骨さん(仮)改めてビアンカ
話が進まない!
もっと歳をとらしたい!
「なんじゃ、思ったより早かったの」
墓場の入口にもどると、開口一番こう言われた。
「思ったよりって、まさか変な奴しかいないの知ってたんですか!?」
「当たり前じゃ。ワシを誰だと思っとる」
まったく、この爺さんは。
「それで、従魔はどこじゃ?」
「あっ、まだ骨です。これから、魔術をかけます」
「ならさっさとせんかい」
骨を足元に置いて
「サーヴァント!」
すると、黒く発光したかと思うと骨が組まれ立ちあがった。目は青くなっている。
「成功じゃな。これでこいつは、今からお主の従魔じゃ。大切に扱えよ」
「はい」
ふう。やっと家に帰れる。
「そんじゃ、今から魔獣について説明するぞ」
「え?まだ帰れないんですか?」
骨を洗いたいんだけど。泥だらけだし。
「少しくらい我慢せよ。若者じゃろ」
「はあ、できるだけ短くしてください。もう夜も遅いんで」
みんなもう眠そうにしてるからな。レアとシャネルちゃんは、昼の疲れからかウトウトしている。
「わかっとるわ。詳しくは明日説明するが、魔獣はある一定の条件を満たすと別の魔獣に変化することがある。存在進化と言われとる」
「じゃから、お主には明日から魔術の修得とそいつの強化を並行して行ってもらう」
「えっと、質問いいですか?」
「明日にせい。もう遅いからの」
誰のせいだ、誰の!
「・・・わかりました。今日は帰りましょう」
「少年は、ワシと家まで帰るぞ」
「うぇ!」
ゲオルグさんが、ロキを引っ張っていく。「せんぱーーーい!!!」とロキの叫び声を聞きながら
「じゃあ、俺たちも帰ろうか。えっと、骨さん(仮)行くよ」
骨さんは、「カタカタカタッ」と顎を鳴らして、答えた。
「あ。リュー様おかえりなs・・・きゃーーーー!」
帰ったら、キャメルさんに悲鳴をあげられた。どうしたんだ!?
「どうした!!」
親父が飛んできた。
「ま、ま、魔獣が…」
俺の後ろを指差しながら、キャメルさんが恐れているように言う。
魔獣って、
「もしかして、この人のこと?」
骨さん(仮)を見ると、キャメルさんがうんうんと頷く。まあ、一般人から見たらな
「そいつが、リューの従魔か?」
「うん、そうだよ」
「そうか、成功したのか。泥だらけだな。風呂場で洗ってきてくれ」
「はい。レア、お姉ちゃん、もう遅いから寝たほうがいいよ」
「うん、後でお布団にきてね…」
「私もいっしょにに寝ていい?」
「いいよ。僕のベットで寝てて」
レアとシャネルちゃんをベッドに行かせたら、骨さん(仮)をお風呂場につれていった。
だが、お風呂場に入ろうとしない。
「どうしたの?水嫌い?」
横に頭を振る。
「それじゃ、早くしてよ。僕ももう寝たいの」
後ろから押し入れる。俺も服を脱いで入る。汚したくないしな。
骨さん(仮)が、俺とは反対側の壁を見ている。背中から洗えってことかな?
俺はソープの実を削って泡をだす。ソープの実っていうのは、削ると石鹸みたいな泡がでる実のこと。この実があるから、この世界には石鹸がないんだと、俺は思っている。というか、ソープの実って安直だよなー。
泡を背骨につけて、布切れで擦っていく。だんだん泥が落ちていくと、白玉のような真っ白い骨が見えてくる。
「骨、綺麗ですね。真っ白で」
と言うと、ビクッ!として身を縮めさせた。どうしたんだ?
その後、頭から足まで全部洗い終わったので風呂をでる。骨さん(仮)は、最後の方は心なしか目が虚ろになっていたような気がする。大丈夫かな?もしかして、お風呂嫌い?
骨さん(仮)を連れて、俺の寝る部屋に行く。部屋についたら、ステータス覗くか。名前が知りたい。
部屋にに着いたら、骨さん(仮)に寝る場所がいるかどうか聞くと、壁の方に行って寄りかかった。いらないってことかな?
寝巻きに着替えてベッドに潜ると、レアとシャネルちゃんが抱きついてきた。
「リュー、あったかーい…」
「んんん。リュー…」
まだ甘えたいざかりだもんな。何で俺なのかはわからないけど。
寝る前に、骨さん(仮)のステータスを見ると
名前???
体力 F
魔力 D
筋力 E
生命力 F
理力 D
素早さ F
・・・何だこのステータス。魔力と理力が飛び抜けすぎだろ。そういえば、生前は宮廷魔術師だったとか言ってたな。そのせいか?
明日、ゲオルグさんに聞いてみるか。名前もないし、考えなきゃな。
そう思いながら、俺は眠りに落ちていった。
〈side 骨さん(仮)〉
・・・だいぶ魔力が下がっているわね。
壁に寄りかかりながら、自分の魔力の量をはかってみたところ生前よりかなり魔力の量が減っていた。
スケルトンなんて弱い魔獣になったんだから、しょうがないんだけど。
それより、何なのよあの子!
私を生き返らせてくれたのはいいけど、いきなりお風呂に連れてったと思ったらいきなり体を洗いだすし。
そ、それにあんなとこからそんなとこまで・・・。
もう骨だとか、そういうのは関係なくって女の子のあんなとこを洗うなんて。もうお嫁にいけないわ・・・。
その上、
「骨、綺麗ですね。真っ白で」って。
人間扱いしろって言ったけど、そんなとこまでするなんて。
ドキドキしたわ。あんなこと言われたことないもの。綺麗だなんて・・・。
と、とりあえずの目標はこの体に肉をつけることね。人型だから、よっぽどのことがない限り人型になれるでしょ。
次の日、朝食を食べてレアとシャネルちゃんを鍛錬場まで送った俺は、ビアンカといっしょに図書館に向かっていた。
あ、ビアンカってのは骨さんのことね。イタリア語で白って意味だった気がする。
そのままでは、流石にまずいので黒いローブを着てもらっている。
そんなわけで、図書館に到着。問題は、
「どうやって、ゲオルグさんのとこに行こうか」
初日は、親父についていったからわかんないんだよね。
すると、
『まっすぐ進んで、最初の角を左に曲がるのじゃ』
ゲオルグさん?テレパスか?
頭に聞こえる声に従って進んでいくと、見覚えのあるドアの前についた。
親父と同じように、ドアノッカーで扉をゴンゴンと叩き
「ゲオルグさん、リューです」
と言うと、ドアが開いた。
中には、昨日と同じ机でゲオルグさんがお茶を飲んでいた。お茶、どうなってるんだろうな。
「ようやく、きたか。それじゃあ、昨日の続きをしようじゃないか」
「その前に、さっきの声はどうやったんですか?」
「それはまた今度じゃ。今は、そいつのことについてじゃ」
ビアンカを見る。ああ、そういえば
「ゲオルグさん。スケルトンって弱いですか?」
「弱い。死んでるから、休みなしで戦えるが知能は低いし動きは遅い雑魚じゃ」
やっぱり知能は低いのか。でも
「死んだ時の能力は引き継がれるんですか?」
「ああ。戦士や騎士が死んで、スケルトンになるとファイターやナイトになる。じゃから、戦が終わった戦場は燃やされるのじゃ」
なるほどね。だから、ビアンカの魔力と理力が飛び抜けてたのか。かなり下がるはずだから、やっぱりかなり強い魔術師ダッタンだな。
「それじゃあ、続きを始めるぞ。存在進化の条件じゃが、いろいろじゃ。魔獣をたくさん倒したり、ある環境で一定期間すごす、などがあるな」
「一番多いのが魔獣をたくさん倒すことじゃな。蠱毒の法を知っておるか?」
「壺の中に、毒虫をたくさんいれて最後の一匹になるまで殺し合いをさせ、残った一匹の毒が強力な毒になるってやつですよね」
この世界にもあるんだな。
「そうじゃな。暗殺者が強い毒を作るための手段じゃが、魔獣の世界にもこれが当てはまるのじゃ」
「より多くを殺した者が、より強くなる。これが自然界の摂理なのじゃ」
弱肉強食だな。
「スケルトンはどういう魔獣になるんですか?」
「骸骨戦士、骸骨魔術師、蘇人とかがいるぞ。どれにさせたい?」
うーん・・・。元が魔術師だったから骸骨魔術師か、人に近い蘇人かな。
「ビアンカ。どれがいい?一つ目?二つ目?三つ目?」
三つ目のところで、うなづいたので
「蘇人がいいです」
「分かった。その前に、お主の魔術の訓練をしようか」
「はい」
こうして、ビアンカは蘇人を目指すことになった。