」
「はい…。情けないです…」
「そんなこと、ないよ。初めてなら、そんなもんだよ」
ナデナデ、と頭を撫でる。撫でやすい位置にあるなー。レアは、もう大きいんだよな。あ、俺が小さいのか。
「ふぇ!」
「あ、ゴメン!嫌だった?いつものクセで、撫でちゃって」
「い、いえ別にいやとかじゃなくて・・・。でも・・・」
ブツブツ言ってる、狐っ娘。どうした?
「えっと、すいません!」
「ど、どうしたの?」
「その・・・撫でてくれませんか?撫でられてる間、落ち着けたので」
「い、いいけど」
もう一回、撫でる。狐っ娘は、耳をフニャっとさせ「くぉん♪」と頬を染めながらじっとしていた。
しばらく撫でていると
「ありがとうございます。落ち着きました」
と俺から離れた。
「そう?それは良かった。もう大丈夫?」
「はい。すいません、ご迷惑をおかけしてしまって」
「大丈夫だよ。撫でるのは好きだし」
「そう言ってもらえると、幸いです」
見た目とは違って、しっかりした子だな。
そんなことを話していると、教室に男性が入ってきた。
「始まるみたいだな。頑張ってね」
「はい!えっと、あなたも頑張ってください」
そうして、筆記試験が始まった。
<side レア>
リューたちとわかれて、教室に入るとたくさん子どもがいました。こんなにいっぱい子どもを見たことがないよ。
私の受験票と、同じ番号の席に行きます。どこにあるのかなぁ〜? あ!あった!
席に座って、周りを見渡します。知らない人がたくさんいて、ちょっと怖いです。でも、リューと頑張るって約束したもん!!
もしすごい点をとったら、リューはほめてくれるかなぁ?ご褒美くれるかなぁ?
・・・えへへへへ。頑張って、ご褒美もらおっと!
<side シャネル>
リューとレアと別れて、試験会場にはいる。リューはまだしも、レアは大丈夫かしら?
受験票と同じ数の席に座る。目をつぶって、この試験について考える。
実戦試験はいいとして、問題は筆記試験ね。歴史と地理はある程度とれるとしても、数学が心配ね。
リューに教えてもらったんだから、できるだけ高い点をとりたいわ。
そしたら、リューもほめてくれるわよね?いつも勉強してるときには、撫でてほめてくれたし。
・・・ウダウダ考えていてもしょうがないわね。とにかく全力を尽くすわよ!
そして、リューにほめてもらうのよ!
リューは、年下に人気です。
リューは、精神的には500歳をこえてます。
だから、リューがモテるのは自明の理なんです!