表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/16

欺瞞

小学生がお金を稼ぐことは、この時代ではかなり難しい。


街の大人たちは簡単に「努力すれば何とかなる」と言うが、現実はそう単純ではない。

インターネットはなく、働くこともできない。

自由に使える金は親の機嫌と成績に左右される。

選択肢は驚くほど少ない。


ユウは机に向かい、白い紙を広げた。


テストで好成績を取り、家事を手伝う。

お小遣いアップを狙う。

誕生日、クリスマス、お年玉は計画的に使う。

無駄遣いは極力減らす。


自分は大人だ。

親の喜ぶ子ども像も、褒め方も、落胆のさせ方も知っている。

どう振る舞えば評価が上がるのかも、嫌というほど経験してきた。


それを使うことに、少しだけ胸が痛んだ。


紙の端に書いた文字を指でつまむ。

これが正しいのかどうかはわからない。

ただ、今はやれることをやるしかなかった。



月曜日。


放課後のみつば屋は、いつもと同じ顔ぶれが揃う。

そこには駄菓子と紙袋と、少し古い木の床の匂い。


「師匠ー! 師匠ぉぉぉ!!」


店に入った瞬間、甲高い声が響く。


「今週は、何を買うでござるか!?」


振り向くと、ジョンが満面の笑みで駆け寄ってきた。


「いやぁー、結局あの後、ボディーガードが気になって買ってみたでござる!

そしたら何と、まさかの1着!

ナリタブライアンを破るとは恐れ入ったでござる。

師匠! 感謝申し上げるでござる!!」


身振り手振りを交えて語る姿は、無邪気そのものだった。


ジョンはすっかりユウの予想を信じ切り、今や完全に師匠扱いである。

その視線には疑いがない。

だからこそ、胸の奥が少しだけ重くなる。


「して、今週は如何に……?」


期待に満ちた目。


「まだ、枠どころか出走馬も確定してませんよ?」


「あ、そうでござった!!」


軽快なやり取りの裏で、ユウは考えていた。


(俺も全てのレース結果を覚えているわけじゃない。

たまたま先週のレースは、インパクトが強くて記憶に残っていただけだ。

もし当て続けたら、この人は本気で人生をギャンブルに委ねかねない)


ユウは、今後の予想について慎重になる必要を感じていた。


「何かあったら、遠慮なく拙者に言うといいでござる!」


その言葉が耳に入った時、ユウは我に返った。


「え? なんですか?」


ユウは聞き返した。


「されば、今後また大会などに出るのでござろう?

拙者が車でお送りするでござるよ!」


一瞬、言葉を失った。


暁光。

移動費で悩んでいた心に、思いもよらない形で光が差し込む。


助けられている。

だが同時に、頼らせてしまっている。


「本当ですか……ありがとうございます」


言葉にすると、少しだけ嘘になる気がした。


「なになに、持ちつ持たれつでござるよ! はっはっは」


豪快に笑うジョンを見て、ユウは思う。


この人は善意で動いている。

自分は知識を隠し、子どもの仮面をかぶっている。


この人の厚意を、色んな角度で踏みにじるような真似はできない。


信頼の上に成り立つ関係は、

ほんの少しの後ろめたさを抱えながら、

静かに動き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ