墓場にて
長くなりそうなので、一旦ここで投稿します。
鍛錬場に着くとそこでは、
「オラオラオラ!そんなもんか!?」
「ッ! まだまだ!」
シャネルちゃんがダンさんに攻撃して、ダンさんが防御して時々軽いカウンターを入れていて
「ほら!ちゃんと維持しなさい!」
「は、はい!」
レアが魔術らしきものを、必死に維持しているところだった。
「お、リューが来たみたいだな。一旦休憩にするか」
「こっちも休憩にしましょ。しっかり休みなさいよ」
『はい…』
レアとシャネルちゃんがこっちに来る。大丈夫かな?
「二人とも大丈夫?」
「大丈夫よ…」
「私も…」
二人が倒れこんできたので、受けとめる。
「ちょ、ちょっと!二人ともホントに大丈夫!?」
「大丈夫よ。・・・リュー、私汗臭くない?」
「んー?そんなこんなないよ。いい匂いだよ」
シャネルちゃんの頭に顔をうずめて、匂いを嗅ぐ。少し酸っぱい柑橘系の匂いがする。
女の子って何でこんないい匂いがするんだろうな。
「ふぇ!ちょ、ちょっとリュー!」
シャネルちゃんが何か言ってるけど、無視。ホント、いい匂いだなぁー。
すると
「むぅー」
レアがむくれてしまった。
「お姉ちゃんだけずるい…」
妬いてるのかな?それなら
「よしよし」
と撫でてやると
「えへへ♪リュー♪」
と一転して、笑顔になる。角の辺りを撫でると
「んっ。そこ、気持ちいい…」
と蕩けた笑顔を見せてくれる。・・・けっこうエロいな…。
「先輩、モテモテっすね!」
とロキが話しかけてくる。
「リュー、誰?そいつ」
「ああ。こいつはロキ。いろいろあって連れて来たんだ」
「ふーん」
どうでもよさそうだな…、シャネルちゃん。何で聞いたんだ。
「おい!リュー! ちょっと来てくれ!」
ダンさんが呼んでるので、二人を座らせる。
「ちょっと行ってくるからね。ちゃんと休憩するんだよ」
『はーい』
ダンさんとエリザさんのところに行く。
「おう、リュー。大丈夫だったか?」
「はい。特に何もありませんでしたよ?」
「まだ油断できないわよ。これから何をするか、分かったもんじゃないわ」
ゲオルグさん、何をしたんだ!?
「それはおいといて、あの娘なかなか筋がいいぞ。訓練している間も、俺から技術を盗み続けている」
「レアちゃんも発動はできたから、あとはたくさん練習するだけね」
「それは良かったです」
何で俺に言うんだ?親父に言えばいいのに。
「そういえば、レアはどんな魔術を練習しているんですか?」
「竜化魔術って言って、ブレスをだしたり力を強化したり回復力を強化したりする魔術よ」
「身体強化の竜人族版みたいな感じですか?」
「少し違うけど、そんなところね。使う感覚は身体強化とは違うけどね」
「へぇ…」
そういうのなんだな。
「けど、ずいぶん早かったじゃねぇか。教えてもらえたのか?」
「えっとですね」
ゲオルグさんに言われたことを、話す。
「はぁー。従魔ねぇ。まためんどくさいことを」
「まあ、闇属性だしね。それなら早く帰って休んだほうがいいわね。レアちゃん達は連れて行くの?」
「本人たちに聞いてみますけど…」
その後、レアたちに聞いてみたら『いっしょに行く!』と言ったので、この日の訓練はおしまいになった。
というか、ロキもついてくるのか?
そして、夜になった。
俺はレアとシャネルちゃん、ロキといっしょに王都の端っこにある墓場の入口にいた。
親父は「ゲオルグ爺さんが来いってんなら、言ってきな」と言って許可してくれた。
ロキは親にナイショできたらしい。手紙を置いてきたらしいけど、大丈夫なのか?
「そのゲオルグさんってどこにいるの?」
レアに聞かれる。自分で来いって言っておいて、本人はどこいるんだ。
「ここにいるぞ〜」
後ろから声がかかる。振り返ると
ヒュードロドロ…。
鬼火を漂わせて、周りがいつもより暗くしているゲオルグさんがでてきた。ダーク使ってんのか?
『キャー!』
「ぎゃー!」
みんなが、怯えている。そりゃ怖ーよ。俺もちょっと怖いよ。
「ゲオルグさん。何してるんですか」
「何じゃ、つまらん反応だの。周りの奴らを見習ったらどうじゃ」
「お断りします。みんな、この人がゲオルグさんだよ」
みんなはまだ少し怯えている。いいや、ほっとこう。
「それで、説明してくれるんですよね」
「もちろんじゃ。ここには、色んな骨が埋まっとる。八百屋や兵士、はたまた犯罪者までな」
墓場だしな。
「その中には、まだこの世にやり残したことや心残りが残っとるものもおる。そういう奴がスケルトンになるのじゃ」
「お主には、そのうちの誰かを探してもらう。そのものを探し、隷属させたらスケルトンになるだろうから、そいつを連れて来い」
「えっと、スケルトンになるっていうのは?」
「言ったまんまじゃ。この世に戻りたい骨を探し、そいつを隷属させたらその骨はスケルトンになるのじゃ」
「どうやって探すんですか?」
「骨の声を聞くのじゃ。耳に魔力を集中させれば聞こえるはずじゃ」
アメリカのドラマみたいだな。やってみるか。
「それじゃあ、いってきます」
「うむ、頑張れよ」
墓場に歩いていく。レアたちが後ろからついてくる。
「リュー、怖いよ…」
「ちょっと、リュー!あまり離れないでよ!」
「先輩!怖いっす!」
「みんな、うるさい。よく聞こえない」
レアとシャネルちゃんが両腕にくっつき、ロキが背中を掴んでいる。俺は耳に魔力を集中しながら、歩いている。ノイズが多くてうまく聞こえないな。
「ついてこなきゃ良かったのに」
「あそこで、ガイコツと待ってるほうが怖いわよ!」
うんうんと二人が首を縦にふる。全く…。
耳に魔力を集めるのは、できるけど声を聞くのは難しいな。イメージは、ラジオのチャンネルを合わせる感じだ。
お、だんだん聞こえてきた。なになに
『俺はまだ童貞なんだ〜!!』
『幼女、ハァハァ』
・・・この辺りはダメだな。俺はもう、童貞で死なない。
もっと奥に進んでいくと
『この戦が終わったら、結婚してたのに!!」
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す私を捨てたあいつを殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
・・・ここには、こんな奴らしかいないのか!?
「リュー、見つかった?」
「い、いやまだだけど」
ホントに大丈夫なのか?この墓場。
しばらく進んで行っても、まともな奴がいないのでどうしようか悩んでいると
『・・・れか』
ん?何だ?
『誰か聞こえないの?』
向こうから聞こえるな。行ってみるか。
声に誘われるように進んでいくと、藪だと思っていたところに道があった。
「道があるっすね」
「この先に行くの?」
「うん」
藪を払って、進む。
しばらく進むと、一つだけ崩れかけた墓があった。
「壊れてるね」
「うん、誰のお墓だろ?」
名前がかすれていて読めないな。
『君たち、聞こえてる?』
この墓の人かな?
『銀髪の子、聞こえてるね』
ッ! どうして分かった!?
『お願い、聞くだけでいいから聞いてくれる?』
とりあえず聞くか。うなづくことで意思を伝える。
『ありがとう。私はね死ぬ前は、宮廷魔術師だったの。魔術の腕は宮廷一だったわ』
『ある時、私はある古代魔術の再現に成功したの。時空間魔術って言ってね、文字通り時と空間を操る魔術よ』
すごいな..。ちなみに古代魔術っていうのは、今は失われた昔の魔術で強い効果の物が多い。
でもなんで、そんな人がこんな誰も来なさそうなところに埋葬されてんだろ?
『でもその手柄を横取りされて、私は口封じとして犯罪者として処刑されたの』
はぁ、やっぱりどんな世界でもそういうことはあるんだなー。
『本当に馬鹿よね。あの魔術はまだ私しか使えないのに。今じゃ伝わってないでしょ』
『結構な重犯罪者として処刑されたみたいね。こんなはじっこに埋められたんだから』
『これで、私の話はおしまい。聞いてくれて、ありがとうね。誰かに聞いてもらえて嬉しかったわ』
・・・このままにしておくのは、もったいないな。この人が従魔になってくれないかな。
どうすれば、言葉を聞かせられるかな?声を聞くには耳に魔力を集中させるから、喉に魔力をこめてみるか。
『まだ生きていたかった?』
『え?』
お!いけるか。
『まだ生きていたかったですか?』
『それは、・・・生きたかったわよ。もっと魔術を研究したかったしそれにけ、結婚だってしたかったし』
声に照れが混じる。恥ずかしいことじゃないと思うけど。
『僕は、あなたを生き返らせることができます。スケルトンとしてですけど。それでも生き返りたいですか?』
『あなた、その年で闇の魔術が使えるのね。しかもサーヴァントも』
『・・・いいわ。あなたの従魔になってあげる。ただし!』
『ただし?』
『ちゃんと私を戦闘に参加させて、人と同じように接して。これが条件よ。魔術の実験体なんかにしたら呪うわよ』
『?なんでそんなことしたいのかわかりませけど、いいですよ。もとからそのつもりでしたし』
『ならいいわ。それじゃあ、さっさとしてちょうだい』
なんか上から目線だな。まあ、いいけど。
地面にしゃがんで、骨を掘り出そうとするとレアが
「リュー!大丈夫!?」
「え?」
みんなが心配そうに俺を見ている。どうしたんだ?
「リューが突然黙ったと思ったら、独り言を言いだすし取り憑かれちゃったかと思ったわよ」
「先輩、大丈夫っすか?」
「大丈夫だよ。ようやく、従魔にできそうな骨が見つかったんだ」
「本当っすか!じゃあ、さっさと掘って、こんなとこからおさらばしましょう!」
みんなで墓の下を掘ると、一体の骸骨が見つかったのでそれを布に包んでゲオルグさんのとこに戻った。