再会
しばらくパソコンが使えなくて、投稿と執筆が遅れています。すいません。
絶対に完結まで持っていきます!
眼下に広がる赤黒い大地。遠くには剣山や血の池、灼熱地獄が見える。俺は今、地獄の門の上に立っています。
あの後、なんだかんだ無事に神界に到着し、そのまま地獄へと左遷された。責任を取らされるとは思っていたが、まさか地獄の門に配属されるなんて...。神界の嫌な職場ランキングで、常に一二を争っている所だ。ちなみに箱庭は、毎回トップ10には入る。働いてみれば、そんなに悪くないんだけどなー。
何でそんなに嫌がられているかというと、業務内容に問題があるのだ。俺が渡された書類には、「地獄から脱走しようとする奴を撃退すること」と書かれていた。本物の地獄の門は、ロダンのみたいな装飾はされていない。ぶ厚い鉄板でできた、どっしりとした門だ。イメージは・・・ラクーンシ◯ィーの門みたいな感じだな。出口は一つしか無くて、むしろ要塞と言ったほうがいいかもしれない。
そんな門なのだが神界側から、脱走することが受刑者に許可されている。なんでも、文句があるなら自分の力で道を切り開き言いに来い、ってことらしい。迷惑千万である。そんな制度があるので、毎日大量の罪人が門に殺到する。人間以外にも、色んな化け物もやってくる。この前、緑と黒の斑模様が見えたような気がしたけど...。勘違いだよな?そうであってくれ。
そいつらに立ちはだかり、脱走を阻止するのが俺たちの役目だ。俺以外にも牛頭馬頭やら赤鬼青鬼、ケルベロスたちが防衛にあたっている。いかにもらしい面子だよな。最初見たときは本当にびびったぞ。ガチムチの鬼や牛頭・馬頭、三つの頭を持った大きな犬が、大勢いるんだから。卒倒しなかった俺偉い。
そこの司令官に、俺は配属された。なんでもちょうど前任の司令官が、怪我を理由に引退したらしい。怪我なんてすぐに治るだろ!前の司令官も、やらかしちゃってここに配属されたらしい。まさに人材の墓場。しかも右京さんなし。せめて亀山君か神戸君をください。甲斐君は・・・いいかな。
「左翼、敵が集中しています!至急援軍を!」
「上空から飛べる敵が侵入しようとしてるぞ!」
「正面に負傷者多数!衛生兵を!」
周りでは屈強な男達が、大声を上げながら行き交っている。次々に飛び込んでくる情報を、片っ端から捌いていく。
「空から来る奴らは弓で落とせ!でかい奴はバリスタだ!衛生兵は、今のうちに負傷者を回収。ついでに、正面と左翼の奴らに最低限の兵を残して左翼を援護するよう伝えろ!」
俺の命令を伝達しに、数人の鬼が散っていく。最初こそ勝手が分からず手間取っていたが、今ではすっかり板についた。人間なっぱり適応力だ大切だな。今は天使だけど。
俺がここに赴任してから、もうすぐ千年。勤務期間も千年だから、あとちょっとで箱庭に帰れる。俺だけ抜けるのは少し後髪を引かれるが、まあしょうがない。次の指揮官に期待しよう。
「司令!さらに左翼に援軍!このままでは、第五次防衛線に到達します!出てください!」
「・・・はあ、またか...。あまり俺に頼ってほしくはないんだがな...。もうすぐ交代するんだし、今度来る奴が戦えるとも限らないし...。副官は?」
「正面を少数で支えています。空からも来ているので、門から兵を回すことも出来ず...」
「・・・了解。すぐに向かう。お前は俺がここから離れることを、各部隊に伝達してくれ」
「了解!」
さて、いっちょやりますかね。一人でも突破されたら、それを口実に期間を延長させられるかもしれないしな。炎をぶっぱして、敵を殴り続ける簡単なお仕事です。これで敵が少なかったら、なおいいんだけどな...。
それからしばらくたったある日。ついに俺の勤務期間最終日になった。その日の午前零時で、俺は箱庭へと帰れる。
珍しく受刑者たちの攻勢が弱まってたので、副官に今後と引き継ぎのことについて話しておく。もし戦えない奴が来たら、こいつが戦場での司令になるんだからな。
副官は身体に大量の傷跡がある、まさに歴戦の猛者って感じの隻眼の牛頭だ。顔のある傷が勇ましい。
「・・・というわけだけど、今の説明で大丈夫か?分からない所が合ったら、詳しく説明するけど...」
「いや、問題ないモー。しっかり理解できたモー」
しかし語尾に必ずモーとつくので、外見とのギャップがすごい。シュールを通りこして、少し可愛らしくもある。言わないけど。
「ならいい。ちゃんと次の司令の命令を聞けよ?俺に苦情がきたら困る」
「もちろんだモー。でも、もう少しいれないのかモー?司令がいた間は、とても戦いやすかったモー」
「そう言ってもらえるのはありがたいが、帰らないわけにはいかない。俺は箱庭に戻るために、今まで頑張ってきたんだからな。・・・悪い」
「友達が待ってるなら仕方ないモー。こっちのことは気にしないでほしいモー」
「ありがとな。たまには遊びに来るよ」
「待ってるモー」
うっし。ラスト一日、張り切っていきましょうか!
「やあ、久しぶり。地獄はどうだったかな?」
「悪くなかったですよ。みんないい奴だし、ケルベロスはけっこう愛嬌があるし。これで敵が少なければ、言うことなしなんですけどね...」
「それはどうしようもないね。あれを失くしたら、それこそ暴動が起きかねない。いいガス抜きになってるんだよ」
「そうでしょうね。不公平になっちゃいますもんね」
地獄から帰ってきた俺を迎えてくれたのは、部長だけだった。リアたちは箱庭から出られないし、師匠は忙しい。しょうがないんだけど、ちょっと寂しいです...。
「いやーそれにしても、千年間完全防衛なんてよくやるねー。数人通したくらいじゃ、ペナルティーは発生しないよ?」
「付け入る隙与えたくなかったんです。それにどうせなら、完璧に守ってみたかったですしね」
「やりきったね。お疲れさま。それじゃあ、箱庭に戻ろうか。皆待ってるよ」
約千年ぶりに箱庭に入る。中に入った途端
「「「リュー!」」」
と数人が俺に飛びかかってきた。俺をリューって呼ぶことはまさか...!
「うえっうえぇぇぇーーーー!!!会いたかったですよーー!!!」
「リューの馬鹿馬鹿馬鹿!死ぬ頃に会えるんじゃなくて、死んだら会えるんじゃない!嘘ついてんじゃないわよ!」
「兄者!私、兄者に話したいことがいっぱいあって...!いや、その前に帰ってこなかったことについて、詳しく説明してもらおうか!」
「ふわぁぁぁーーー!!!リューリューリュー!!!」
タマモには抱きしめられ、シャネルちゃんには首を揺らされ、ミズキにはおでこを指でグリグリされ、レアは腹に突っ込んでくる。背伸びして足がプルプルしている、ミズキが可愛い。
「まったく...。少しは我慢しなさい!リュー君も面食らってるわよ。あ、今はイッセー君のほうがいいのかな」
「どっちでもいいですよ。でも、顔が変わってるのに俺だって分かるんですか?」
「分かるぞ。雰囲気や口調がまったく同じだしな」
ノエルさんとグルド、ロキとラルカさんもやってくる。皆神界に来れたんだな。
「僕がまとめてスカウトしたんだよ。能力は充分だったから、君が心配するようなことはしてないよ」
「部長?さっき連行されてましたけど...」
「逃げ出してきたんだよ。いやー、大変だったなー」
逃げ出してきたって...。・・・俺知らないよ?この後どうなっても知らないからね?
かくかくしかじかとみんなに事情を説明する。小一時間ほどかかって、ようやく納得してもらえた。
「それならそうと、前もって言ってほしかったわ」
「難しいですよ...。きっと話されても、冗談にしか聞こえませんし」
「そうだな。私だったら信じない。そこまで強く兄者を責められないな...」
「そうそう。しょうがなかったんだ」
「開き直っちゃダメ!約束は守るって信じてたのに、その気持ちを裏切ったことには変わりないんだからね!よく反省すること!」
「はい...」
怒られた...。まあ、しょうがないか。ちゃんと、死んだら会えるって書いておくべきだったな。