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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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4/10

未練

――どうして、こうなったんだ。


確か、晩酌していたはずだ。

仕事を終え、缶ビールを片手に、何の気なしに昔のことを考えていた。


2026年。43歳。


ミニ四駆。


あの頃、夢中になって結局やり切れなかった遊び。


雑誌やカタログを読みながら、


「こんな改造を真似したい」

「このパーツをこう使おう」


そんな妄想ばかり膨らませていた。


ある日知った。

前にモーターが載っている、少し変わったミニ四駆。


(こんなのが、あるんだ……)


そこからだった。

FMシャーシに惹かれ始めたのは。


誰も持っていない。

店頭でも目立たず、仲間内でも話題に上らない。


雑誌に小さく書かれていた、

FMシャーシのフロントが重いことによる利点。


テクニカルコースに強い。

アップダウンに強い。


――そう書いてあった文字が、やけに輝いて見えた。


その文字に魅力を感じた。

信じて使い続けた。


何よりモーターが前についている革新的な構造が忘れられなかった。


マイナーだけど、秘めたポテンシャルを感じたこのシャーシで勝ちたかった。


FMシャーシで胸を張って、あの頃の大会で。


「何回も妄想したもんな。


“あの頃、FMシャーシで優勝できたら”……とかさ。


こっそり自作した、最強設定のマシンノートとか」


表には出せないが、俺の青春だ。


しかし当時は金がなかった。

工具も満足に持っていなかった。


手元のマシンは、構想の半分も形にならないまま、

ブームが去り、押し入れの奥で眠ることになった。


周りの友達が、少しずつミニ四駆から離れていった感じ。

おもちゃ屋のミニ四駆売り場が縮小し、活気を失っていった感じ。


今でも、胸が締め付けられる。


――やり残した。


その感覚だけが、ずっとどこかに引っかかっていた。


押し入れにしまったのは本心じゃない。

本当は、またあの活気の中でミニ四駆を走らせたかった。


こんな考えを、毎日どこかで繰り返していた。


あの時は酒も進み、

気づけば思考は、やけにリアルになっていた。


こんな改造をして。

こんな大会に出て。

FMシャーシで勝ち続けて。


「FMって速いシャーシなんだ」と、皆に錯覚させてやる。


いや、錯覚じゃない。


そういう“歴史”を作りたい。


「……やば、さすがに中二脳すぎるだろ」


自分でそうツッコミを入れた、

その次の瞬間、意識が遠のいた。


――


俺は、1993年の自分になっていた。


小学5年生。


鏡に映るのは子どもの顔なのに、

中身は2026年の俺、そのまま。


声変わりする前の声に、違和感が生じる。


マリオの学習机。

ゲームボーイ。

ドラゴンボールのポスター。

リフォームする前の窓。


懐かしい自室のレイアウト。


「どんなアニメ展開だよ……」


異世界じゃないだけ、まだマシか。

ラノベやアニメで溢れかえっている設定だ。


まさか自分が当事者になるとは思わなかったけど。


でも、状況を整理すると――悪くない。


未来の知識がある。

どのパーツが強くて、

どの改造が意味を持たなかったかも知っている。


……にしても。


(で、どうやって未来に帰るんだよ、俺)


しかし帰る方法や仕事、家族のことなど、

不思議と不安や焦りはなかった。


学校の勉強は楽勝だろう。

問題は、ミニ四駆の方だ。


(今年は大丈夫だったけど……


来年はスーパー1シャーシの大繁殖期。


それから環境が激変するんだよな……)


そう、ここからが本番だ。


2026年の技術を、94年にどう落とし込むか。


学習机に座り、ノートを開いて改造方針を書き始める。


今ならできる。

今だからこそ、やるしかない。


……はず、だった。


「あ」


大事なことを思い出す。


金がない。


そこは昔と、何も変わっていなかった。


財布の中身まで一緒にタイムスリップしたわけじゃない。

パーツはタダじゃないし、モーターも消耗品だ。


大会に出て勝ち続けるには――

現実的な金策が必要になる。


「どうすっかな……」


天井を見上げ、ため息をつく。


「寝よ」


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