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邪神登場!

「ふむ...。貧弱な体だな。もっと良い奴に憑けば良かったな」


立ち上がった邪神が、そんなことを呟いている。取り付いた体の善し悪しで、力は減らないと思うけど...。気分の問題だな。


「・・・まあ、体は作り替えたから良しとしよう。いまから新しいものを探すのも、面倒だしな」


自己完結を済ませたらしい邪神が、俺たちの方を向く。もうやる気か!?


「あー...。お前って、天使でいいのか?最近会ってなかったから、あまり自信がないんだが...」

「え?あ、合ってますけど...」

「おお、そうか。それで、なんでこんなとこにいんだ?下界にいるってことは、何か用事があるんだろ?」


想像してた邪神と違うな。もっと悪辣な奴だと思っていたんだが...。これなら、説得できるかも。


「えっと、俺はあなたにこの世界から引いてもらうよう、頼みに来たんです。この世界は神界が実験で使用しているので、干渉してはいけないらしく...」

「・・・それではお前は、この私に黙って帰れと言うのか?邪神が光臨したのに、何もしないで戻れと」


やばい...。機嫌が、目に見えて悪くなってる...。これはマズいかも...。


「嫌だと言ったら、お前はどうする。上に報告するのか?」

「・・・そうするでしょうね。そう義務づけられていますし」


戦うのは最後の手段。戦闘は、出来るだけ回避したい。・・・戦うのは、リスクが大きすぎるしな。やらなきゃいけない時にはやるけど。


「そうかそうか...。なら・・・生かして返すわけには、いかねえなぁぁーーー!!!」

「くっそ...!やっぱり、そうなるよな...」


さっきとは打って変わって、黒い笑みを浮かべる邪神。どんだけ理性的に見えても、元は邪悪の化身。人の心の闇の部分が、邪神の原材料だ。人がやられて嫌なことは、全部邪神の好きなこと。弱い相手を嬲るのとか、大好きだろうな。


「戦うにしては、この場所は狭すぎるな...。・・・邪魔だな」


急に邪神が手を上げる。邪魔だなって、まさか...。


「確か、ここは山の中だったな。まとめて吹き飛ばしておくか」


上げた手のひらに、暗い紫色の球が発生する。俺たちを巻き込む気か!


「ビアンカ、逃げるぞ!」

「分かってるわ!とんでもない魔力よ!出来るだけ離れないと!」

「はっはっは!!逃げろ逃げろ!こんなもんで死ぬなよ!?」


ビアンカと一緒に広間から出て、道を全力で走っていく。途中からは俺がビアンカを抱えて、バンバン飛ぶように駆けていく。

途中で遭遇する異形たちは、全て無視する。飛んでかわして時に足場としながら、行きとは比べ物にならないほどのスピードで引き返す。ほんの数分で、入り口に到着した。

洞窟から出て少し離れたときに、山が大きな紫色の魔力で包まれた。さっき邪神が出したのと、同じ色だ。次の瞬間、魔力が覆ってた山ごと縮小し始める。ゴリゴリゴリッ!と大きな音を立てながら、小さくなっていく球。時々、魔獣らしき生き物の断末魔が、山が圧縮される音に混じって聞こえてくる。少しでも遅れてたら、俺たちもあれに巻き込まれていたのか...。ぞっとするな...。

山を巻き込んだ魔力は、最後にはバレーボール大の球になった。その球の後ろに、翼を生やした邪神がやってくる。これまた、悪魔のようなこうもり羽だ。


「しっかり逃げ切ったな。山もなくなったことだし、あの更地で殺り合おうか。逃げられると思うなよ?この世界での初戦闘は、骨のある奴とやりたいしな」


とてもじゃないが、逃げられそうにないな。まったく、本当に最悪の展開だ...。

・・・まあ想定の範囲内での、最悪の展開だけどな。邪神との戦闘は、部長からも示唆されていた。というか、それが一番の問題だったからな。対策もすでに練ってあるって、前にも言ったような気がする。

邪神はすでに自分の作った更地に着地し、腕を組んで立っている。俺も早く行ったほうがいいな。

邪神の方を向いて歩き出そうとした途端、後ろからビアンカにもの凄い力で止められ、転びそうになる。


「おい、何すんだよビアンカ...。今さら止められても困るんだけど...。邪神と戦うときは、俺一人でやるって言ってただろ?」

「・・・あの時とは、状況が違うでしょ!?リューが戦っても、勝ち目なんて一片もないわ。無駄死にする気なの!?」

「無駄死にする気はないって、前にも言っただろ?忘れたのか?」

「忘れてなんかないわよ!だから、今の邪神は前とは桁違いに強くなっているのよ!分かんないの!?」

「そんくらい分かってるって。それでも、勝てる・・・かも」

「かもって何よ!勝てるの?勝てないの!?」

「微妙なんだよな...。勝率は五分五分。力はほぼ互角だ。勝負を分けるのは、本人に意思だと思う。勝とうとする意思が強い方が、勝つだろうな」

「リューはどうなの?絶対に勝とうと、思ってるの?」

「そりゃここで負けたら、俺はあいつに消されるだろうから、絶対に勝たなきゃいけない。みんなとの約束を、守るためにもな」


ビアンカの頭を撫でてから、再び更地に向けて歩き出す。おっと、その前に


「ビアンカ。ここら一帯に人が入らないようにしてくれ。戦いづらくなるからな」

「・・・分かった。でも、絶対に無事で帰ってきなさいよね!絶対よ!」


そう言って、ビアンカは麓へと走っていった。これで、周りを気にせず戦える。

更地はクレーター状になっていて、真ん中に邪神が立っている。斜面を滑り降りて、邪神の元へ歩いていく。


「従魔との別れは済んだか?なに、そう簡単には殺さん。この世界に来てしまったことを、後悔させながら、じわりじわりと弱らせてやる」

「そういうことを言う奴を、噛ませ犬って呼ぶんだ。覚えておいた方がいいぞ」

「・・・ずいぶんと余裕だな。勝てる可能性があると思ってんのか?天使が、神に?」

「まあ普通に戦ってたら、まず勝てないな。俺が天使である限り、な」

「遠回しな言い方をするな。時間稼ぎをしたいのかもしれんが、私はそんなことさせん。さっさと準備しろ」

「・・・それもそうだな。すぐに準備する」


ここに踏み入れた時から、もう後戻りは出来ない。刺し違えてでも、こいつは殺す。俺が生きたこの世界のために、俺のためにこいつは絶対に殺す。

頭の中のスイッチ。天使になるために一度入れたそれを、さらに深く押し込む。

さあ、天使を越えて神になろう。





<side タマモ>

私たち学院生は王都防衛のため、戦場からかなり離れたところで待機させられています。まだ学生なので、前線には配置されませんでした。リューさんたちと一緒に戦えないのはとても歯がゆいのですが、「ミズキを任せる。守ってやってくれ」なんて言われたら、わがままなんて言えませんよ...。

さっき山が大きな魔力球に包まれて、一瞬で消えてしまいました。直前に嫌な魔力が感じられたから、きっと敵の仕業でしょう。凄かったはずのリューさんの魔力も、今では敵の魔力に押しつぶされています。こんな敵に、リューさんは勝てるのでしょうか?

そう心配した直後、山にあったところから金色の光が立ち上り、雲を突き抜けていきました。あれって魔力?しかもこの感じって・・・リューさん!?また魔力が上がった?しかも、さっき上がった元凶と、同じくらいまで上がってる。一体どうやって?


「そんなことより、こんなに魔力を上げたら、兄者の体が保たないぞ!壊れてしまう!」


そんな!?リューさん、何やってるんですか!?そんな力で、一体何と戦ってるんですか!?














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