続・ちくわライダー ~磯辺覚醒!~
初めての戦いが終わった後。
俺は夜の公園で、一人バイクに跨っていた。
「……力が足りない」
ノコシターイとの戦い。
あれは辛勝だった。
もし更なる残飯怪人が現れたら――今の俺では守れない。
料理を。
食材を。
そして、人々の笑顔を!
「もっと強くならねば……!」
その日から俺は修行を始めた。
坂道ダッシュ。
バイク旋回。
冷蔵庫耐久。
さらには賞味期限チェックまで。
己を鍛え上げる日々。
だが――。
事件は起きた。
「ぬおおおおおっ!?」
修行中、俺は足を滑らせた。
転がる。
転がる。
ちくわだけに、めちゃくちゃ転がる。
その先にあったのは――。
「ま、待て……あれは……!」
衣の海。
そして。
グツグツと煮えたぎる油!!
「やめろォォォォォ!!」
ドボォン!!
熱い!!
熱いぃぃぃぃぃ!!
俺の身体は油の中で回転した。
ジュワアアアアア!!
響く揚げ音。
立ち昇る香ばしい匂い。
数分後。
油の中から、ゆっくりと立ち上がる影。
「こ、これは……」
俺は自分の身体を見る。
そこには。
こんがりと狐色になった、磯辺揚げフォームの姿があった!
身体には青のり!
香る磯の風味!
サクサク感すら感じる装甲!
「これが……新たな力!」
俺の中から熱が溢れる。
パワーだ。
香ばしさだ。
そして圧倒的飯テロ力だ!
「行くぞ……!」
ブオオオオオオン!!
俺は愛車へ飛び乗った。
目指すは、あの居酒屋!
俺の始まりの場所!
だが――。
「なっ!?」
店内を見た瞬間、俺は愕然とした。
テーブルの上には大量の食べ残し。
焼き鳥。
枝豆。
ポテト。
どれもほとんど手付かず。
「何があった……!」
すると。
店の奥から重い足音。
ズシン。
ズシン。
現れたのは、巨大な黒い影。
顔は腐った玉ねぎ。
マントはレシート。
腹には「半額」のシール。
『フハハハハ!!』
怪人は高らかに笑った。
『我こそは残飯将軍!!』
「残飯将軍だと!?」
『俺の放つ腐敗臭を嗅げば、人類は二口目から食べる気を失うのだァ!!』
店内の客がぐったりしている。
「もういいや……」
「なんか急に食欲が……」
おのれ!
許さん!
「食べ物を粗末にする悪は――俺が倒す!!」
『来るがいい、練り物風情!!』
残飯将軍が襲い掛かる!
腐敗ガス!
悪臭ブレス!
床に散らばる残飯!
だが俺は止まらない!
「見ろォ!!」
俺は磯辺フォームへ変身!
『な、何ィ!?』
青のりが輝く。
衣が唸る。
香ばしい匂いが店内へ広がった。
「うまそう……」
「腹減ってきた……」
「磯辺揚げ食べたい……」
『ば、馬鹿な!? 俺の臭いが押し負けているだと!?』
「これが――磯辺の力だ!!」
俺はバイクを加速させる!
ブオオオオオオン!!
時速たぶん22キロ!
ちょっと速くなった!
「くらえぇぇぇ!!」
『ぐおおおお!?』
「必殺!!」
ベルト中央のちくわコアが輝く!
「フードロス・キイイイイック!!」
回転!
炸裂!
磯の香りを纏った必殺蹴りが、残飯将軍へ直撃する!!
『ば、馬鹿なぁぁぁぁぁ!!』
ドガァァァァン!!
爆発。
そして。
残飯将軍は消滅した。
静寂。
やがて店内から歓声が上がる。
「ありがとう! ちくわライダー!!」
「お残し、しません!!」
「磯辺揚げください!!」
俺は静かに頷いた。
「覚えておけ」
マフラー代わりの大葉が揺れる。
「食べ物は、大切にするんだ」
そして。
俺は夜の街へ走り去ろうとした。
その時だった。
「……あれ?」
後ろから小さな声。
振り返る。
少女が俺を見ていた。
「ちくわライダーって……」
一歩近づく。
「なんか、すごく美味しそうだね」
「……え?」
嫌な予感がした。
次の瞬間。
「いただきまーす!」
「待っ――」
パクッ。
世界が暗転した。
――。
――――。
こうして。
ちくわライダーは食べられた。
だが。
その魂は消えない。
人々の心に残る限り。
お残しを許さぬ正義の魂は、永遠だ!
「ありがとう! ちくわライダー!!」
戦え! ちくわライダー!
フードロスを極めるその日まで!
また会う日まで――!!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
まさか続編を書くことになるとは、
作者自身が一番驚いています。
しかも今回は――
ちくわが修行し、
油に落ち、
磯辺揚げフォームに覚醒しました。
何を言っているのか分からないと思いますが、
作者もだいたい同じ気持ちです。
ただ一つ確かなのは、
磯辺揚げは美味しい。
それだけは真実です。
今回のお気に入りポイントは、
時速22キロに強化されたおもちゃバイクです。
地味。
でも確実に進化しています。
あと、最後のオチについては、
「まあ、ちくわだしな……」
という気持ちで書きました。
もし少しでも笑っていただけたなら、
ちくわライダーも油の向こう側で喜んでいると思います。
それでは最後にもう一度。
お残しは――許さない!!!
ありがとうございました!




