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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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3/10

悪寒

土曜日の午後。


駄菓子屋「みつば屋」の奥にある、少し古びた大きなミニ四駆コース。


ユウとコウスケは、今日もいつものようにマシン調整をしていた。


「ユウ、今日こそ俺のアバンテJr.勝てる気がするんだよなぁ」


「……そのセリフもう3日前から何回も聞いてるよ」


「……未だに夢に出るんだよな」


「夢の中ではせめて勝ってよ……」


「前聞いたけどワンウェイホイール良くないの?」


「お勧めしないね」


そんなやりとりをしていると――


「月のプリズムパワー! メイクアーップ!!」


突然、店の入口の方から叫び声が轟いた。


二人が振り返ると、ツインテールの影が、光も出ていないのにその場でクルクルと高速回転していた。


「ユウ、俺たちは何を見せられてるんだ? 見ていいやつなの?」


「……セーラームーンだ……実際にこれする人初めて見た」


やがて回転が止まり、女の子はビシッとポーズを決めた。


「愛と正義の、制服少女戦士、セーラームーン!

月に代わって、反省させるわよ!」


完全にやり切ったらしい。


ユウとコウスケは、呆気に取られたまま固まってしまう。


(……どんなおしおきされたらこんな頭になるのか……)


決めポーズのまま白目になりかけていた。

どうやら回りすぎたらしい。


「ね! キミ! コロコロに出てた子でしょ!?」


「……え? あ、……うん!」


「やっぱそうだよねぇ!

マモちゃんほどじゃないけどスゴいじゃない!」


「マモ……ちゃん?」


「コウスケ、アニメの仮面キャラのことだよ。

あんな変態仮面じゃないけど」


「えっ!? タキシード仮面様知ってるの!?」


「…変態仮面って言ったことについては後で覚えとけ?」

とボソッとつぶやく。


「キミ、やるねぇ!! by戸愚呂弟(20%)」


濃い。

こっちが一言返すと10倍くらいで返してくる。


この子、見た目は可愛いのに中身が猛烈に濃い。


「おいユウ……マジでヤバいって。

この人、一個上のクラスにいる

“可愛いのに痛い”で有名なユリちゃんだぞ。

関わるといいことないって噂の……」


「はぁ? 何アンタ、エナジー吸ってやろうかい?」


「それダークキングダム側のセリフだから……」


「ふぉおおおお! キミ!! いいねキミ!!

今の返し最高!!!

こういうアニメわかってる男子、ほんと……ナイスゥ!」


ユリは完全にテンションが上がってしまった。


「で、何の用なの?」


「そうそう!

キミのミニ四駆、さっきから見てたけどすごくない?

ちょっと見せてよ!」


ユウのFMマシンを持ち上げ、興味深く眺める。


「ほむほむ、FMなんだ……」


ユリは穴が開くほど見つめている。


(……この人、知られざるFMスペックを知ってるんじゃ……?

相当見る目あるかも!)


無音の時間を切り裂くように。


「なんでこんなダサいの使ってるの?

どうせならムーン・ティアラみたいに

キラッと可愛いダンシングドールとか使えばいいのに」


(あ、バカだこの人。

そんでもってどっかで聞いたセリフだな……

隣にいるやつが言ってそうな)


「わかる! ダサいよな!」


「おい、隣のやつ……」


「でさ、どうしたら速くできるの?

教えてよセーラーユウ!」


「セーラー……。

うーん……

ブレークインして、グリスアップは程々にして、

ニカドかアルカリ電池を使う」


「普通か!」


「普通だな!!

全部コロコロに載ってる情報だわ!」


「えー!?

もっとこう、“月に代わって加速よ!”みたいなさ!!

“モーターはトモダチ!!”みたいなさ!

“ボディ壊す勢いで4倍だあぁぁぁぁ!”みたいな!!」


「(このくそオタめ!)

いや物理法則の話だから……」


「しけた返しねー!

そんなことじゃ

“あたしわくわくすっぞ!”って言えないよ!?」


「悟空まで来た……」


「やばいよユウ。

アニメの辞典読んで生きてる人だよ……」


「これは……」


何の中身もないやり取りがダラダラと続き――


「じゃ、また今度ね!

今日はこのへんにしといてあげる!

バイビー!

また新田舎ノ中学校で会おうね!」


「ユウ、俺はあえて

何の学校なのかは聞かんぞ?……」


「うん……」


ユリは駄菓子屋から飛び出し、

外でまたクルクル回りながら去っていった。


「……うるさい女だったな」


「うん……」


「俺らも帰るか」


「うん……」


どっと疲れた身体で家路につくのだった。


「雑誌に出たせいで大変な目にあった……

今後は顔バレとか気を付けないと……」

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