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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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7/16

静閑

93年、有馬記念。


トウカイテイオーだ。

1年ぶりの復活。


思わず、拳を握った。


結果を知っていても、

心臓が一拍遅れて跳ねる。

この感覚――久しぶりだ。


ジョンも今ごろ、

同じようにテレビの前で歓喜している頃だろう。


遠征費。

パーツ代。

壊れたときの予備。


最低限の“選択肢”は、手の中にある。


それにしても――この時代の冬は寒い。


息を吐けば白い。

半ズボンで走る子どもを見て、

本気で感心してしまう。


ミニ四駆の方はと言うと

こんな季節に、無理をする必要はない。


GWまでは、無意味に走らせない。

構想に徹する。


今、店頭に並んでいるパーツを洗い直し、

頭の中で、何度もマシンを組み替える。


冬は、モーターが回らない。

バッテリーも力を出し切れない。


夏の感覚で触れば、

“遅さ”の正体を、取り違える。


空気は乾き、

タイヤの感触も、どこか嘘をつく。


この季節に出した答えは、

夏には通用しない。


……そう思い込んでいる。

ただの持論だ。


理屈を並べてみても、

本音は単純だ。


寒いのが、嫌なだけだ。


幸い周囲も静かだ。

コースは空いているが、

誰も走らせていない。


コウスケは、ロマサガ2に没頭している。

不動剣を求めて、何度もやり直しているらしい。


あの集中力が、

ミニ四駆に向いたら――

少し、脅威だ。


ユリとは、たまに顔を合わせる。


「来年、中学生だよ!?

セーラー服でセーラームーンできるんだよ!」


その眩しさに、曖昧に笑って距離を保つ。


変わらず騒がしい。

だが、それが今は救いでもある。


ジョンのことは一番慎重に見ている。


ギャンブルは人を簡単に変えてしまう。


アニメグッズの購入が増えているらしいが、

まだ――許容範囲だろう。


冬は動かない。


だが止まってもいない。


静かに。

ゆっくりと。


オイルを調べ、

バッテリーを調べ、

治具を作る。


走らせない時間と構想する時間が、春の速さになる。


そう信じて。

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