CASE1 ホットケーキは舞い降りた
『失敗は成功のもと』
人生の中で何度も聞く、この言葉。その意味も一応分かっているつもりだ。だけど今だけは・・・今だけは言わせてほしい。
「誰が言った!こんな無責任なセリフ!!たった一度の失敗でどうにもならなくなっちゃった場合はどうすれば良いんだ?!?!」と。
これからお話するのはそんな大きな失敗から始まる4つの物語である。
CASE1 ここはどこですか?
2人の男は呆然としながら道路の真ん中に突っ立っていた。一人はひょろっとした長身、もう一人は丸眼鏡をかけた男でどちらも白衣を着ている。ちなみに長身の方が冒頭に出てきた張本人である。なぜ彼らが動けないのか。それは目の前の景色が異様だったからなのだが・・・・・・。
事の始まりはわずか数分前。
2×××年 午前10時9分 東京
「ここがこうで。あっでも、それじゃだめかもしれない。じゃあ、これをこうしたら・・」
蛍光灯の灯りで煌々と照らされている中、座ってぶつぶつと独り言を言っている長身。彼の周りにはたくさんの工具が広がっていた。
「はじめ~。おーい、一!!そろそろ休憩しようぜ!」
作業を続けようと部品に手を伸ばした矢先に声を掛けられ少しむっとしながらも呼ばれた青年、相馬一は声のする方を振り返った。まあ、振り返らずとも誰が声を掛けたかなんて分かっているのだが。
「ザキ。お前は休みすぎだ。」
所狭しと置かれた工具にぶつからないように立ち上がりながら部屋の入り口にいる篠崎和馬に言う。
「そんなことないってー。俺こう見えても結構頑張ってんだから。それより休憩休憩!ほら、甘いもん食べないと頭まわんねーし。なっ!」
そうは言っているが朝起きてご飯を食べてから何もしていなかったのを、否、正確には猫と戯れていたのを自分は知っている。そんな目の前の和馬を見ながら「本当にこんなのが相方で良いのか」とため息をこぼす。
「なーにため息ついちゃってんの。あっそうそう今日のおやつはパンケーキだから♪」
その言葉を聞きながら一は再度深いため息を吐く。
「ちなみに大きい方が俺のだから!」
慌てて付け足す丸眼鏡を前に、
「やっぱり相方を変えるべきかもしれないな」
本日3度目のため息をついた。
SF小説ではおなじみのタイムマシン。1916年にアインシュタインが一般相対性理論を発表してから多くの研究者たちがその製作に取り組んできたが完成させたものは未だいない。かくいう一もタイムマシン製作に熱を入れている一人で、中学卒業後からずっと篠崎和馬を相方に試行錯誤を繰り返しているのである。
「そーいやさ、さっき思いついたことが、あっこれホント美味い、あったんだよね。」
「食べるか話すかどっちかにしたらどうだ。」
「う~ん。ほうふる。・・・・んでさ!俺ちょっと試してみたいことあるんだ!」
「何だ?っておまっ、ザキ!皿持ちながら機械の方に行くなっ!」
急に席を立った和馬に慌てて反応するものの、全く聞かず、パンケーキの乗る皿を片手に機械をいじりだす。
「俺、ここにこの部品加えてみたらどうかなーって思ってるんだよね。」
「ザキ!分かったからせめて皿を置けっ皿を!」
そう言って一が和馬の肩に手を置いた瞬間それは起こった。起こってしまったのである。
2×××年 午前10時14分56秒 東京
『後悔先に立たず』事が終ったあとで悔いても、取り返しがつかないこと(広辞苑)
この言葉は今こそ使われるべきだろう。
一が和馬の肩に置いた。そうそこまでは良かった。うん。そうだ。そこまでは良かった。だが、そこで予想外の事が起きた。和馬が機械の上にメープルシロップのたっぷりかかったパンケーキを皿ごと落としたのだ。THE予想外。和馬も普段なら絶対しない失態だったのだから。
2×××年 午前10時14分59秒 東京
電源すら入っていなかった筈の機械が作動。まぶしい光と爆発音が部屋いっぱいに生じる。
2×××年 午前10時15分00秒 東京
蛍光灯と皿の破片のみが残されたまま、室内から全てが消えた。
そうして
????年 午前10時15分00秒 ??
気がついたときには、二人はその場に立っていた。そして周りの異常さに呆然と立ち尽くすことになるのである。
ほっとけーき好きです。
こんな感じで続きますので
気が向いたら読んでみてください。