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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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9/10

開戦

1994年 8月30日


会場を包む熱気は、真夏の空気そのものだった。


スーパージャパンカップ’94

予選 東京大会。


広い駐車場に車が滑り込むと、ドアが開くより早く声が弾けた。


「さあ、着いたわね!」


駐車場から会場を見上げ、ユリが声を上げた。

すでに入口付近は人であふれ、ミニ四駆を抱えた子どもたちと、大きな荷物を背負った大人たちが行き交っている。


「うおおー! 燃えてきた!!

俺のアバンテ、早く走らせてー!!」


「師匠!

さくっと終わらせて全国決勝戦でござるな!」


ジョンの車から、ユウ、コウスケ、ユリ、そしてジョン自身の4人が降り立つ。


(今年は間違いなく、去年より厳しい)


ユウは胸の内でそう呟く。


スーパー1シャーシ。

前年に登場した新世代シャーシは、従来型よりも明らかに駆動効率が高い。

後年のミニ四駆のアニメブームを待つまでもなく、すでにレースシーンでは主流になりつつあった。


今年の東京大会には、そのスーパー1シャーシを軸にしたマシンが大量に持ち込まれている。

ライバルたちの実力は、去年より更に高くなっているだろう。


「まずは車検からね。

準備ができたら皆で行きましょう」


ユリが仕切るように言う。


「ユリちゃん、今日はまともなの?」


「失礼ね!

いつもまともよ!

時と場所くらい選ぶっての!」


「師匠、拙者はコースの下見と販売コーナーに行ってくるでござる」


それぞれが準備を済ませ車検を済ませると、参加者はグループごとに振り分けられた。


「コウスケ、あんたまだタイプ2シャーシ使ってるの?」


「アバンテ好きすぎて、離れられない……」


「愛なのね……!!」



大会参加マシン


ユウ

ネオバーニングサン

FMシャーシ


前年から駆動系を徹底的に煮詰め、新発売されたGUPを効果的に投入。

安定性と速度を高い次元で両立している。


コウスケ

アバンテJr

タイプ2シャーシ


一世代前の設計ながら、現代に合わせた調整で食らいつく構え。

情報源はユウとコロコロとミニ四駆本。


ユリ

リバティエンペラー

スーパー1シャーシ


タイプ3から乗り換えた最新鋭機。

黄色と白を基調に、差し色の青。

例のセーラー戦士を思わせる配色だった。



グループは全員ばらばらになり、顔を合わせる余裕もない。

最初に走順が回ってきたのは、ユウだった。


コース脇にマシンを置いた瞬間、場内の一角がざわつく。


「あいつ、去年めちゃくちゃ速かったやつじゃない?」


「コロコロに出てたFM使いの人?」


「うわー……ユウ、有名人じゃん」


「師匠、コースでござるが特に問題ござらぬと思われる」


ジョンが静かに続ける。


「ハリケーンドームなどの仕掛けはあるでござるが、無視できるレベル。

レーンチェンジでダイブしなければ楽勝でござる」


「ありがとう。

予想通りだよ。

行ってくる」


レースの時間になり、ユウはスイッチを入れた。


スタート。


ネオバーニングサンは、吸い付くようにコースを駆ける。

速度は速い。

だが、それ以上に無駄がない。


「はえー!!」


「マジかよ……」


「何でコースアウトしないんだ!?」


マシンは一度も姿勢を崩すことなく、そのままゴールへ滑り込んだ。


圧勝だった。


しかし、歓声とどよめきの中でも、ユウは喜ばない。

レース後、彼はマシンを手に取り、タイヤの摩耗、モーターの熱、シャーシの歪みを黙々と確認する。


「師匠ぉぉ!

ナイスランでござる!」


「やるな、ユウ。

俺も負けねーぞ!」


「あたしも、みんなの注目集めちゃうんだから!

ぜってー、見てくれよなっ!!」


ユウの走りに触発され、2人も気合を入れてコースへ向かう。


今年の夏は、去年よりも暑い夏になる。


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