午前0時のマッサージ機
僕は少しボケかかった祖父を見守るために同居している。
受験勉強もあり、静かでいいかも、と両親の助っ人をかってでた。祖父は毎夜午前0時になると、マッサージ機を使っていた。
「ウィィィィン……トントントン」襖の向こうでそれが20分くらい続く。
最初の頃は、「あぁ、肩が凝ってるんだな。」くらいにしか思わなかった。
だが、それが毎日続くとだんだんイライラしてきた。
午前0時は就寝前の、眠気を抑えて集中したい時だ。
襖を開けて怒鳴ってしまった。
「じいちゃん、うるさいんだよ!毎晩毎晩。昼間にやってくれよ!」
昼は予備校に行ってるので、僕はいない。
なのにわざわざ、僕の勉強の時間を見計らってマッサージ機を使う。
「ああ、そうかい、すまなかったな」そう言ってベッドに潜り込んだ。
僕は頭から布団をかけてやった。寒くないように隙間をギュッと詰めて、めくれないようしっかり抑えた。
これで静かになる。
そう思った5分後
「ウィィィィン……トントントン」
「いい加減にしろよ!!」
襖越しに怒鳴った。
一瞬静かになったので、安心して勉強に取り組んだ。
「ウィィィィン……トントントン」
「ウィィィィン……トントントン」
「ウィィィィン……トントントン」
「やめろ~!」
襖を開けてベッドを見ると祖父は眠ったままだ。
マッサージ機の電源を抜いた。
すると音がピタリと止んだ。
もう疲れてしまって、ベッドに入った。
朝、祖父が起きてこないのでベッドをみるとまだ布団を被ったまま眠っている。
予備校に遅れそうだったので僕はそのまま出かけた。
その夜、午前0時きっかりにマッサージ機の音が聞こえる。
「ウィィィィン……トントントン」
「ウィィィィン……トントントン」
「ウィィィィン……トントントン」
「もう何だよ!」
頭に来て見に行くと、青い顔をした祖父がマッサージ機に座っている。
「ウィィィィン……トントントン」
「じいちゃん、何で午前0時なんだよ。」
母に電話した。
「母さん、おじいちゃん、うるさくて勉強できないよ。帰ってもいいかな。」
「何言ってるの、昨日おじいちゃんのお葬式終わったじゃない。静かになったから、そこで勉強するって……」
「でもマッサージ機が……」
「マッサージ機?お父さんが使うからって、こっちに持ってきたわよ」
母は何を言ってるんだ。
ここにじいちゃんが……そこには祖父も、マッサージ機もなかった。
「ウィィィィン……トントントン」
頭の奥でマッサージ機の音だけが響いている。




