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続・ちくわライダー ~磯辺覚醒!~

作者: 兎山紬
掲載日:2026/05/25

 初めての戦いが終わった後。


 俺は夜の公園で、一人バイクに跨っていた。


「……力が足りない」


 ノコシターイとの戦い。


 あれは辛勝だった。


 もし更なる残飯怪人が現れたら――今の俺では守れない。


 料理を。


 食材を。


 そして、人々の笑顔を!


「もっと強くならねば……!」


 その日から俺は修行を始めた。


 坂道ダッシュ。


 バイク旋回。


 冷蔵庫耐久。


 さらには賞味期限チェックまで。


 己を鍛え上げる日々。


 だが――。


 事件は起きた。


「ぬおおおおおっ!?」


 修行中、俺は足を滑らせた。


 転がる。


 転がる。


 ちくわだけに、めちゃくちゃ転がる。


 その先にあったのは――。


「ま、待て……あれは……!」


 衣の海。


 そして。


 グツグツと煮えたぎる油!!


「やめろォォォォォ!!」


 ドボォン!!


 熱い!!


 熱いぃぃぃぃぃ!!


 俺の身体は油の中で回転した。


 ジュワアアアアア!!


 響く揚げ音。


 立ち昇る香ばしい匂い。


 数分後。


 油の中から、ゆっくりと立ち上がる影。


「こ、これは……」


 俺は自分の身体を見る。


 そこには。


 こんがりと狐色になった、磯辺揚げフォームの姿があった!


 身体には青のり!


 香る磯の風味!


 サクサク感すら感じる装甲!


「これが……新たな力!」


 俺の中から熱が溢れる。


 パワーだ。


 香ばしさだ。


 そして圧倒的飯テロ力だ!


「行くぞ……!」


 ブオオオオオオン!!


 俺は愛車へ飛び乗った。


 目指すは、あの居酒屋!


 俺の始まりの場所!


 だが――。


「なっ!?」


 店内を見た瞬間、俺は愕然とした。


 テーブルの上には大量の食べ残し。


 焼き鳥。


 枝豆。


 ポテト。


 どれもほとんど手付かず。


「何があった……!」


 すると。


 店の奥から重い足音。


 ズシン。


 ズシン。


 現れたのは、巨大な黒い影。


 顔は腐った玉ねぎ。


 マントはレシート。


 腹には「半額」のシール。


『フハハハハ!!』


 怪人は高らかに笑った。


『我こそは残飯将軍!!』


「残飯将軍だと!?」


『俺の放つ腐敗臭を嗅げば、人類は二口目から食べる気を失うのだァ!!』


 店内の客がぐったりしている。


「もういいや……」


「なんか急に食欲が……」


 おのれ!


 許さん!


「食べ物を粗末にする悪は――俺が倒す!!」


『来るがいい、練り物風情!!』


 残飯将軍が襲い掛かる!


 腐敗ガス!


 悪臭ブレス!


 床に散らばる残飯!


 だが俺は止まらない!


「見ろォ!!」


 俺は磯辺フォームへ変身!


『な、何ィ!?』


 青のりが輝く。


 衣が唸る。


 香ばしい匂いが店内へ広がった。


「うまそう……」


「腹減ってきた……」


「磯辺揚げ食べたい……」


『ば、馬鹿な!? 俺の臭いが押し負けているだと!?』


「これが――磯辺の力だ!!」


 俺はバイクを加速させる!


 ブオオオオオオン!!


 時速たぶん22キロ!


 ちょっと速くなった!


「くらえぇぇぇ!!」


『ぐおおおお!?』


「必殺!!」


 ベルト中央のちくわコアが輝く!


「フードロス・キイイイイック!!」


 回転!


 炸裂!


 磯の香りを纏った必殺蹴りが、残飯将軍へ直撃する!!


『ば、馬鹿なぁぁぁぁぁ!!』


 ドガァァァァン!!


 爆発。


 そして。


 残飯将軍は消滅した。


 静寂。


 やがて店内から歓声が上がる。


「ありがとう! ちくわライダー!!」


「お残し、しません!!」


「磯辺揚げください!!」


 俺は静かに頷いた。


「覚えておけ」


 マフラー代わりの大葉が揺れる。


「食べ物は、大切にするんだ」


 そして。


 俺は夜の街へ走り去ろうとした。


 その時だった。


「……あれ?」


 後ろから小さな声。


 振り返る。


 少女が俺を見ていた。


「ちくわライダーって……」


 一歩近づく。


「なんか、すごく美味しそうだね」


「……え?」


 嫌な予感がした。


 次の瞬間。


「いただきまーす!」


「待っ――」


 パクッ。


 世界が暗転した。


 ――。


 ――――。


 こうして。


 ちくわライダーは食べられた。


 だが。


 その魂は消えない。


 人々の心に残る限り。


 お残しを許さぬ正義の魂は、永遠だ!


「ありがとう! ちくわライダー!!」


 戦え! ちくわライダー!


 フードロスを極めるその日まで!


 また会う日まで――!!

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


まさか続編を書くことになるとは、

作者自身が一番驚いています。


しかも今回は――


ちくわが修行し、

油に落ち、

磯辺揚げフォームに覚醒しました。


何を言っているのか分からないと思いますが、

作者もだいたい同じ気持ちです。


ただ一つ確かなのは、

磯辺揚げは美味しい。


それだけは真実です。


今回のお気に入りポイントは、

時速22キロに強化されたおもちゃバイクです。


地味。


でも確実に進化しています。


あと、最後のオチについては、

「まあ、ちくわだしな……」

という気持ちで書きました。


もし少しでも笑っていただけたなら、

ちくわライダーも油の向こう側で喜んでいると思います。


それでは最後にもう一度。


お残しは――許さない!!!


ありがとうございました!

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