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魅られていた

夕日が沈みかけている。

夕日の光が水面に反射して、そこだけは、それなりに美しい光景の河川敷。

だが、そこには美しいとは程遠い、鈍く、聞き慣れない音が聞こえている。

バキッ メキッ ドカッ メキャ…−−−

鉄道が走るコンクリと鉄で作られた橋のしたにあり、川の流れにより綺麗に形作られた石が転がる河川敷。そこには不良が5人いて何かを蹴っていた。蹴ながら。

「おらぁ、何か言ってみやがれ!」怒り混じりに金髪オールバックで金のピアスをした不良が叫んだ。

「んなモン守って偽善者気取りか?あぁ?」長身で体格のいい不良が言う。

「なんだぁ?ビビって声も出ねぇのか?」無造作で髭が若干あるおっさん臭い不良が問う。

「しっかり、ディフェンス固めろよ?決めちゃうぜ?」坊主頭で身長165あたりの小柄な不良が注意する。

「とっとと、退けよザコ!」髪にワックスをつけているテカテカしたツンツン頭の少し陽に焼けた不良が罵倒する。

…「何もしねぇって、お前Mか?」「うわっキモッ!」「まったく、喋んないから余計キメーぜ」−−−途中から誰が言っているか何て声で性格で分かっていた。

勝手な事を言いながら、不良は蹴り続ける。

飽きたのか、不良達は去っていく。 転がってる黒いショルダーバッグを川へ蹴り飛ばして「イエーイ」坊主頭の不良がテンションを上げる「ハッハッ〜やる〜」「流石エース」と誰かが誉め讃えている、が、興味は無い。

不良達が完全に見えなくなり、不良達がいた橋の下で影が動く、嫌、実際には黒い人が動いた。橋の下と言う影にいるせいで黒く見えるだけだ。

蹲っている体を黒いフレームの四角眼鏡をした少年が、自分の体なのに軋んでいるのをお構いなしに立とうと試みるが、うまくいかずコンクリの壁に背中を預け、両足は放り投げ、左手は掌が見えるようにだらんとしていて、右手は膨らんでいる腹部を抑えている。

「ミャオン」と腹が鳴った。嫌、違うな詳しく説明すると黒地に藍色らしき、黒とは別の暗い色が入ったチェック柄の長ズボン。第2ボタンまで開けられ、袖には砂や土の茶色い汚れを着けたワイシャツ。そこにだらしなく第2ボタン付近で緩く結ばれた、藍色のような暗い青系の生地に赤のラインが渦巻き、それに沿うように赤より細い金のラインも走る。最後に黒と藍色などを混ぜた微妙な色の生地に、胸ポケットに校章が付いたブレザー。簡単に言うと、だらしない普通の制服にブレザーの腹部にある妙な膨らみから先程の音?が発生された。

少年は懐に左手を突っ込んで右手で抑えている温もりを取り出した。白黒のシマシマボディ、肋骨の浮き出た握り潰せそうな華奢な体、何週間も放置されたであろうガチガチの目脂、生後半年ぐらいと言えば大抵の普通の生物は「可愛い」と言われる対象であるが、少年の持っている生物は「可愛い」対象に入りにくい、「可哀想」対象に入りそうだ。そんな猫であった。

「んなモン……か」猫を抱きながら、橋によって閉ざされた空を見上げながら少年は言う。




「キャー かわい〜 体重軽〜?!」ガリガリボディ&ガチガチ目脂の猫を抱きながら「愛川(アイカワ) 真友美(マユミ)」はハイテンションであった。部活帰りらしくバットを筒に入れて肩に掛け、猫を抱くにあたりこいでいた自転車を止め、今は隣に置いている。

彼女、「愛川 真友美」の事を説明するなら、まぁ、典型的なスポーツ少女だ。髪は8センチくらい、女子にしてみれば短めな長さの軽い茶髪(地毛だ)、軽く陽に焼けて健康そうな肉体、周りを元気にする……か、どうかは分からないが明るい笑顔がトレードマークな女の子である。こんなに言うと俺が愛川の事が好きだとか、データバンクとか言われそうなので断っておくが、俺は、そんなの一切ない!! ただ名前の順で同じ「あ」から始まるから席が近いため、色々知ってるだけだ!!俺が地獄耳なだけだ!!

「あ〜ん、この子飼いた〜い」愛川は幸せそうに言う。

「いや、飼いたいって、お前、猫一匹でも飼うの大変だよ?」ため息混じりに言った俺に対して

「大丈夫、うちの家は猫3匹飼ってて、もう一匹欲しかったとこなの。ねぇ、この子うちに頂戴」真っ直ぐこちらを見ながら答えて問う。

「まぁ、いいけど?俺の猫じゃないし」俺が目線をずらし雑に言うと

「えっ?ホント?まじ?やったー。はは〜 うち赤木のこと、ちょっと見直したわ〜。まさか、猫くれるなんて」と、受け取り方によっては、恋愛フラグが立ちそうなセリフだが、愛川にその気は全く無い。しいて言うなら俺も無い。

「じゃあ、俺は用があるから行くけど、本当に大丈夫か?」俺は不安なので聞く「こんな急に連れて帰ったて、家の人が即許可出してくれんのか?」すると愛川は俺の意思とは裏腹に元気に答えた。

「大丈夫だって、心配すんなって、お父さん、お母さん、お姉ちゃんも猫大好きだから」笑顔で答えた。

「そこまで言うなら、いいよ。…んじゃ、俺は行くよ、猫よろしく」俺は去ることにした。

「ん、じゃあ、バイバイ。猫アリガト」これも笑顔で右手に猫を抱き、左手で手を振った。


元々、俺は自転車で帰っていたが不良にあちこち蹴られて痛いので、自転車を押して帰っている。

愛川と別れて直ぐに自分の行為の成功に一安心した「愛川家が猫を飼いたがっている」「愛川は部活帰りにアノ道を通る」「愛川は明るく良い奴」全て知っていた。だから猫を渡そうとわざわざ帰路を逆走したのだ。素直に猫が無事になりそうで良かった、嬉しかった。

愛川と別れて15分程度、脇腹を押さえながら自転車を押しているとき、不意に

「もうすぐ、面白い事が起こるわよ」聞こえた、否、脳に直接響いた?ような声がした。

足を止めて声の主を探したが、周りに人は居ない、周りは民家だったので、もしやと思ったが違った。何故なら一番近くの家の窓は閉まっていたし、先程の声は窓を通したにしては非常に澄んでいた。

近くにゴミ置場があり声の大きさ的にも合ってるので見てみるが、ココでもなさそうだ、人が隠れられるスペースは無いし、録音したものやトランシーバーの様な機械越しの声でもない、そんなメカは無いし、あの声は機械越しにしては、とても澄んでいた。

ちなみにゴミ置場にあるのは使い古された100円ライター、表紙が折れたファッション雑誌、猫避け用のペットボトル、煙草の吸殻3本、汚れた大きめ卓上鏡、カラス避けの吊されたCDなど、関係なさそうな物ばかりだった。

気にはなったが気にしても仕方なさそうなので、帰る事にした。

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